短編小説
ネットワーク(ダーク注意)
あの人と繋がっている。そう錯覚したのは何故だったのだろうか。
パソコンを起動するといつもあの人の名前が見えたからだろうか。自分の気になる人がネットワーク上にいるかどうか。それが分かる便利な機能が私の思いを加速させた。
今日もパソコンを起動する。するとすぐに独特の電子音を走らせてメッセンジャーが起動した。
あの人だ。
≪こんち~、元気ですか~^^≫
≪う~ん、どうだろう?? 今日はへこんでるかなぁ≫
≪どしたん(?-?) 何かあったの?≫
≪今日ね~、……ことがあったの(T0T)なぐさめて~≫
≪よちよち^^/≫
簡単な挨拶から始まり、いつもたわいもない会話を楽しむ。本当に悩み事があるわけじゃない。ただ、彼との会話を少しでも続けたいためにささいなことを大げさにして話すだけ。彼はそんな私に対していつも優しかった。誤解してしまうぐらいに。
学校から帰るとパソコンを起動する。そしてチャットを楽しむ。そんな日常が幾日も繰り返されたころ、私の気持ちは抑えきれなくなっていた。こらえきれず友達に相談した。
「顔も知らない相手と恋愛するなんてありえないわ」
いつも自信満々な友人はそう鼻で笑った。私はそのしぐさに腹を立てるどころか、とある事実に愕然とした。そう、私は彼の顔すら知らなかった。彼がどんな仕草で笑うのか。おいしい料理を食べたときにどんな顔で笑うのかも。それすら知らなかった。私が知っているのは、ただ毎日会話をしている近くて遠いネットワークの住人だった。
憑かれたように私の中にその考えが充満した。ぐるぐると思考の渦が絶えずそのことを考えさせ、心がヒキツケを起こしそうなほど苦しくなった。授業が終わると走って教室をでた。茜色の空が妙に不吉に見えた。私は怖くなりわき目も振らず家を目指した。
パソコンを起動する。家にたどり着いた私がまずしたことは着替えることでも、うがいをすることでもなかった。私のパソコンはCPUをバージョンアップしたばかりで起動が早い。でもこの時だけはまるで時が止まったかのようであった。一分一秒が狂おしく待ち遠しい。Enterキーを連打する。そんなことをしても無駄なのに。分かっているのに。私はただ、叩きつづけた。
ようやくOSが起動する。同時に自動起動するように設定していたメッセンジャーが登録してあったメンバーを表示した。ネットワークに接続しているメンバーに彼の名前はなかった。思わずキーボードに自分のこぶしをたたきつける。掌にしくしくとした痛みがはしった。
私は待つことにした。考えてみれば彼がメッセンジャーを起動する時間よりも随分前だった。そんなことすら頭の中から抜け落ちていた。椅子の上で体操座りをする。椅子がぎしぎしと鳴いた。私はただ画面を見続けていた。鼓動の音が痛いほど大きく聞こえた。まるで全身が悲鳴を上げているみたいだ。ぼんやりと私は思った。
独特の電子音がした。メッセンジャーが起動する。私は嬉しい気持ちを押し殺して、彼に話しかけた。
≪こん~、 待ってたよ~(T0T)≫
≪どうしたの急に(?_?)今日は随分と早いんだね^^≫
≪うん、気になることがあってダッシュで帰ってきちゃった≫
≪気になること? なんかあったの?≫
≪うん、あのね。私たちってこうして話し始めてどのくらいになったっけ?≫
≪う~ん、どうだろう一年ぐらいかなぁ≫
≪私もそれぐらいだと思う。一週間に4,5回こうやって話すじゃない。それなのに私たちって、お互いの顔すら知らない。お互い近くに住んでいるはずなのに、それって変じゃないかなぁっと思って≫
≪まあ、ネットを介してだしね。そういうこともあるもんだけど≫
≪ほら、OFF会もしてないし。どうでしょう、今度会ってみない?^^≫
息苦しかった。体調は悪くない。むしろ休んでいたから調子がいい。それなのに奇妙に現実感がなく、まるで宙を舞っているように思えた。キーボードをたたく音がどこか遠くに聞こえた。
彼の返事はすぐにはなかった。いつもならすぐに言葉を返してくれるのに、時計の音がやけに大きく聞こえた。
≪いいよ~^^俺も会いたいと思っていたんだ^^≫
