キリ番
『変身』
キリ番3550
リク主:日南森空汰さん お題 :『●ギャグもの』『●ファンタジー』 『●主人公は男子で一人称』『変身とか』
『殺し合い』の続き。
「……まぁさ、お前ら人間からすると意外に思うかもしれないけどな。俺ら竜にだって子供時代なんてものがあるワケよ。子供の頃の俺はな、会う大人会う大人全員に可愛らしい可愛らしいって言われてたから、そりゃもうとんでもない美形だったんだろうね。紅顔の美少年っての? ……厚顔無恥じゃねぇよ。いやいやマジ言われてたんだって。誰にって? 母親にだよ。他にか? だけだよ。半径500km母子二人っきりだったんだから当たり前だろ。そーだよ、他にいなきゃ全員だろうが。まーそんな可愛らしい少年時代だったワケだけどな、やっぱり子供って遊ぶのが仕事なワケよ。お前らもやったろ? 蟻の巣に水流し込んだりすんの。ちょうどあんな感じでさ、村焼き尽くすの。で、それだけだと終わっちゃうだろ? それは困るワケ。俺の目的は遊ぶことで、人間滅ぼすことじゃないから。とゆーか、人間いなくなっちゃったらつまんないワケ。それ以上遊べないから。だから後でちゃんとみんな生き返らせて村も元通りにすんのさ。ほら、キャッチ&リリースって奴? 俺自然にやさしいからさ。もうエコの申し子って感じで。いや他のドラゴンだとひでーよ? 喰うワケでもないのに村襲って、逃げる様子がおもしれーとか言って、ブレス使わないで手でばんばん叩いたり、足でがしがし踏んづけて潰して遊んだりすんの。そこらへん俺は優しいからさ、苦しまないようにブレス一発。きっとみんな俺にやられて良かったと思ってると思うよ。その後ちゃんと生き返らせて貰える訳だし。そしたらちゃんと子供作って増えてくれるワケだし。俺もまた遊べてみんな幸福でめでたしめでたし。まあさ、今となっちゃ何が楽しかったんだろうとか思うんだけどさ。あの頃はほんとに夢中になってやってたワケ。壊しちゃ戻して焼いちゃ生き返らせてって、気がついたら一ヶ月くらいぶっ続けでやってたりすんの。流石に腹減ってウチに帰るといつまで遊んでんだって怒られてさ。何、お前らも腹減った? 少しくらいは我慢しろよ。一年くらい喰わなくても大丈夫だろうが。……なんだ人間ってのは不便だな。仕方ねえ、俺の尻尾でも焼いて喰ってろ。どうせ一時間もすれば生えてくるから。いやー、それにしても懐かしいね。子供時代の無邪気な遊び。そうだな、久しぶりにやってみるかなぁ。ん? ああ、そういやまだお前らと戦ってる最中だったっけか。悪い悪い、お前らがあんまり弱すぎるんで忘れてたわ。んでなんだっけ? そうそう、そんな無邪気な少年時代を過ごしてたワケだけどさ、やっぱりだんだん大人になってくワケよ。思春期とかなってくるとさ、女の子に興味とか出てくるワケ。でもさ、さっきも言ったとおり周囲500kmには他に竜なんかいないワケ。思春期くらいだとまだガキだからさ、あんまり遠出も出来ないし。ましてナンパに行って来るぜー、なんて言って出かけるワケにもいかないし。仕方なくモヤモヤした気持ちを遊びで誤魔化すしかないワケよ。そしたらさ、出会っちまったんだよ。あの娘に。もうね、なんてーのか電撃が走ったみたいっつーの? こうドンガラガッシャーン!ビリビリビリー! みたいに。いや冗談でなく膝がガクガクしちまってさ、思わず倒れこんで教会ひとつ潰しちまったくらい。一発でわかったね。コレが恋ってーヤツだって。俺もさ、最初は戸惑ったよ。人間っていや俺らにとっては食料よ。或いはおもちゃ? それに恋愛感情持っちまうってことは、お前らで言えば牛とか豚とか犬とか猫とかにフォーリンラブってことよ。いやありえないから。人の道踏み外してるよ。いや竜だけど。でもさ、何度考え直しても間違いないワケ。心臓はバクバク言ってるし変な汗ダラダラ流れてるし背中がぞわぞわしてるし全身のウロコが全部逆立ってんの。その娘の外見ってのが、なんてーか説明しにくいんだけどさ。絵にも描けない美しさ? ああそうそう、筆舌に尽くしがたいってのか。乏しい俺のボキャブラリーで何とか表現してみるとするとさ、こんがり黒焼きにした上からスライムぶっかけてペガサスのヒヅメで思いっきり蹴り上げたオークみたいな顔。もう俺の負けですゴメンなさいって感じで。でさ、俺村焼いて遊んでる最中なワケで、俺の方見て恐怖で彼女が上げたウギャアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアッッ!!!ってー悲鳴が耳から離れなくなっちまってさ。耳とゆーよりもう脳みそに刻み込まれた感じ? 耳塞いでも聞こえて来んの。もう忘れたくても忘れられない。気が付くともう、彼女のあの顔で頭ん中一杯。ずっと彼女のこと考えてんの。そうなるともう否定したくても出来ないワケ。こいつが運命の出会いってヤツなんだって。そうなるともうじっとしてらんないのが俺。