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BLOODY BODY


犯人は誰だ

八尾と前橋は屋上の現場の処理を他の刑事に任せ、職員室に戻った。成島が少し遅れて戻ってくると同時に、伊藤と西園寺について改めて質問した。
「これで肝心の人物が居なくなり、捜査は難航します。さて、そちらのクラスの生徒に話を聞きたいのですが…」
「はい、その気持ちは分かるのですが、生徒たちにはもう下校させています。何せああいう事件ですから」
「仕方ない。教室の場所だけ教えてくれ。適当な人を捕まえて話を聞きたいんだ」
「向こうの階段を登った先にありますが…ストレートに話を聞かないで下さい。死んだなんて言われてショックを受けたら困りますよ」
「それくらいは職業柄わきまえているので分かっています」
八尾と前橋は職員室を出て、教室前の廊下で生徒が出てくるのを一人一人見た。最後に教室を出て、鍵を閉めた男子生徒に声をかけた。
「君、ちょっと話を聞きたいんだ。名前は何だい?」
男子生徒は八尾の身長185センチの長身と低い声が醸し出す威圧感に一瞬たじろいだ。
「な、何ですか?お、俺事件起こしてないですよ…か、カンニングもしたことないです。そしてあなたは誰ですか?あと、俺は澤永です」
八尾は警察手帳を懐から出した。
「こういう者だ。君は何も悪さをしていないことは分かっている。ただ、君の周りの人について話を聞きたいだけだ」
「といいますと、伊藤と西園寺のことですか?死んだんですよね。惨い死に様らしいですね」
「そうだ。この事件は人間関係の問題で引き起こされたと見ているんだ」
「そうですね…なら話します。伊藤と西園寺は付き合っていましたよ。よく伊藤がデートの話をしていました」
「なるほど。しかし、そんな2人がどうしてああいう事件に巻き込まれたかを知るにはもう少し詳しく知りたい」
「すみません、勘違いしていました。付き合っているというよりは、伊藤の他の女子との交際を西園寺が手伝っていましたね…」
「うむ。それで、何か問題でも起きたのかな?」
「伊藤は西園寺の助けで無事に交際していましたが、西園寺がどういうわけか伊藤にやたらと接近してきていたようです。その上妊娠したとか訳分からんこと言って伊藤を困らせていたらしいです。それで伊藤はよく悩みを俺…僕に打ち明けていました。西園寺が鬱陶しいとも言っていました」
「ううん…弱ったな。難しいぞ。では、その伊藤が付き合っていた女子の名前を知っているかい?」
「ああ、何て名前でしたっけな?西園寺のように歴代の総理大臣と同じ苗字だったのですが、何せクラスが違うし伊藤の話はやや上の空で聞いていたもんですから」
「じゃあ小泉か?それとも森、小渕?」
「たしかそんなに近代の人ではありません。大正時代でしたかな。ああ、尾崎行雄の護憲運動で内閣を倒された人です。馬鹿なんで忘れてしまいましたよ」
「桂太郎だよ。つまり桂なんとかって奴だな?」
「そうです。まさしく桂です。桂言葉という名前ですよ。そうだそうだ…」
「分かった。ありがとう。引き止めて悪かったな」
「参考になりましたか?解決に役に立つか自信が無いです」
「これは重要だ。必ず解決してみせる」
「お願いします。これは伊藤の友達である俺の切実な願いでもあります」
「分かった。早い解決を約束する」
八尾は前橋に「あれだ。桂言葉の住所を聞くぞ」と小声で言い、前橋が頷くと同時に職員室へ駆け出した。それを澤永はやや呆然と眺めていた。

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