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BLOODY BODY


首無し誠

八尾が前橋からの電話により勤務先に駆けつけたのは、電話があってから1時間後のことだった。そして現場のH市内のマンションについたのはさらに30分後であった。最低限の挨拶を済ませ、2人は現場の部屋に入った。中では鑑識が数人、あちこちにマーキングをしたり写真を撮ったりしていた。八尾はその中の一人に声をかけた。八尾と同期に入った久々原秀治は、声を掛けられ、顔を上げると妙に丁寧な口調で現場の状況を説明した。
「仏さんとこの部屋の状況は?」
「被害者は榊野高校に通う伊藤誠です。腹部を数回刺された上に首を切断され持ち去られています。特に部屋は荒らされておらず、物盗りではなく怨恨による犯行でしょう。まあ、物盗りが首まで持っていく必要性が感じられませんが」
「目撃者や推定時刻、死因は?」
「目撃者は母親です。病院での勤務を終え帰宅し、息子さんに声を掛けようと部屋に入ったらこの有様だったとのことです。推定時刻は血の固まり具合からして15時頃から17時頃でしょう。死因はどう見ても複数回刺されたことによる失血死ですね」
「遺留品とかは?」
「携帯電話が開きっぱなしで落ちていました。誰かと電話している間に襲われたのでしょう。電話帳から交友関係を探れるので重要な捜査資料です」
「うむ。首からの血と腹からの血の固まり具合がわずかに違うようだが、これは何を意味しているのだろうか」
「そうですね。腹を刺して後で思い立って首を取りに来たと考えてしまうのですが、ちょっと考えにくいです。ましてや他人が取りに来たなんて訳は…」
「ああ…そうか。まっ捜査会議でじっくり調べよう。僕はその、伊藤君のお母様に話を訊いてこよう」
「分かりました。我々はもうしばらくしたら引き上げます」
八尾は誠の母親にいくつか質問をした。母親は何度も同じ質問をされていたようで、ややうんざりした表情をしながらも淡々と答えてくれた。
「凶器が見つかっていないんです。台所のものが無くなっていたりしませんか?」
「ええ、台所にまな板が置かれていました。包丁がいつもの場所から無くなっていたので、誠のために何か作ろうとしたところ突然殺そうと思ったのでしょう…いい子だったのに、残念です。首まで無いんですよね?許せません。刑事さん、早く犯人を見つけてください。それだけが私と誠のお願いです」
「分かりました。全力で犯人逮捕に取り組みます。おっと、誠君は恨みを持った人物によって命を奪われています。何か気がかりな事を見たことがありますか?」
「台所の三角コーナーにチキンやら野菜やら捨ててありました。多分折角作ったものを捨てられているのを見て誠を襲おうと思ったのでしょう。女性問題でしょうかね?」
「参考になりました。ありがとうございます。これで我々は一旦引き上げます。必ず、そして早く犯人を逮捕いたします」
八尾はそう言い、先に出て行った鑑識たちを慌てて追うように家を出た。

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