その返事を見た瞬間、不覚にも涙がこぼれそうになった。目の奥が切ないまでに痛み、私の涙腺をこれでもかと刺激した。今度は私の返事が遅れてしまった。
≪わーい(*^0^*)うれしいなぁ♪≫
≪そう言えば長い付き合いになるのにOFFってなかったねぇ^^≫
≪ですねぇ^^今度の日曜なんてどうかなぁ? 駅前の噴水とかどう?≫
≪おっけ^-^ じゃあ今度の日曜日の1時に噴水でね^^これからご飯だからいったん落ちるね(^^ノシノシ)
彼がネットワークから落ちていった。
「やった~!」
私は誰もいない部屋で大きくガッツポーズをした。
二人だけのOFF会の詳細はその後じっくり話し合った。同じ県に住んでいることは知っていたけれど、思ったよりずっと近くにいたことをお互いに喜び合った。携帯電話の番号も交換しあった。でも、電話で話すのは会ってからにすることに決めた。その方が面白いと彼が言ったから。私も楽しみだった。彼がどんな声をしているのか。どんな顔をしているのか。それを考えるだけで驚くほど早く日々が過ぎていった。
待ち遠しかった日曜日。私はいつもよりずっと早く起きて準備をした。いつもよりメイクに気合を入れて、肌作りを含めて倍以上の時間をかけた。お気に入りの服に袖を通して、ちょっと無理をして足の高いミュールを履いてみた。慣れないせいかくるぶしが少し痛かった。
待ち合わせ場所には30分早く到着してしまった。もう少し家に居ようとおもったけど、待ちきれなかった。
携帯電話を何度も確認してしまう。驚くぐらいゆっくり時間が流れている。まだ、ここに来て10分も経っていない。
早くこないかなぁ。女の子はまたすものじゃないのに。
なんだか、心が浮き立ってどうしょうもない。ウキウキと心が弾み、時間が過ぎることが楽しみだった。
――時間になった。
彼はまだ、来ない。時間も、場所もこの場所で良かったはずなのに。携帯電話にメモした情報を何度も確認する。やっぱり間違いない。
何かあったのかな? せっかく番号を送っているんだから、遅れるなら連絡をくれればいいのに。でも、もしかしたら彼にも外せない用事があったのかもしれない。もうちょっとだけ我慢してみよう。
――30分たった。
彼はまだ、こない。どうして、どうして来ないの? 私なにかした? 約束してからもとりとめない話だけど、連絡もとりあったし。彼にも変な様子はなかった。じゃあ、どうして!?
――1時間経った。
電話しよう。きっと何かあったはずだ。あれだけ誠実な彼がこんなに遅れるなんておかしい。電話のできないような突発的な出来事があったんだ。
震える手で番号を押す。
一瞬のタイムラグ。
『この電話番号は現在つかわれておりません。この電話番号は現在つかわれておりません。この電話番号は現在つかわれておりません。この電話番号は現在つかわれておりません。この電話番号は現在つかわれておりません。』
どうして!!!!!!!!
大声で叫びたくなった。なんで、どうして!? どうして繋がらないの。彼は嘘の番号を教えたの!? なんで!! なんで!! なんで!!!?
彼が教えてくれた住所のメモ欄を出す。思ったよりここから近い。行ってみよう。きっと何か私に言えないことがあったんだ。だからしょうがないんだ。彼がここに来ないのは理由があるんだ。
脇目もふらず歩いた。彼が教えてくれた住所らしきところに到着した。駅から近い閑静な住宅街にあった。でも、彼が教えてくれた住所には、コンビニしかなかった。もしかしたらと思い聞いてみる。でも、返ってきた応えは否定言葉だけだった。
涙がこみ上げてきた。私バカみたい。こんなに一生懸命準備して、こんなに時間かけて、ウキウキして。
心がどうしようもなく痛かった。目の前が暗くなり、現実とは思えない。なんでこんなことになったんだろう。
いつの間にか、家に着いていた。いつもの習慣でパソコンを起動する。ひょっとしたら、彼からの謝罪の言葉があるかもしれないと期待して。でも、メッセンジャーには何も反応がなかった。
ああ、彼は私の事なんて心底どうでもいいんだ。ストンっと心の奥に何かが落ちた気がした。
でも、諦めきれず、今までの履歴を確認してみる。本当に未練だ。
「えっ!?」
思わず声がもれる。どうして? なんで何もないの!?
