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BLOODY BODY


犯人のもとへ…

八尾と前橋は職員室に戻り、成島が持っていた生徒の個人情報のファイルを引ったくると乱暴にめくり始めた。
「ちょ、ちょっと乱暴に扱わないで下さい」
「丁寧にめくっている暇は無いんだ。桂言葉はどこだ?」
「おい、八尾よ、桂は違うクラスだぜ?」
前橋の指摘に一瞬呆然とし、ファイルをばさっと取り落とした。
「お前はたまにこんな空振りするから困るんだよ。もう少し丁寧にやれないかね?」
「あー、あんたにそう言われるとこの俺も弱っちゃうんだよなぁ」
八尾にとって前橋は上司の他に逆らえない唯一の人物である。もし前橋でなく他の刑事なら八尾は「うるさい!」の一言で退けてしまうだろう。ふと八尾は2年前の出来事を思い出した。その時八尾は捜査の過程で重要な証拠品を紛失するという大きなミスを犯し、上司から事情を聞かれていた。しかし八尾は一向にミスを認めなかった。それどころか上司に反抗さえした。それに苛立った前橋は突然立ち上がり、八尾を勢いよく引っぱたいた。そして普段は穏やかな前橋は凄まじい剣幕で怒鳴りつけた。
「お、お前はな、熱血で執念深くてどんな難事件でも決して諦めない良い刑事だと俺は思うんだ。でもな、ミスを素直に認めないなんて刑事として終わってるんだよ馬鹿野郎!」
八尾はあまりにも凄まじい剣幕に圧倒され、しばらく立てなかった。そしてミスを素直に認め、謝罪した。この時八尾は前橋には逆らえないと悟った。そして前橋を自分にとってかけがえの無い人間だと思った。
「おい、何ぼんやりしてるんだ?」
前橋の言葉で我に返った。
「あんた、アホ面して何考えてたんだ?」
「いや、疲れてぼーっとしているだけだ。ええと、桂言葉はこのファイルには載ってないんだよな」
「ああ。向こうの髪をがちがちに固めてツンツンさせている男が桂の担任だ」
前橋が言う、髪をがちがちに固めててツンツンさせている男の名は江別彰信である。八尾は江別のもとに行き、一言二言言葉を交わし生徒の個人情報で満たされたファイルを受け取った。
「あの野郎、法律で規定されているから見せられないとか言いやがった。それどころの問題じゃないんだってんだ」
「しゃーない。頭の悪い奴らは変な所で情報保護を唱えるからな。過剰反応で極端なことやっている癖して意外と情報漏えいは酷い。さて、桂言葉の住所は…」
桂言葉の住所はK県H市○○町△‐□□‐◇とあった。
「よし行くぞ」
八尾の一言とともに、2人は職員室を出た。外に出ると屋上での処理を済ませた警官たちがぞろぞろとやってきた。2人は車に乗り、前橋がハンドルを握った。
「急いで欲しいが丁寧に運転してくれよ。公道をサーキット場にされたらどうにもならん」
「分かっている。よし、しっかり掴まってくれ」
「掴まれって…おい。わわっ!」
前橋は勢いよく車を発進させた。普段は丁寧な運転を心がけている前橋だが、せっかちな八尾に急げと言われると運転はアクロバットなものになる。学校を出て県道を数百メートル走ると交差点があるが、そこを華麗なハンドル捌きでドリフトしながら駆け抜けた。言葉の家の近くにある30分100円という低料金のコインパーキングに着いた時、八尾はかなりのアクロバットな運転のせいで冷や汗をかいていた。
「急いでくれたのは有難いが身体に良くないぜ」
「俺はお前が急げで言ったから飛ばしただけだ。文句は無いだろ」
「そう言われてはどうしようもないよ」
「そーいや桂の親父は不動産関係の仕事をしてるって聞いたぞ」
「ふむ。ってことは中々金があって家もたいそうご立派なんだろうな」
2人は車を降り、やや早歩きで家に向かった。八尾が言ったとおり、言葉の家は周りの家に比べ大きく立派で、存在感があった。2人は改めて気を引き締め、家の門の前に立った。

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