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BLOODY BODY


行方不明

前橋が呼び出しベルを押した。「ピンポーン」という2点式のどこにでもある呼び出し音が閑静な住宅街に響いた。10秒ほど間を置いて、インターフォンから声がした。母親の真奈美のようだ。
「どなたですか?」
「K県警の者です。お宅のお嬢様に少々お尋ねしたいことがありまして…」
「警察のお方ですか?来てくださったんですね」
この言葉に2人は戸惑った。突然警官が来たら拒絶する反応を示すはずだろうと思ったからだ。
「あ、あのー、警察を呼ばれたようですね?」
「い、いや警察は呼んでいないのですが、娘が中々戻ってこないのでそろそろ不安になっていたところです」
「えっ?そうなんですか…」
八尾と前橋は嫌な予感がした。行方不明の少女は言葉かも知れないと思ったのだ。
「インターフォン越しのやりとりはなんですから、どうぞうちにお上がり下さい。扉は開けてあるのでノックしないで上がっても構いません」
「分かりました…」
八尾が門のハンドルを握り、90度左に回すと門はやや軋みながら開いた。玄関まではやや距離のあるタイル道があり、辺りに広がる庭は細かく手入れされ美しかった。玄関前に立ち、ノックしないで上がっても構わないと言われたが、礼儀として一応ノックした。
「先ほどお伺いした者です…私が八尾俊徳、右の男が前橋洋史です」
「あらあらノックされなくても良いと言った筈ですが」
「そう言われましても礼儀ですからね」
「まあ、それもそうですよね」
「では、娘さんはどうされたんですか?」
八尾は真奈美を促した。長身と低く冷たさをほんの少し感じる声に真奈美はたじろいだ。
「え、えーっと、あの、今朝娘を起こそうと思い部屋に向かったら蛻の殻でして、靴や服も無かったので家出と思ったのです」
「なぜ、警察には届けなかったのですか」
「行き違いになるのが嫌だったんです。前に連絡が取れなくて警察を呼んだ途端に娘が帰ってきたということがあり、連絡が取れなかったのは携帯電話の置き忘れだったんです。それ以降連絡が取れなくてもしばらく様子を見るとしたのです」
「うむ。そうでしたか。ところで我々はある事件を捜査しています。捜査の過程でとある人物が浮かび上がり、当たろうとしているのです。その人物がそう、桂言葉なのです。あなたには2人の娘さんがいると伺っております。そのうち行方不明なのは姉なのではありませんか?」
真奈美は呆然とし、一瞬よろけた。
「け、刑事さん、ほ、本当に娘、いや言葉は事件を起こしたのですか。それで逃げているから行方不明という訳なんですか?」
「まだ証拠は揃っていないので断言は出来ません。しかし証言を辿るとマークすべき人物となるのです」
「そ、そんなあ…」
真奈美はがっくりと膝を折り脱力した。
「お気持ちはよく分かります。しかし犯人ではない可能性もあるのです。どうか捜査にご協力ください」
「は、はい…協力します。娘のためにもそして被害にあった人のためにも」
「ありがとうございます。ではまずは娘さんの部屋を見させてください。何か大事なものが見つかるかもしれないのです」
真奈美はこっくりと頷いた。そしてゆっくりと歩き、八尾と前橋を案内した。

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