マウスを痛いくらい強く握りしめる。ページ内を何度も調べる。でも、どこを探してもどこにもない。彼とはかなりの量のチャットを交わしたはずだ。それなのに、ネットにも履歴にも、どこにもない。ありえない。まるで彼という人間が始めからいなかったかのように、痕跡がまったくない。
おかしい。どういうことだ。
彼の名前すら発見できない。
あれ?
なにかおかしい?
彼の名前が発見できない?
彼の名前?
……彼の名前?
…………彼の名前?
………………彼の名前?
……………………彼の名前、なんだっけ?
私は彼といつも話していたはずだよね。学校から帰ったらすぐ話して、彼がパソコンにくるのをいつも待って。とりとめないことや、愚痴や、悩みなどなんでも話したよね。どうして、それなのに、彼の名前が分からないの……?
嫌な予感が、私をハードディスクの検索に駆り立てる。
するとすぐに膨大な量のテキストデータが出てきた。
彼と私の会話だ。
メモ帳に書いてある
「ああああああああああああああああああああああああ」
なんだ、これは? どういうこと!?
今までのことは何? 私はいったい何と会話していたの!!!
メモ帳を始めまでスクロールする。
一番始めに、前書きのように私の言葉が書いてあった。
「私には、相談できる人なんていない。この世はこんなに苦しいのに誰も話をきてくれない。友達はすぐに嘘をつくし、私をけなすばかりする。それなのに、何かあると友達顔をする。許せない。私は嘘のつかない友達がほしい。何があっても私を裏切らない、誰よりも私のことを大切にしてくれる人がほしい。だけど、そんな人は現実にはあり得ない。だから、私は作ろうと思う。誰よりも誠実で誰よりも優しい『彼を』」
そこには、切ないばかりの私の思いがあった。
でも、それを見た瞬間、私は壊れてしまった…………。
パソコンを起動するといつもあの人の名前が見えたからだろうか。自分の気になる人がネットワーク上にいるかどうか。それが分かる便利な機能が私の思いを加速させた。
今日もパソコンを起動する。するとすぐに独特の電子音を走らせてメッセンジャーが起動した。
あの人だ。
≪こんち~、元気ですか~^^≫
≪う~ん、どうだろう?? 今日はへこんでるかなぁ≫
≪どしたん(?-?) 何かあったの?≫
≪今日ね~、……ことがあったの(T0T)なぐさめて~≫
≪よちよち^^/≫
簡単な挨拶から始まり、いつもたわいもない会話を楽しむ。本当に悩み事があるわけじゃない。ただ、彼との会話を少しでも続けたいためにささいなことを大げさにして話すだけ。彼はそんな私に対していつも優しかった。誤解してしまうぐらいに。
学校から帰るとパソコンを起動する。そしてチャットを楽しむ。そんな日常が幾日も繰り返されたころ、私の気持ちは抑えきれなくなっていた。こらえきれず友達に相談した。
「顔も知らない相手と恋愛するなんてありえないわ」
いつも自信満々な友人はそう鼻で笑った。私はそのしぐさに腹を立てるどころか、とある事実に愕然とした。そう、私は彼の顔すら知らなかった。彼がどんな仕草で笑うのか。おいしい料理を食べたときにどんな顔で笑うのかも。それすら知らなかった。私が知っているのは、ただ毎日会話をしている近くて遠いネットワークの住人だった。
憑かれたように私の中にその考えが充満した。ぐるぐると思考の渦が絶えずそのことを考えさせ、心がヒキツケを起こしそうなほど苦しくなった。授業が終わると走って教室をでた。茜色の空が妙に不吉に見えた。私は怖くなりわき目も振らず家を目指した。
パソコンを起動する。家にたどり着いた私がまずしたことは着替えることでも、うがいをすることでもなかった。私のパソコンはCPUをバージョンアップしたばかりで起動が早い。でもこの時だけはまるで時が止まったかのようであった。一分一秒が狂おしく待ち遠しい。Enterキーを連打する。そんなことをしても無駄なのに。分かっているのに。私はただ、叩きつづけた。
ようやくOSが起動する。同時に自動起動するように設定していたメッセンジャーが登録してあったメンバーを表示した。ネットワークに接続しているメンバーに彼の名前はなかった。思わずキーボードに自分のこぶしをたたきつける。掌にしくしくとした痛みがはしった。
