その他。
クリスマス
前
『兄妹』
『レシピ』
『マフラー』
『ハロウィン』
『エイプリルフール』
「おにーちゃん、メリークリ○○ス!」
「はいはいメリクリメリクリ。とゆーかまだイブだけどな」
「出かける仕度すらしてないってことは、おにーちゃんは今年もおひとり様ですかー?」
「あのな、本場の欧米では、クリスマスは家族で過ごすものなんだ。それにクリスマスといえば聖夜だ。今日くらいは、世俗から離れて静かに暮らしたいだろ」
「うんうん、そーだねー、そのとーりだねー」
「ちくしょう、信じてないな」
「シングルベールシングルベール~きっと君は来ない~」
「止めい。そもそも誰も来る予定はない」
「大丈夫だよ。おにーちゃんに彼女どころか友達すらいなくても、私だけはおにーちゃんの味方だからね」
「あのな、クリスマスってのは神聖な行事なんだぞ? それを商業主義に踊らされた挙句、みんなしていちゃいちゃちゅっちゅとかしやがって。そんな神を冒涜する行為に加担する気はない」
「またそんなこと言って。おにーちゃん、神様なんて信じてないくせに」
「何を言う。俺は毎日の参拝を欠かしたことはないぞ」
「ああ、そういえば、よく隣の神社で拍手うってるよね」
「そうだ。俺ほど信心深いオトコはそうはいないぞ」
「……なんだろう、何かが決定的に間違ってる気がする」
「すぐに思い浮かばないんなら大したことじゃないんだろ。それより、そういうお前だってこの時間に家にいるじゃないか」
「私はおにーちゃんとは違うのデス。引く手数多の誘いを全部断った上で、ここにいるんだよー」
「はあ? 引く手数多だったのに、なんてウチにいるんだよ?」
「だって……せっかくのクリスマスイブなんだもん。大切な人と過ごしたいよ」
「大切なって……お前、まさか」
「そう、今日のクリスマス特番、拓巳君が司会なの!」
「許しません! あんなチャラチャラした男、おにーちゃんは認めません!」
「べー。おにーちゃんに許してもらう必要はありませんー」
「うう……昔は『おおきくなったらおにーたんのおよめさんになるー!』、って可愛かったのに」
「そんな物心も付いてないころの話をされても覚えてませんっ」
「はぁ。それにしても、クリスマスにテレビとは。年頃の娘が色気のない話だな」
「私は自分で望んでココにいるのです。他に選択肢のないおにーちゃんとは違うのですよ」
「はいはい、俺の負けでいいよ」
「わかればよろしい。でもさー、おにーちゃん。外見は良くも悪くもないんだから、恋人のひとりくらいいても不思議じゃないのにねぇ」
「そこは悪くない、だけにしといてくれ」
「おにーちゃんを好きになってくれる人は無理でも、おにーちゃんが好きな人くらいいないの?」
「そこはかとなく引っかかるが……まぁ、いるようないないような」
「何だと! 吐けっ、どこのどいつだぁ!」
「いや、なんでおまえが半ギレ?」
「だって早く警察に連絡して、その人の家を警備してもらわないと!」
「お前……兄を犯罪者みたいに……」
「そこまでは言わないにしても、兄の想い人とゆーことは、下手したら私の姉になるかもしれない人ですよ? 気にならないわけがない!」
「黙秘します。ええ、例え首を絞められようとも」
「例えが具体的だ……とゆーことは本気でしゃべらない気だね? そこまでして隠すなんて、よほど言えないような相手なんだ」
「とゆーか、妹とはいえ他人に言うような話じゃないだろ」
「そういえば、お隣のレトリーバーがこの間子犬を産んでたけど、まさか……」
「お前は俺をなんだと思っている」
「まぁ、こうなったおにーちゃんが口を割るわけないから、これ以上は聞かないけど……でも、告白とかしないの? 今日はせっかくクリスマスなのに」
「出来るわけないだろ。告白して、振られるならいいけど、付き合うなんてことになったらどうするんだよ」
「どうって……デートとかすればいいんでない? ちゅーとか出来るんだよ?」
「ちゅ、ちゅーって! お前、そんなことできるわけねー!」
