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年賀状

 

前   『兄妹』   『レシピ』   『マフラー』   『ハロウィン』   『エイプリルフール』   『クリスマス』 「大晦日だね、おにーちゃん」 「んー……」 「もうすぐ今年も終りだね」 「んー……」 「特に何もない一年だったね」 「んー……」 「もー。何やってるの?」 「んー……年賀状書いてる」 「今頃!?」 「今頃。そういうお前はちゃんと出したのか? 年賀状書いてるところなんて見なかったぞ」 「大丈夫。私はちゃんと出してくれた相手に書くから」 「……それはまた効率のよいことで」 「ふーんだ。おにーちゃんだって、出すのは結局年が明けてからでしょ? 受け取る人にとっては一緒じゃない」 「問題ない。俺のは、一日じゃ書けないとひと目でわかる年賀状だからな」 「……それって、凝り過ぎたせいで間に合わなかっただけじゃないの?」 「そうとも言う」 「そうとしか言わない。ところで、そんな手の込んだ年賀状ってどんなヤツなの? ……って、うわ細かっ!」 「クロスワードだ。完成すると答えが『あけましておめでとう』とかになってるヤツ」 「細か過ぎて目がチカチカする。虫眼鏡か何かないと出来ないよ、コレ。……おにーちゃんて、時々どうでもいいところですごいよねぇ」 「あんまり褒めるな」 「褒めてない。えっと、あて先は……女? ……誰なの、コレ」 「ん? ああ、隣の席のコだ」 「ふーん……親しい人なんだ?」 「いいや、全然。隣の席だから時々話くらいはするけど、それだけ」 「それなのに、こんな手の込んだ年賀状出すんだ?」 「出す相手には全部コレだ。といっても、ちゃんとひとりひとり問題と答えが違うんだぞ。ちなみに40人分」 「あぁなんだ、そうなんだ……って、うわ、ホントにコレを40枚も手書きしてる。……でもなんだって隣の席だってだけの人にまで、こんな手の込んだ年賀状を出すの?」 「仕方ないだろ。違う内容にしたら区別してるって問題になるし、出さない相手がいるとまた色々言われるし」 「相手によって区別するのは当たり前だと思うけど……でも、おにーちゃんの年賀状くらいで、そこまで気にする人はいないでしょ?」 「そうだといいんだけどな。……っと、終わった」 「あ、カウントダウン始まるよ。ギリギリセーフだね」 「おお、危なかったな。これだけやって、年越しちゃいました、じゃ洒落にならないし」 「今更何言ってるんだか。ほらおにーちゃん、カウントダウンいくよー」 「はいはい。ごー、よん、さん」 「にー、いち」 「「ぜろ!」」 「あけましておめでとう」 「あけましてお年玉!」 「だからせめておめでとうくらい言え。その前に、ほら」 「ほえ? 年賀状?」 「そう。お前宛のヤツ。他のはまだ出してないからな。正真正銘、お前が一番最初だ」 「わー……えへへ、ありがとう!」 「さて、そしたら他の分出してこなくちゃな。ちょっと出かけてくる」 「あ、待って! 私も今年初めての年賀状……って、まだ書いてない!」 「じゃ、帰ってきたら貰うから、それまでに書いとけ」 「ダメ! いますぐ!」 「わかったわかった。なら早くしてくれ」 「でも適当なのじゃなくて、私じゃないと出来ない年賀状……えーと」 「うん」 「えっと、えっと……はい、コレ!」 「え? なんだコレ?」 「私の拇印! 私にしか作れない年賀状!」 「確かにお前だけだろうけど……。お前、今年の年賀状は楽でいいな」 「ダメダメ。私の拇印は、誰にでも押せるものじゃないんだから」
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