私は待つことにした。考えてみれば彼がメッセンジャーを起動する時間よりも随分前だった。そんなことすら頭の中から抜け落ちていた。椅子の上で体操座りをする。椅子がぎしぎしと鳴いた。私はただ画面を見続けていた。鼓動の音が痛いほど大きく聞こえた。まるで全身が悲鳴を上げているみたいだ。ぼんやりと私は思った。
独特の電子音がした。メッセンジャーが起動する。私は嬉しい気持ちを押し殺して、彼に話しかけた。
≪こん~、 待ってたよ~(T0T)≫
≪どうしたの急に(?_?)今日は随分と早いんだね^^≫
≪うん、気になることがあってダッシュで帰ってきちゃった≫
≪気になること? なんかあったの?≫
≪うん、あのね。私たちってこうして話し始めてどのくらいになったっけ?≫
≪う~ん、どうだろう一年ぐらいかなぁ≫
≪私もそれぐらいだと思う。一週間に4,5回こうやって話すじゃない。それなのに私たちって、お互いの顔すら知らない。お互い近くに住んでいるはずなのに、それって変じゃないかなぁっと思って≫
≪まあ、ネットを介してだしね。そういうこともあるもんだけど≫
≪ほら、OFF会もしてないし。どうでしょう、今度会ってみない?^^≫
息苦しかった。体調は悪くない。むしろ休んでいたから調子がいい。それなのに奇妙に現実感がなく、まるで宙を舞っているように思えた。キーボードをたたく音がどこか遠くに聞こえた。
彼の返事はすぐにはなかった。いつもならすぐに言葉を返してくれるのに、時計の音がやけに大きく聞こえた。
≪いいよ~^^俺も会いたいと思っていたんだ^^≫
その返事を見た瞬間、不覚にも涙がこぼれそうになった。目の奥が切ないまでに痛み、私の涙腺をこれでもかと刺激した。今度は私の返事が遅れてしまった。
≪わーい(*^0^*)うれしいなぁ♪≫
≪そう言えば長い付き合いになるのにOFFってなかったねぇ^^≫
≪ですねぇ^^今度の日曜なんてどうかなぁ? 駅前の噴水とかどう?≫
≪おっけ^-^ じゃあ今度の日曜日の1時に噴水でね^^これからご飯だからいったん落ちるね(^^ノシノシ)
彼がネットワークから落ちていった。
「やった~!」
私は誰もいない部屋で大きくガッツポーズをした。
二人だけのOFF会の詳細はその後じっくり話し合った。同じ県に住んでいることは知っていたけれど、思ったよりずっと近くにいたことをお互いに喜び合った。携帯電話の番号も交換しあった。でも、電話で話すのは会ってからにすることに決めた。その方が面白いと彼が言ったから。私も楽しみだった。彼がどんな声をしているのか。どんな顔をしているのか。それを考えるだけで驚くほど早く日々が過ぎていった。
待ち遠しかった日曜日。私はいつもよりずっと早く起きて準備をした。いつもよりメイクに気合を入れて、肌作りを含めて倍以上の時間をかけた。お気に入りの服に袖を通して、ちょっと無理をして足の高いミュールを履いてみた。慣れないせいかくるぶしが少し痛かった。
待ち合わせ場所には30分早く到着してしまった。もう少し家に居ようとおもったけど、待ちきれなかった。
携帯電話を何度も確認してしまう。驚くぐらいゆっくり時間が流れている。まだ、ここに来て10分も経っていない。
早くこないかなぁ。女の子はまたすものじゃないのに。
なんだか、心が浮き立ってどうしょうもない。ウキウキと心が弾み、時間が過ぎることが楽しみだった。
――時間になった。
彼はまだ、来ない。時間も、場所もこの場所で良かったはずなのに。携帯電話にメモした情報を何度も確認する。やっぱり間違いない。
何かあったのかな? せっかく番号を送っているんだから、遅れるなら連絡をくれればいいのに。でも、もしかしたら彼にも外せない用事があったのかもしれない。もうちょっとだけ我慢してみよう。
――30分たった。
彼はまだ、こない。どうして、どうして来ないの? 私なにかした? 約束してからもとりとめない話だけど、連絡もとりあったし。彼にも変な様子はなかった。じゃあ、どうして!?
