キリ番以外
『トラとネズミ』
リク主:ひなたさん リク :『トラとネズミ』
「さあ、俺を喰え!」
「おまえは何を言っているんだ」
「お前はトラだ。トラといえば食物連鎖の頂点。喰う事はあっても喰われることは無い」
「人間が入ってくるとまた違うけどな」
「そして俺はネズミ。ネズミと言えば食物連鎖の最下位。いずれは喰われる運命」
「いや、寿命を全うするネズミもそれなりにいると思うぞ」
「どうせ喰われるならネコとかキツネとかの中途半端なヤツより、一足飛びに最強のヤツに喰われたい。それが喰われる側のプライド!」
「素直に食べられない方法を考えろよ」
「お前は喰いたい、俺は喰われたい。お互いの利害は一致した。さあ喰え」
「いや、食べたくないし」
「なにぃ、俺みたいな薄汚いドブネズミは喰えないってのか!」
「お前はどうみてもハツカネズミだけどな」
「衛生面には気をつけてきたから病気なんて持ってないぞ。ちゃんと風呂にも入ってきたから清潔だぞ。もちろん腹壊したりなんてするわけがない」
「残念だが、私は菜食主義者なんだ。他をあたってくれ」
「なん…だと…?」
「言っておくが、菜食主義者というのは草しか食べないヤツのことだ」
「知ってるよ! そんなことは知ってるよ! 俺が聞きたいのはなんで肉食動物が草なんか喰ってるんだってことだよ!」
「肉食動物だって草くらい食べるさ。ネコとかイヌとか」
「毛玉処理とかビタミン補給とかの補助食あつかいだよね? 主食じゃないよね?」
「パンダの主食は竹だろう。パンダに出来てトラに出来ないはずがない」
「パンダは雑食だよね? しかも生存競争に負けたから仕方なく竹食べてるんだよね?」
「生存競争に勝ったら肉喰わなくちゃいけないとは決まってないだろ」
「いや……まぁ、確かにその通りなんだけど」
「この世界は弱肉強食。強いものは食べたいものが食べられる。私は草が食べたい。だから草を食べる。何か問題でも?」
「問題だらけだよ! むしろ問題しかないよ! でもどこが問題なのか指摘できない、悔しい!」
「考えてみろ。今は地球温暖化が問題になってる。エアコンとか使える人間たちよりも、私たち野生動物にとっての方が大問題だ」
「いきなり話がでかくなったなおい」
「例えば私がシカを十匹食べたとする。その十匹は当然草を食べてるわけだから、それを食べた私が草を十匹分食べたのと同じ計算になるわけだ。だったら最初から草を食べれば一匹分で済むだろう。エコロジーだ」
「間違ってるから! 色々間違ってるから!」
「まぁ、そんなに興奮しないで草でも喰え。そこら辺に生えてるヤツ」
「ちくしょう、コレで勝ったと思うなよ!? 絶対に俺を食わせてやるんだからね!」
「なんだかなぁ」
「今日も来たぞ! さあ喰え!」
「おお、いいところにきた。聞きたいことがあるんだ」
「俺はオマエに喰われたい、言わば身も心も捧げているわけだからな。どんな質問にも答えるぞ。ちなみに今日の下着は勝負下着だ」
「そんなことは聞いてないぞ全裸。そうじゃなくて、ネズミは雑食だよな?」
「おお。なんでも喰うぞ。とゆーかなんでも喰わないと生き残れないぞ」
「ということは植物も食べるわけだな? 実はいま草ばっかり喰ってるんだが、流石に飽きてきた。何か美味いものとか教えてくれ」
「そうだな、一番美味いのはGかなぁ」
「それ食い物じゃない」
「いやいやマジ美味いんだって。あのぱりぱりした歯ごたえ、中からとろーりと出てくる液状の何か。たまんねぇ。それに、ちょっとくらい捕り過ぎてもすぐ増えるから安心して喰えるし」
「やめろ、想像しちまう。というか、そもそもそれは植物じゃないだろ」
「植物で美味いっていうと……やっぱ米か。米は美味いぞ。一度アレ喰ったらもう草なんか喰えないね」
「んー、米かぁ。でも米って人間のところに行かないと無いんだろ?」
「まぁ、お前じゃ田んぼに行くってだけで大騒ぎだろうな。ここは大人しく俺を喰っとくってのでどうだ?」
「どうだじゃねぇ」
「最近、俺が住んでる家でネコを飼いだしたんだ。このままじゃ、いつか俺はネコに喰われちまうぜ? そしたらお前も困るだろ。だからその前にほら」
「一向に構いません」
「ちくしょう、死んでやる。喰われもせずに無駄死にしてやる」
「流石に人間に狩られてまで米喰いたくないな。他になんかあるか?」
「そうだなぁ。このあたりにあるもんは大体喰ってるだろうし、人間のところに行かないってなると、特別な食材は手に入らないわな。ってなると、喰い方を工夫するしかないだろ」
「なるほど。具体的にはどうすればいい?」
「人間のところで見ていると、料理の基本は焼く煮る蒸すだな」
「それってどうするんだ?」
「まずは火を使って……」
「使えるか阿呆」
「いや、山火事とか起こるだろ。その時にこうばーっと」
「食事のたびに山火事が起こせるか。というか火事になったら食事なんかしてないで逃げるだろ普通」