「うわ、自分の兄がここまで奥手だったとわ……正直引くわー」
「ああ引け引け。でもってこの話題には二度と触れるな」
「そこまで言われると逆に気になるんだけど。まぁいいや。さて、番組が始まるまで時間もあることだし、ちょっとくらいクリスマスらしいことをしとこーよ」
「あのな、いきなりウチにいるとか言われても、用意なんかしてあると思うのか?」
「うん」
「……よくわかっていらっしゃることで」
「何年妹をやっていると思うのですか。いいから早く出しなさい。拓巳君が出てきたらそれどころじゃないんだから、それまでに一通り終わらせとかないと」
「兄のせっかくの準備が随分雑に扱われたもんだなおい」
「ほら早くー。ご馳走をよこせー」
「はいはい。さて、クリスマスといえばチキンだよな。本場では七面鳥らしいが、ここは日本だ。そもそもクリスマス本番よりイブの方が盛大だって時点で日本式だし」
「御託はいいから早くしろー腹減ったー腹減ったー」
「まったく、どうしてこんな娘に育ってしまったんだか。……まぁいい。今に始まったことじゃないしな」
「そうそう。いい加減あきらめなさい。とりあえず食べるものが先」
「はいはい。とゆーわけでケンタのフライドチキンだ」
「うん、安っぽいクリスマスの定番だね」
「安っぽいゆーな。とゆーか、ウチの台所事情を考えてくれ」
「うん、そのあたりに文句をつける気はありません。でも、流石にコレだけじゃないでしょ?」
「ああ、もちろんだ。続いてー、モスチキン」
「普段は食べないんだけど、この時期になると無性に食べたくなるんだよね。クリスマスはキャンペーンとかやっててお得だし」
「で、コレがファミチキ」
「えー……ファミチキも美味しいけど、えっと……」
「あと、こっがマックのチキンナゲットな」
「おにーちゃん!」
「よし、ツッコミ来い」
「マクドナルドの略はマクド!」
「……そっち?」
「だいたいね、マクドナルドを略してどうしてマックになるの!」
「いや、マクドナルドはMcDonaldだろ? 略してMcだからマック……」
「そんなことはきーてない! ココは日本なの。英語とか関係ないの! マクドナルドはまくどなるどで、略したらマクド以外のなにものでもない!」
「えっと……よくわからないけど、ハイ」
「全くおにーちゃんってば常識なさすぎ!」
「どこの常識だよと無性に聞きたいのだが」
「それにしても、なんでこんなにフライドチキン集ばっかり? さすがにコレはキツいよ」
「大丈夫だ。ほら登利平の鳥めし!」
「同じだっ!」
「……覚悟の上とはいえ、ハイキックは止めなさいとあれほど」
「確かに美味しいけど、私も好きだけど、今出すものじゃないと思います! ……とゆーか、その冗談笑えない」
「正直スマンかった。でも今日全部食なきゃいけないわけじゃないし。残ったのは冷蔵庫に入れとけば何日かは大丈夫だろ」
「確かに食べられなくなるわけじゃないけど……食べ物で遊んじゃダメです! 買った時が食べ頃なのっ、買ったらすぐ食べなきゃダメなのよっ!」
「はい。ごめんなさい」
「はぁ、全く。……でも、チキンばっかりってのはアレだけど、ちょうど良かったかもしんない」
「ん? 低カロリーのチキンはダイエットにちょうどいいからか? ああ、そういえば、裸で体重計に乗っても大して変わらないと思うぞ?」
「フライドチキンじゃ痩せないっ! じゃなくて、おにーちゃんがケーキとか用意してなくて良かったってこと」
「ケーキ……ってことは、まさか」
「そう! ケーキ作ってみました!」
「そうか。じゃ、そういうことで」
「……どこにいくのかなー?」
「実は、これからおなかが痛くなる予定で……」
「その原因を20文字以内で述べなさい」
「これからおなかによろしくないものを食べるからです」
「ふーん? それはいったいナンデスカー?」
「……大量のフライドチキンです」
「そっかー。じゃあ、おなかが痛くなる前にケーキは食べられるよねー?」
「モンダイナイデスヨ?」
