キリ番
『学校の怪談』
キリ番2500
出題者:クマ猫さん お題 :『夏』『怪談』『学校』
梨乃「……やっぱり、夜の学校って怖いね」
隆紀「まー、あんまりいい気分じゃねーよな」
梨乃「ねぇ、やっぱり肝試しなんて危ないよ。帰ろうよぉ」
隆紀「よし、じゃ帰ろうぜ。そもそもお前が勝手に決めたことで俺にゃ関係ないし」
梨乃「でも、ちゃんと七不思議全部回ってこなくちゃ、明日学校で馬鹿にされちゃうしね。仕方ないよね」
隆紀「いや、俺たちが七不思議の話してたら、お前が勝手に入ってきて「度胸があるところ証明してやるー」とかって騒ぎ出したんじゃねーか。みんなちょっと引いてたぞ」
梨乃「だって、隆紀ちゃんが臆病だなんて思われるの、我慢できなかったんだもの」
隆紀「だから誰もそんなこと言ってなかったろうが。……またなんかタチの悪いことでもたくらんでるんじゃねーか?」
梨乃「そんなわけないよー。私は純粋に隆紀ちゃんのことを思ってるだけなんだから。無理矢理肝試しに連れて来て、夜の学校で二人きり、なんて考えてないよ」
隆紀「……ま、そんなことだろうと思ったけどな。どうせ引き返すつもりなんかないんだろ。さっさといくぞ」
屋上の手「……諸君。どうやら今日の獲物が来たようだぞ。手はずはいいな?」
学長の像「もちろんだとも。まず校庭のわしが恐怖のどん底に突き落として……」
十三階段「僕が上の階に上らせて……」
ピアノ「私の音でトイレに逃げ込ませて……」
花子さん「私がパニックになるまでおどかして……」
人体模型「俺が一人ずつ引き離して……」
幽霊鏡「あたしが屋上に追い込んで……」
屋上の手「最後に我輩が屋上から突き落としてジ・エンドだ。……くくく、勝てる、勝てるぞ! 圧倒的ではないか、わが軍は!」
花子さん「はいはーい。コレはほっといて。……ところで学長の像、それはイメージチェンジなの?」
学長の像「うん? 何か変かね?」
花子さん「ううん、いいの。そうよね、隆紀の人がそういうの気にするの当然だもの。それじゃ、みんな持ち場についてー」
全員「おおー」
梨乃「最初はどこに行くの?」
隆紀「まずは学長の像だな。夜になると笑い出すらしいぜ」
梨乃「学長の像ねぇ……それってどこにあるの? 私見たことないんだけど」
隆紀「普通学長なんてどうでもいいモンからなぁ。校庭の隅っこの方にあるんだよ。……ほら、ここ。木の陰になってて全然見えないんだけど」
梨乃「あ、ホントだ。なんでこんなところに……。え、あれ……もしかして、この像、笑ってるみたいに見えない?」
隆紀「ああ。確かに笑ってるな」
梨乃「え、なんで? やだ怖い!」
隆紀「実はあれな、俺が落書きしたんだ」
梨乃「……え?」
隆紀「昼休みにマジックできゅきゅっとな。ほら、あのはげ頭も黒々してるだろ」
梨乃「ぷっ、もうやだー!」
隆紀「あははは。さっさと次行こうぜ」
学長の像「……そうか。だからみんな優しかったのか」
隆紀「次はこの階段だな。夜になると一段増えるらしい」
梨乃「ん。それじゃ、一緒に数えてみようか」
隆紀「ああ、いくぞ。いち、にー、さん……」
梨乃「じゅういち、じゅうに、じゅうさん……」
隆紀「……十三段だな」
梨乃「……うん、十三段だね」
隆紀「……」
梨乃「……」
隆紀「なあ、もともとここって何段だったっけ?」
梨乃「……さあ。数えたことなんてなかったし」
隆紀「そりゃそうだよなぁ。階段の段数なんて普通知らないよなぁ。階段って普通は何段なんだろうな」
梨乃「えーっと……あ、よく十三階段っていうでしょ? きっと十三段でいいんだよ」
隆紀「そういや階段といえば十三段って聞いたことある気がするな。そうすると、何も変化なしってことか。つまんねー。次行こうぜ」
梨乃「うん。そろそろ何かないとつまんないよねー」
十三階段「変わってるのに! 変わってるのに!」
隆紀「音楽室は……確か、勝手に鳴るピアノだっけ?」
梨乃「うん、そうだったはず。でも普通は中にねずみが巣を作ってたとかだよね」
隆紀「おばけなんて普通そんなもんだよな。さて、おじゃましまーす」
梨乃「んーと、ここも何もないみたい……」
ぽろ……ん
梨乃「きゃーやだこわーい!」
隆紀「抱きつくなコラ! 全然怖がってなんかないだろうが!」
梨乃「えーそんなことないよー。こわーい」
隆紀「わざとらしいんだよ! ほら放せ!」
梨乃「えーもう少しー」
隆紀「おら、とっとと行くぞ!」
梨乃「ああっ、ちょっと待ってよー」
ピアノ「……あれ? ちゃんと聞こえてたよ……ね?」
梨乃「……それにしても、校舎の中って暑いねー」
隆紀「ま、夜とはいえ締め切ってるからな。仕方ねーんじゃねーか?」
梨乃「うん、そうかもしれないけど……顔、汗でテカっちゃったりしてないかな。かがみかがみ……あ、あったあった」
隆紀「おい、危ないぞ。ひとりで先に行くなよ」
梨乃「うん、大丈夫……き、きゃーっ!」
がちゃーん!