つーかさ、このまま彼女のことしか考えられないでいたら頭おかしくなりそうだったから。で、人間に化けて村に行ったんだよ。今ならさ、本当の自分を偽って女の子を口説くのなんてクズだってわかってるから、この姿のままで堂々と出てって、こう無理矢理かっ攫ってきて地下牢にでも閉じ込めるんだけど。まぁ、その頃はまだガキだからなぁ。いいカッコしたいなんて思っちゃったワケ。で村についてみると、ちゃんと人間に化けてるはずなのに、みんな悲鳴上げて逃げ惑うの。何故かわかんなくてさ。出て来る前にちゃんと鏡で確認してんのに。で、よくよく考えてみたら、姿形が変身しても、身体の大きさまでは変えらんないんだよ。そりゃあな、人間の形してても自分らの倍くらい身長ある奴が村に入ってくりゃ驚くわな。何とかしようと思ったんだけどさ、質量保存の法則だっけ? そういうのあるからどうにもなんない。物理法則無視とか、そんな魔法みたいな話、そうそうないワケ。しゃーないからさ、胴の真ん中あたりでぶった切って、上半身だけで変身したワケ。だいじょーぶだいじょーぶ。重ねときゃ10秒くらいでくっつくから。そうしたらさ、肋骨がぐいーんと伸びてきて足みたくなんの。いやびっくりした。そんなワケで苦労して村に入ってその娘探し出して、なんとかいい雰囲気にもってったワケ。いや緊張してたからどうやったのかなんて全然覚えてやしないんだけど。ただ、彼女が『社長さん寄ってかない?』って言ったことだけは覚えてる。で、いざコトに及ぼうってところでふと気付いたんだ。ほら、そん時の俺って上半身だけじゃん? 無いのよ、ナニが。何がって? いやだからナニが。このまんまじゃ何も出来ねー! って慌てて下半身の所に戻ってさ、ほら、俺って東洋型だから胴長いだろ? 首周りもウエストも全部おんなじサイズで、上から129.3、129.3、129.3みたいな。で、その胴のとこだけ切り取って上下くっつけたワケ。そしたら前足の直ぐ下が後ろ足とかってさ、まるで逆ダックスフンド。はっきり言って笑えるカッコだったんだけど、そんなこと気にしてられる場合じゃねーし、人間に変身すりゃ関係ないしな。で、ナニがあるのをちゃんと確認してから、大急ぎでその娘の家まで戻ったワケ。そしたらなんか鍵かかってんの。家ん中からは変な声聞こえてくるし。こりゃあれだ、他の男連れ込んでんだな、って慌てて窓から家の中覗き込んだワケよ。そしたら相手の男ってのがすげーペガサス面なの。きっと彼女の顔蹴飛ばしたのはこの男に違いねぇ、いつの間にそんな関係になりやがった、こんなイケメンにゃ敵わねーちくしょー! って頭ん中ぐっちゃぐちゃンなってさ。だって彼女と一緒にいると、そりゃもうすげぇお似合いだったんだぜ? で、もうこの世の全てから逃げてやるってくらいに無我夢中で走って逃げて胴のところまで戻ったワケだけど、やっぱり精神状態が普通じゃなかったせいだろうね。胴なのにさ、間違えて首にくっつけちまったワケ。もうさ、胴がないのに首だけでろーんって長いとかさ。コレってドウよ? いや洒落でなく。自分で言うのもなんだけど、こんな変な生き物見たことねぇ。どんな想像上の生物なんだよ、はっはっはっ。何笑ってんだコラ。笑い事じゃねーんだよ。……ところでお前らそういう想像上の生き物とか信じる方? いやいや馬鹿にしたモンじゃないよ。お前ら人間だって、昔は『そんな変な生き物いるワケない』って言われてたんだから。2万年くらい前までは。まーそれはともかく、そんな自分の情けなさに絶望してさ、こうなったら死んでやる! って木からロープ垂らして首吊ったの。そしたらどうなったと思う? 足付いちまいやがんの。首長いから。まぁさ、逃げたくても思い出からは逃げらんないし、死にたくても首も吊れないんじゃ仕方ないからさ、何とか忘れようとして、それから女の子と見れば声かけたりするようになったワケ。出会い系っての? 手ぇ出したりして。でもさ、そんなトコってやっぱりそういう娘しかいないワケよ。しばらく続けてたけど、そのうち諦めて真面目になって。そしたらその後すぐよ。今の嫁に出会ったの。今じゃあコレが運命だったんだって思うんだわ。やっぱりアレだね、運命の出会いってのは自分から必死こいて探すモンじゃないんだね。向こうから来てくれるのをじっと待つモンなんだよ。あれだよ。竜だけに、首を長くして」
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プロフィール
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- 未田 尚(まだ なお)
- 通称
- にゃー
- お仕事募集ちう。
- 文章を書く関係ならなんでも。
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