「よろしい。では……じゃじゃーん! 渾身の力作です!」
「あー……確かにこりゃ渾身の力がこもってるって感じだ」
「何かご不満でも?」
「とりあえず、ケーキだってのはわかった。そう言われたから。……で、何のケーキ?」
「ブッシュドノエル! クリスマスだから!」
「あー、なるほど。確かに武器代わりに振り回た後に火にくべた薪はこんな感じかもしれないな」
「なによー、どっからどう見てもブッシュドノエルでしょ?」
「じゃー聞くけどな。俺が知ってるブッシュドノエルは、周りがチョコクリームで覆われてるはずなんだけどな?」
「多分、皮はしかさんが食べちゃったんだよ」
「そもそも中身はロールケーキのはずなんだけど……コレ、巻いてないよな。むしろ断層?」
「きっとくまさんがこの上でジャンプしたんだね」
「なるほどー。森の中ならそういうこともあるかもねー」
「そうそう、実り豊かな森には動物もたくさんいるんだよー」
「……とりあえず、食べるか」
「……そうだね」
「でも、兄妹仲良く手作りのケーキを食べるってのも悪くないよな。出来はともかく。……いや、思ったよりまずくない?」
「さすがに味見はしたよ。前のこともあるし」
「そうか。味見なんて高等技術が使えるようになったか。お前でも成長はするんだな。兄は感無量だ」
「なんかすごいバカにされた気がするけど……うん、でもありがと」
「いや、そこは礼をいうところじゃないぞ。ほめたわけでもないし。このケーキだって思ったよりまずくないってだけで、ぱっさぱさで喉渇くし」
「はいはいごめんなさいねー。っと、そーだ紅茶でもいれるよ」
「それは助かる。これ以上口の中の水分を吸われては口内炎になってしまう」
「はいはい。そーだおにーちゃん、せっかくだからとっときのにしようよ。アレってどこにしまったっけー?」
「えーっと、確か右側の戸棚の……って待て!」
「ん? あれ、なにこの箱? ……って、もしかしてケーキ? うわ、しかも二段重ねの高いヤツだ!」
「あー……いや、なんとゆーか」
「……もしかして、気を使ってくれた?」
「いや、アレだ。ひとりで喰おうと思ったんだよ。ラウンドケーキをひとりで食べるのって夢だろ?」
「そっかー。うん、でももう見つけちゃったから、独り占めはダメだよ?」
「ま、仕方ないな。……でも、喰えるのか?」
「ほら、ケーキは別腹ってゆーし」
「そのケーキを食べた後に言う台詞じゃないけどな」
「でも、お腹いっぱいでもきっと美味しいよ。おにーちゃんが買ってくれたケーキだもん」
「ま、店で一番高いヤツだからな。美味くないと俺が困る」
「いただきまーす。……うん、やっぱり私が作ったのとは味が全然違うね」
「そりゃな。……そういや、テレビはいいのか?」
「わー! 忘れてた!」
「そのために家にいたんだろうに。それを忘れてるとは、わが妹ながら情けない」
「うわ、はじまってからこんなに時間経っちゃってる」
「しかし、アイドルにあこがれるのもいいけどさ、お前はどうなんだよ。恋人でも作ろうって気はないのか?」
「んー……そんな慌てる必要もないと思うから、今はまだ拓巳くんでいいやー」
「まったく、まだまだ子供だよな。手のかかる妹を持つと兄は大変だよ」
「妹の面倒を見るのは兄の義務ですよ?」
「お前が俺の面倒みてくれたっていいんだぞ?」
「その可能性の方が高いかもねー?」
「へーへー。期待しないでまってますよ」
「……ねー、おにーちゃん」
「ん、なんだ?」
「来年も、こうしてられるといいね」
「……そうだな」
『年賀状』
『四月になってもバカ』
『たなぼた』
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プロフィール
- 名前
- 未田 尚(まだ なお)
- 通称
- にゃー
- お仕事募集ちう。
- 文章を書く関係ならなんでも。
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