――1時間経った。
電話しよう。きっと何かあったはずだ。あれだけ誠実な彼がこんなに遅れるなんておかしい。電話のできないような突発的な出来事があったんだ。
震える手で番号を押す。
一瞬のタイムラグ。
『この電話番号は現在つかわれておりません。この電話番号は現在つかわれておりません。この電話番号は現在つかわれておりません。この電話番号は現在つかわれておりません。この電話番号は現在つかわれておりません。』
どうして!!!!!!!!
大声で叫びたくなった。なんで、どうして!? どうして繋がらないの。彼は嘘の番号を教えたの!? なんで!! なんで!! なんで!!!?
彼が教えてくれた住所のメモ欄を出す。思ったよりここから近い。行ってみよう。きっと何か私に言えないことがあったんだ。だからしょうがないんだ。彼がここに来ないのは理由があるんだ。
脇目もふらず歩いた。彼が教えてくれた住所らしきところに到着した。駅から近い閑静な住宅街にあった。でも、彼が教えてくれた住所には、コンビニしかなかった。もしかしたらと思い聞いてみる。でも、返ってきた応えは否定言葉だけだった。
涙がこみ上げてきた。私バカみたい。こんなに一生懸命準備して、こんなに時間かけて、ウキウキして。
心がどうしようもなく痛かった。目の前が暗くなり、現実とは思えない。なんでこんなことになったんだろう。
いつの間にか、家に着いていた。いつもの習慣でパソコンを起動する。ひょっとしたら、彼からの謝罪の言葉があるかもしれないと期待して。でも、メッセンジャーには何も反応がなかった。
ああ、彼は私の事なんて心底どうでもいいんだ。ストンっと心の奥に何かが落ちた気がした。
でも、諦めきれず、今までの履歴を確認してみる。本当に未練だ。
「えっ!?」
思わず声がもれる。どうして? なんで何もないの!?
マウスを痛いくらい強く握りしめる。ページ内を何度も調べる。でも、どこを探してもどこにもない。彼とはかなりの量のチャットを交わしたはずだ。それなのに、ネットにも履歴にも、どこにもない。ありえない。まるで彼という人間が始めからいなかったかのように、痕跡がまったくない。
おかしい。どういうことだ。
彼の名前すら発見できない。
あれ?
なにかおかしい?
彼の名前が発見できない?
彼の名前?
……彼の名前?
…………彼の名前?
………………彼の名前?
……………………彼の名前、なんだっけ?
私は彼といつも話していたはずだよね。学校から帰ったらすぐ話して、彼がパソコンにくるのをいつも待って。とりとめないことや、愚痴や、悩みなどなんでも話したよね。どうして、それなのに、彼の名前が分からないの……?
嫌な予感が、私をハードディスクの検索に駆り立てる。
するとすぐに膨大な量のテキストデータが出てきた。
彼と私の会話だ。
メモ帳に書いてある
「ああああああああああああああああああああああああ」
なんだ、これは? どういうこと!?
今までのことは何? 私はいったい何と会話していたの!!!
メモ帳を始めまでスクロールする。
一番始めに、前書きのように私の言葉が書いてあった。
「私には、相談できる人なんていない。この世はこんなに苦しいのに誰も話をきてくれない。友達はすぐに嘘をつくし、私をけなすばかりする。それなのに、何かあると友達顔をする。許せない。私は嘘のつかない友達がほしい。何があっても私を裏切らない、誰よりも私のことを大切にしてくれる人がほしい。だけど、そんな人は現実にはあり得ない。だから、私は作ろうと思う。誰よりも誠実で誰よりも優しい『彼を』」
そこには、切ないばかりの私の思いがあった。
でも、それを見た瞬間、私は壊れてしまった…………。
プロフィール
- ニックネーム
- ケイロン
- 性別
- 男
- 血液型
- A型
- 生年月日
- 19○○年5月23日
- 現住所
- 岡山のどこか
- 所在地
- 岡山のどこか
- 職業
- 教師っぽいこと
- 自己紹介
- 小説を読むのも書くのもすきなのでHPを立ち上げました。
お時間が許すのなら、作品を読み、感想でもいただけたら嬉しいです。
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