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BLOODY BODY


終章

「ごめんね、電話がかかってきたからちょっと待ってて」
八尾が電話に出ると、相手は前橋だった。
「俊さん、今何してる?」
「俊さんとはな…警察学校に居たとき以来久しぶりに呼ばれたな。んで史さん、何の用だ?何してるかって?墓参りだ。伊藤誠のね」
「そうか…実はな、その桂が…」
「何だ?」
「死んだ。首を吊ってね」
八尾は呆然とし、しばらく声が出せなかった。
「…ど、どういうことだよ、それ…」
「送致の日で、部屋を開けたら首を吊っているのが見つかったんだ。そばには遺書があったとか」
「そうか…そんなに彼の元へ行きたかったんだろうな」
「どうもそのようだ。遺書には『誠君のもとへ行きます。一緒のお墓に入れてください』って書いてあったってよ」
「やれやれ…最悪の結末になってしまったな」
「でもよ、取調べには素直に応じて知りたいことは全部答えてくれたし、それに彼女は誰にも邪魔されずに誠のもとに行けたんだ。別に悪くは無いんじゃないのかい?」
「あのな、よく考えろよ。反省して帰ってくるのを待っている人がいるんだぜ。親とかさ、兄弟姉妹とか…あとな、この世から去ってお終いなんて罪に素直に向かい合わない愚行だと俺は思うな」
「そうだよな…時間がかかっても帰ってくるのを待っている人が居るんだよな。大抵は勘当されてしまうから関係ないだろと思っていたんだよ。じゃあ切るよ」
「分かった」
八尾は電話を切った。振り向き心を見ると不安げな表情をしていた。
「あの…姉はどうしたんですか?」
「誠君のもとへ行ったよ」
「それって…この世界には居ないってことですよね」
「そう、なるね…」
八尾が言うと、心は泣き出した。
「お、お姉ちゃん、ひ、ひどいよ…何で私たちを置いて行っちゃうの?何で…」
八尾はただただ抱きついてきた心を呆然と眺めるしかなかった。しばらくすると泣き止み、涙で濡れた目をした顔を上げた。
「もうこうなってしまって取り返しのつかないなら仕方ないですよね…私、もう泣きませんから」
「うん。それでいいんだよ」
八尾は優しくそう言うと心は大きく頷いた。心も八尾と同じく墓前に線香と花束を供え、手を合わせた。
「では、これで帰ります。誠さんと世界さんのお母さんには姉に代わって謝りたいと思います」
「分かったよ。じゃあ気を落とさないでね」
「分かりましたっ」
明るい声で心は言い、霊園の出口へ歩き始めた。出る直前、足を止めてやや大きな声でこう言った。
「本当にもう泣きませんからっ」
「分かった。それでいいんだよ」
再び心は歩き始め、姿が完全に見えなくなった。そして八尾はこう呟いた。
「これでいいんだよ」
と。

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