Short & present!
愚才行進曲 特盛☆
愚才行進曲 特盛☆
僕んちの隣には愚才がいる。名前はユウジ(仮)だ。仮名にしておかないと後で色々マズい。とにかくそれくらい危ないことをしているのが、この愚才だ。
他が羨むような才能を持っているくせに、それを自分本位以外の事には使わない。絶対。しかもその自分本位に使う才能のベクトルは、必ずバカな方向に向いている。
そのため僕は、ユウジを愚才と称しているのだ。
すさまじいほどの理系オタクの次元を数段超えたユウジは、何をどう間違ってこうなったのか、小・中・高と全部同じクラスで過ごした僕の幼馴染でもある。
僕はおそらく、世間一般では平均よりやや上、高校では平均より大分下(先生や親に頼まれて、無理にユウジと同じ高校を受験したからだ)なのだが、ユウジと常日頃一緒にいると、自分がすごくバカな奴だ、という考えと、僕ってすごく頭いい? という考えがよく浮かぶ。
要約。ユウジは天才であると同時に、超絶自己中心的な大馬鹿。つまり愚才なのだ。
あいつの前では何でも引き金になる。蚊に刺されて軽くキレて、蚊対策のスプレーを作った。半径2キロの生物が軽く発狂した。
数分で収まったが、あと三十秒長かったら、火事や事故の量が倍以上になっていたと本人は評している(ユウジはガスマスクをつけていた。あん畜生)。
そんなこんなでユウジは今日も、政府の来訪と警察の職務質問と研究施設へのお誘いを恐れつつ、のんきに自己中心的な研究をしている。
ちなみにあいつは自分の研究室も持っているし、倫理について学ぶのも嫌いだから、大学院などでの研究所行きを三つほど蹴っている。僕としてはさっさとどっかへ留学して、アメリカだかドイツだかの研究所でノーベル賞でも取っていれば、と思っている。
あるわけないけど。
「うぅ~~~……あ――――ッ! 畜生――――ッ!」
『ああああああああああぁぁぁぁぁ……』
「なんだよその『こいつがこんな風にイライラしてる時はロクな事がないよ……つか畜生って僕のお決まりパターンなセリフだったよな? イライラには牛乳って言うけど……飲んでるとこ見たことないよな……』って顔。んー、牛乳はアイスにならない限り、摂取したくないなぁ」
「摂取ってお前な……」
「それより聞いてくれよ、我が幼馴染!」
ポイント。ここで嫌って言える人は、世界中探してもいないと思う。言ったら小型爆弾が飛ぶし。
「ハイハイ、今度は何なんだ?」
大抵、この一秒後に色々後悔させられる。
「兄貴がタイムマシン開発して、未来に行っちまったんだ」
……………
「ユウジ、テレビの見過ぎだ」
「おれんちは不可能を可能にする、夢のような一家なのだよ、我が幼馴染」
「ドラ○もんじゃないんだぞ? タイムマシンはお前の言う夢の、また夢だ」
「嘘はつかない主義なんだ」
「お前に主義なんて、ちゃんとあったのか?」
「あるさ」
「すっげー似合わない」
「どれくらい?」
「うーん…『善処します』ばっかの政治家と、スミレの花持った五歳の女の子くらい」
「ああ、確かに色んな意味で。でもそれは関係ないんだ。とにかく、おれは嘘をつかない」
「いっそただのホラ吹きだったら、どんなに楽だろうね」
「残念ながらおれは自分の身の丈ならわかってる。おれの家族を除けば、世界中の科学者、技術者全員集めても、足先くらいにしか届かない天才さ」
ポイント2。すごく嫌だけど否定できない。
「どっちの兄さんが行ったんだ?」
「コトワ」
「で、マジでコトワさんが、未来に行ったと」
ユウジは陰鬱に頷いた。
関戸理(せきどコトワ)はユウジの兄だ。ユウジと違って妙な研究にベクトルを向けない、他人に良くないことには首を突っ込まない、マトモな人だ。だから仮名の必要はない。
ちなみに他の関戸家。カッコ内は専門だ。
父親の染色体(せいた)さん(遺伝学)
母親の蓮佳(はすか)さん(物理学)
長男のコトワさん(物理学・倫理)
長女と次女は双子の章文(ショウブ)さん(若手作家)命(ミコト)(生命学)さん
次男の刹那(セツナ)(数学)
三女の世蓮(セレン)(化学)
そして最後に、三男のユウジ(理数系全般)がいる。ショウブさんはコテッコテの文系だが、彼女以外は超絶的なマサチューセッツも真っ青な理系オタクだ。名前を見てわかると思う。ユウジの本名も理数絡みなのだけれど、名は体を表すって、毎回これを見て納得する。
「とにかく、マジで?」
「リアルに」
「それ、僕のセリフ……」
「あんなへらへらしている兄貴が、おれよりも先にタイムマシンで未来行きなんて……!」
「変って言うか、嫌な所でプライド高いよな、お前」
「やかましい、このヤカン」
「それは罵り言葉か!?」
「中身は空っぽで、軽くて、ピーピー煩い」
「………色々ダイレクト」
「よし、おれも行くぞ。おれ達は過去に!」
「あのさ、本当に行けるなら行ってみたいけどさ、ちゃんと戻ってこられるよな?」
「だから過去に行くんだろ?」
「は?」
「寝て、意識なくして、朝起きる。これも一応、未来に意識だけトリップしている。未来行きは楽だけどな」
「だけど?」
「帰れないだろ?」
………?