隆紀「おいっ! どうした!」
梨乃「ち……違う、違うの!」
隆紀「なんだ、何が違うんだ!?」
梨乃「わ、私の顔……あんなに目の下にクマなんて出来てないし、髪の毛だってあんなぼさぼさじゃないの! 隆紀ちゃんと夜のお出かけだから一生懸命準備したの!」
隆紀「えーと……」
梨乃「ほんとなの、今日は特にかわいい私を見て欲しいから、髪だって一生懸命整えてきたの! だからあんなの私の顔じゃないの!」
隆紀「えーと……よくわかんねーけど、お前はさ、その……か、かわいい、よ……」
梨乃「……え?」
隆紀「ほら、行くぞ!」
梨乃「待って待って! 今、なんて言ったの?」
隆紀「なんにも言ってねぇよ!」
梨乃「うそうそ、私ちゃんと聞いたもん!」
隆紀「だったらもう言う必要ねーだろ!」
梨乃「えー。そんな意地悪しないで、もう一回言ってよー」
隆紀「ほら、置いてくぞ!」
梨乃「あー、待ってよー!」
幽霊鏡「……」
返事がない。ただの欠片のようだ。
隆紀「ん? どうかしたか?」
梨乃「えっと……ちょっと、ここで待ってて欲しいんだけど……」
隆紀「え? 校舎の中で何もないだろうけど、この暗い中でひとりになるのは危ないだろ?」
梨乃「んと、その、なんていうか」
隆紀「わかんねぇなぁ。はっきり言ってくれよ」
梨乃「そのね、お花摘みとか、化粧直しとか……」
隆紀「いやこんなところに花なんて咲いてないし、思え化粧なんてしてないだろ」
梨乃「もう! トイレに行きたいの!」
隆紀「え。あ、ああ、そうか。そうだな……」
梨乃「じゃ、行って来るから」
隆紀「えっと、なんていうか……ごゆっくり?」
梨乃「もう……。ね、見たくなったら入ってきていいよ」
隆紀「ばっ、ばかやろう!」
梨乃「くすくすっ。……えっと、なんだか暗いなぁ。でも電気つけたら宿直の先生に見つかっちゃうかもしれないし……我慢しよっかな」
花子さん「ふふふ……」
梨乃「え……? 誰か、いるの?」
花子さん「ふふふ……いるよ……」
梨乃「あ……ほんとに来たんだ」
花子さん「……え?」
梨乃「もう、入ってくるんだったら先に言っといてくれればよかったのに」
花子さん「あの……ちょっと?」
梨乃「でも、……いいよ。本当は私だって待ってたんだもの。ほら、ね?」
花子さん「あああぁぁ、らめっ、いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
梨乃「くすくす、梨乃の子みたいな声だね……」
隆紀「……あ。遅かったな」
梨乃「もう、隆紀ちゃんったら、途中で逃げちゃうんだもん。梨乃の子に恥かかせたらダメだよ」
隆紀「は?」
梨乃「くすくすっ、でもいいよ。あんなかわいい声出しちゃったら、恥ずかしくてごまかしたくなるもんね」
隆紀「なんだかよくわかんねーけど、用がすんだなら行くぞ」
花子さん「あう……もうお嫁にいけない……」
隆紀「理科室は……確か人体模型だっけ。準備室の方かな」
梨乃「……ね、隆紀ちゃん」
隆紀「ん? どうした?」
梨乃「さっきの続き、しよっか」
隆紀「は? 何のこと?」
梨乃「だから、さっきの続き。ね、私、もう覚悟できてるんだよ」
隆紀「ちょ、ちょっと待て! 何言ってるかわかんねぇ、ってゆーか抱きつくな!」
梨乃「ダメだよ。ほら、おとこのひとはちょっと強引なくらいの方がいいんだから」
隆紀「やめ、止めろー!」
人体模型「がぁー!」
隆紀「あんたいいところに! こいつ引き剥がすの手伝ってくれ!」
人体模型「え?」
梨乃「ああっ、隆紀ちゃん! 私もう、もう……!」
隆紀「いいから早く! 取り返しがつかないことになる前に!」
人体模型「あ、えっと……はい」
梨乃「ああー、隆紀ちゃんー!」
隆紀「はぁ、はぁ……お前、時は場合を考えて行動しろよっ! 誰もいないとはいっても学校だぞ? そういうことしていいと思ってんのかよ」
梨乃「……じゃあ、学校じゃなかったらそういうことしてもいいの?」
隆紀「……え?」
梨乃「学校じゃなかったら、『そういうこと』しても、いいの?」
隆紀「えと……なんていうか」
梨乃「いいの? それとも……ダメ?」
隆紀「あー……それは」
梨乃「ダメ……かな?」
隆紀「えーと、……節度をわきまえれば」
梨乃「わーい、やった! ね、ね、早く帰ってしよ? 『そういうこと』を。ね?」
隆紀「いや、だから節度をわきまえるってのはだな……」
梨乃「えへへー。今夜は一緒♪ 一晩中隆紀ちゃんと一緒♪」
隆紀「だからこんなところで手を繋ぐな! ほら、さっさと帰るぞ!」
人体模型「……あのー」
屋上の手「くくく。さあ来い、絶望の淵へ! 愚かな人間よ、その時こそ貴様の最後の時だ! はーっはっはっはっ!
……それにしても遅いな」
- アクセス数

- ページビュー数

プロフィール
- 名前
- 未田 尚(まだ なお)
- 通称
- にゃー
- お仕事募集ちう。
- 文章を書く関係ならなんでも。
連絡は「お問合せ」まで。
携帯用QRコード