「お前の口から普通とか聞きたくないが。まぁいいや。火を使わない料理ってーと、うーん……サラダとかかな」
「ふむふむ、それはどうするんだ?」
「まず皿……は無いから大きめの葉っぱに葉物の野菜を乗せる」
「野菜というか、そこらに生えてた草だけどな。……こんな感じか?」
「出来たら喰う」
「いただきます。……それで?」
「終わり」
「意味あるのかコレ」
「ないな。それと皿は喰うな」
「よう、また来たぞ……って、お前最近顔色悪いぞ?」
「ダイエット中なんだ。放っといてくれ」
「いや、どう考えても偏食が原因だろ。肉食動物ってのは肉食うように出来てるんだよ。草喰ったってほとんど栄養になんかならないんだ」
「そうなのか?」
「知らないで菜食主義なんてやってたのかよ。いいか、植物ってのは消化に時間がかかるから、草食動物の腸は長くなってんだ。肉食動物の短い腸じゃ消化の時間が短いから、植物は消化しきれないんだよ。あと腸内微生物がいないとか色々問題があるんだよ」
「博識だな。さすが人間の家に住んでるだけのことはある」
「人間の家じゃテレビ見るくらいしかすることないからな。……そういうわけだからよ、大人しく肉喰ってろ。例えば俺とか」
「喰わないって。というかダイエットくらいしたっていいだろ。女はいつだってキレイに見られたいもんなんだ」
「そんなもんなのか? よくわかんねぇけど」
「これだから男ってのは。いいか、良い男を捕まえるってのも、ある意味狩りの一環なわけだ。自分を磨いて狩りの成功率を上げるのは肉食系女子として当たり前だろ。獅子は兎を狩るにも全力を尽くすと言うし」
「お前はトラだけどな。というか本来の意味で肉食しろよ」
「だが断る」
「まぁそれが本当だとしてもな、ダイエットなんてする必要ないだろ。オマエは充分力強くてしなやかでキレイなんだから。むしろダイエットとかしてやつれてる方がキレイじゃなくなっちまうと思うが」
「なんて人前では言ってても、陰ではあんなに太ってるなんてありえないとか言ってるんだろう。わかってるんだ」
「他人のこと信用できなくなったらおしまいだと思うな」
「ちなみにトラの食事は週に一回。今日までに四食抜いてます」
「一ヶ月じゃねぇか! 抜きすぎだよ!」
「四食といえば、人間なら一日半だ。大したことじゃない」
「比較対象おかしいよね?」
「というわけで、腹が減らないように今日はもう寝る。さっさと帰ってくれ」
「なぁ。死んだ動物の身体は、生き物じゃなくてただのモノだろ? あとはただ朽ちて土に還るだけだ。自分が殺したわけじゃないなら、ソレを喰っても殺生じゃないし、エコにも関係ないと思うんだがな」
「言っておくがな。お前が勝手に死んでも食べたりしないぞ。埋めて花の一本も供えて終わりだ」
「あー、喜んでいいのか悲しんでいいのか」
「というか、オマエ一匹食べたところで腹の足しにもならないからな」
「うん、気付きたくなかった現実を教えてくれてありがとう」
「しかし、あんなにやつれやがって。ダイエットとか言ってやがったけど、どう考えたって肉喰ってないせいだよな。いざとなったら、俺がヤツの口ン中に飛び込んで無理やり喰われるしかねぇ……って、なんじゃこりゃあ!」
「よう、ネズミじゃないか。来てたのか」
「来てたのかじゃねえ! 辺り一体禿山じゃねぇか。象の群れが来たってこんなふうにゃならねぇぞ。どうなってんだこりゃ!」
「ダイエットの反動ってヤツ? 腹減ってた分食べ過ぎちまった」
「喰ったのか。ひとりでか。しかしいくらなんでも喰いすぎだろう。しかも心なしかつやつやしやがって」
「まぁ、週一だった食事を毎日にすれば、単純計算で7倍食べることになるからな」
「どう見てもそれどころの量じゃねぇよ。てーかマジでダイエットだったのかよ」
「……しまった」
「なんだよ今度は。もう少しくらいのことじゃ驚かねぇぞ」
「もう腹が減ってきた」
「……いいよ、好きなだけ喰ってくれ」
「絶食後の食事って、なんでこんなに美味いんだろうな」
「あー、そっかー。消化吸収効率が草食動物の十分の1、二十分の1だとしても、その十倍、二十倍喰えばトントンってことか……そんなわけあるかぁ!」
「しかし困ったな。こんなに喰ったらリバウンドしちまう」
「しろよ、むしろ太れよ! 心配して損したよ、こん畜生!」
「動物だから畜生なのは仕方ないだろ」
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プロフィール
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- 未田 尚(まだ なお)
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- にゃー
- お仕事募集ちう。
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