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ススメ☆ラッシー(完結)

序章

始まりは突然に

 朝起きてみれば、そこは見慣れた我が家の庭だった。土の感触と雑草のむせ返るような臭い。中でもお袋が趣味で植えている、どくだみの臭いがひときわ鼻をついた。
(痛ッ!)
 頭に鋭い痛みが走った。鈍い痛みが明滅するように何度も繰り返す。目の前の景色がなんだかぼんやりとして、曖昧に映る。慌てて瞬きをしてみるがいっこうにおさまらない。
昨日飲み過ぎてしまって、部屋の中までたどりつけなかったのかな? 二軒目まではしごした事は覚えているのだけど……、ああ、もうっ、そこから先の記憶がない……。まあ、トラブルに巻き込まれなかっただけ良しとしなきゃなぁ。先輩とかやくざさんに絡まれたらしいし……。
まあ、いつまでも地面で寝ていてもしょうがない。風呂でも入ってくるかなぁ。俺は
 ん? 何か嫌な予感が
(立てない!?)
 愕然とした。まだ酔っているようだ。しっかりしようぜ、俺。苦笑して背伸びでもしようかと手を上げる。
しかし、何かに阻まれるように正面しか向かない。跳ねるようにして何度も試みる。
(おかしい……)
 飲みすぎてどこかを打ったのだろうか。それとも、昨日の酒のせいか。
たしか……調子に乗って、ブランデーと焼酎とウオッカを混ぜ合わせ特性ブレンドを作ったのだ。いや……まて他にもダチがタバスコやしょうゆを入れていたような気がする。さすがにあれは破壊力が強かった。とんでもなかった。意識が飛んで白い世界が見えてきたのだ。ついでにどこからか『こっちは気持ちいいぞぉ』という妙に間延びした声が聞こえてきたのだ。慌てて引き返したが、冗談にしてもたちが悪い。
 ふぅっ……、いつまでもここに寝転んでいるわけにはいかないな。後ろには身体が痛くて手は回せない。だが前だったら問題なしだ。俺は四つん這いになった。何かとてもしっくり来るようであった。これが自然な格好――全身の感覚がそれを主張していた。
なにを、負けるものか! 立てないのは気合が足りないだけだ。俺は大きく息を吸い込んだ。人間は大声を出すことによって潜在能力をひき出す事ができる。それに賭けて、俺は大声を出した。
(うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!)
「ワオォォォォォォォォォォン!」
 はい……? ふっ、らしくない。真面目にやろうぜ、俺。再度起き上がるために力を込める。
(ふんっ、ふんっ、ふんっ、ふんっ)
「ワンッ、ワンッ、ワンッ、ワンッ」
 なぜだ? なぜ口からワンしかでない!? そんな理不尽な事は認めん。起き上がる。起き上がってみせる。後ろに重心をかけてバランスを取る。前に落ちそうな体を懸命に支える。重力に従い手をつこうとする体。しかし、そんな事で負ける俺ではない。シフト移動で上手く重心を取る。ここしかないというほどの絶妙さだ。
(どうだ、立ったぞ!!)
 俺は歓喜に包まれた。人間やってできない事はない。しかも、俺ならなおさらだ。うんうんと一人感慨に浸る。しかし、次第に何か違和感が襲ってくる。お尻の辺りがもぞもぞするのだ。
(なんだ?)
 股の間を見る。
(………………………………)
 数秒、もしかしたら数分間固まっていたのかもしれない。
そこには一房の立派なシッポがあった。しかも、日の光に当たってキラリとした銀の光を反射している。
(はいぃぃぃぃぃぃぃぃ!?)
 なんだこれは!? こんな事があってたまるわけがない。慌てて、自分の身体を確認する。
ふさふさと柔らかそうな毛並み。力強く大地を踏みしめるたくましい足。気のせいかと思ったが、やけに長く見える鼻。そして、なにより首にびみょうに感じるのはもしかして首輪じゃないのか? これは俺の愛犬ラッシーにあげたものだ。たしか、ラッシーと名前のロゴが入っていたので気に入ったからだ。
 それが首にかかっている……?
(どうしてだぁぁぁぁぁ!?)
「ワオォォォォォォォン!」
 俺の魂の叫び(吼え声?)が辺りに木霊した。
「うるさいです」
カコォォォォォォォン
 そして、理不尽な言葉と共に降ってきた何かによって俺は気を失った。

プロフィール

ニックネーム
ケイロン
性別
血液型
A型
生年月日
19○○年5月23日
現住所
岡山のどこか
所在地
岡山のどこか
職業
教師っぽいこと
自己紹介
小説を読むのも書くのもすきなのでHPを立ち上げました。
お時間が許すのなら、作品を読み、感想でもいただけたら嬉しいです。

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