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短編小説


青いリボンのアヒル

 道を歩いていたら白い物体が俺の目の前に立ちふさがった。
「待ちな、ジョニー」
 そう、のたまったのは青いリボンが素敵なアヒル。クチバシ先にあるシャレた葉巻が決まっていた。
「道はどこまでも続いていく。だからと言って、お前の進む道はここじゃないだろ」
 アヒルは、物憂げに紫煙を吐き出すと、そのつぶらな瞳で俺に問いかけた。
「いや、ジョニーって誰だよ……」
 とりあえず最初から気になっていたことを問いただす。
 今更だが、なんでアヒルがしゃべるんだ。
 この摩訶不思議な現実はなんだろう。俺はいつの間に不思議の国に紛れ込んだんだ。
「馬鹿者!! 魂の名を忘れる奴があるか! 誰がお前の名前を忘れても俺がその名を覚えている。あの、雨の日……、お前とコブシをぶつけ合ったあの日のことはワシの宝だ」
「いや、俺、アヒルに知り合いはいないけど……」
 至極真っ当な答えを返す。アヒルに知り合いがいるとか、ちょっとアレな人だと思うし。
 アヒルは、俺の言葉に衝撃を受けたようにヨロヨロと後ずさった。ちょっと涙目だった。このまま立ち去ってくれると、とてもありがたいなぁと思っていると、急に白い顔(?)を真っ赤に染め、羽で殴られた。
「これでも……、これでも……! 思い出さないというのか!!」
 アヒルは泣いていた。泣いたまま拳を振りかぶり続けた。
 意識が朦朧となる。とんでもない威力の拳だった。殴られた所を基点に、衝撃と痛みが広がる。だが、意識と反比例するように何かが心の内から染み出してくる。
「――っ」
 それは爆発するように広がると俺の記憶を書き換えていく。
 ――彼女を巡り争った俺たち。どっちが恋仲になるか最後まで張り合い続けた俺たち。あの雨の日、決着をつけた俺たち。俺は、あの日、確かにアヒルだったのだ。
「相変わらず……、いいこぶしだぜ! セバスチャン!!」
 俺は奴の拳を受け止めた。
 驚きに顔そ染めるセバス。そして、それはニヤリとした太い笑みに変わっていった。
「ふっ、相変わらず肝心な時に遅れる奴め」
 セバスは新たな葉巻をくわえ、火をつけた。明滅する明かりが嬉しそうだった。
「今更、俺に何の用だ?」
 新たな生を歩んでいる今、セバスとの接点はない。
「知れたことよ。以前の決着を今この場でつけるのよ! 100年経とうが、1000年経とうが、ワシとお前、どちらが強者か分かるまで戦いは終わらない!!」
 セバスはそう宣言すると、青いリボンを外した。
「くっ、いきなり本気か……」
 あのリボンは重さ100kg.の特別制だ。奴の力の半分を封じている。それを、最初から外す意味は明白だった。
「おおよ、アレから修行に修行を重ねたワシの力、今ココで見せてやるわ!!」
「面白い! 来い!! 俺は誰にも負けない!!」
 気力が高まり、目に見えるオーラとしてお互いの体を覆う。アヒルと人、その真剣勝負の姿がココにあった。
 気がコブシに集まる。力が音を立てて収縮していく。
「いくぞ! セバス!!」
「来い!! ジョニー!」
 俺とセバスのコブシが同時にぶつかり合った。光が爆発のように広がり、俺の意識は溶けていった。



「――という夢を見たんだよね」
 俺は大学のテラスで彼女に語っていた。五月の照り付けんばかりの日差しは、寝不足気味の体調にはきつい。
「きっと、疲れているんだよ」と彼女は困ったように笑った。我ながら馬鹿らしいと思いながらも、あの夢には妙にリアリティーがあった。
「やっぱりそう思う?」
「うん」
 彼女は困ったように首を傾げた。
「やっぱり、そうだよね……」
 長閑な春風が吹いた。風の中からアヒルの鳴き声がしたような気がした。
「疲れてるんだよね……」
 俺の呟きが風の中に吸い込まれていった。

プロフィール

ニックネーム
ケイロン
性別
血液型
A型
生年月日
19○○年5月23日
現住所
岡山のどこか
所在地
岡山のどこか
職業
教師っぽいこと
自己紹介
小説を読むのも書くのもすきなのでHPを立ち上げました。
お時間が許すのなら、作品を読み、感想でもいただけたら嬉しいです。

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