「要約すると、未来に行ったら、過去に帰れないと?」
「おー、いえす」
…………
「コトワさ――――――ん!?」
「あんなんほっとけ。おれたちも過去に行くぞ」
「ちょ、ここに、お前んちに呼ばれたのってそんな理由!? 一緒に過去に行くぜ、レッツゴー。そんなレベル!?」
「それ以外の何があるんだ? 古さん、そっちのタイムマシン持って来てー」
「古さんフル活用されてるし…!」
「さてさて、昨日おれが徹夜で作った、ぱんぱかぱーん、タイムマシンでーす」
「……どう見てもパイプ椅子」
「バーカバーカ。だからお前頭悪いって言われるんだよ」
「お前以外には滅多に言われない。大体、タイムマシンを一日徹夜しただけで作れるやつに頭悪いって言われてもさ……」
「このイスの底には時空を捻じ曲げる装置があります」
「聞いてないし」
「過去とおれたちが生きている現在なら、自由に行き来できるのだよ、我が幼馴染」
「過去に行って……アレ? じゃあ、未来に行って同じ理屈で帰れるんじゃないのか?(どういう理屈でタイムトリップするかどうかなんて知らないけど)」
「お前は今まで歩んできた道の地図を持っている。それを見れば、とりあえず今まで歩いた道を戻ることもできるし、同じように元の場所に戻ることもできる。それと似た事を瞬間的にやらかすのが、タイムトリップだ」
「はー?」
「未来はまだ歩いていないから、地図も何もない。お前は知らない所にいきなり放り出されて、さっきまでいた所にもどれるか?」
「まぁ、無理だね」
「未来は変わる。パラレルワールドって意味で、数種類あるうちのおれたちが行かない未来に行っちまったら、道に迷って戻れない。OK?」
「……OK?」
「疑問文で返されても困る。さぁ、過去ならどこでも行ける! おれは詳しくないからお前が決めろ」
「の○太君がドラ○もんに頼むくらいのノリで言えばいいのか?」
「おれは別に青いタヌキ型ロボットじゃないけどな。今回は古さんで実験したから、大丈夫だ」
「古さん!?」
「おお、ピンピンして帰って来て、おれに実験代金としてアイス二本要求してきたくらいだ」
安い実験代金だな、オイ。
「うーん……じゃあ、戦国時代とか?」
「おお、じゃあ1500年くらいでどうだ?」
「いいね、最高!」
日本史は得意じゃないけど、行けるなら行ってみたいじゃないか。こいつといると常識的な感覚がマヒするんだ。
「じゃ、これを着ろ」
「……ナニコレ?」
「見て理解しろ、その時代の服装でもある、木綿の服だ。せめて市民じゃないと自由に動けないからな」
「ふーん。もっと貴族階級とかさ――――」
「貴族だともっと動きにくい。家庭関係もその時代じゃわからないからな」
「意外と考えてるな」
「褒めても何も出ないぞ」
こいつにとっては褒め言葉らしい。
「さて、座れ」
「ん」
軽くギシギシ言う感覚。別に壊れてもいないし、僕が重いわけでもないのに、このパイプの音。やっぱりただのパイプ椅子にしか思えない。
「よいしょっと」
「ちょ、なんで僕の上に座るわけ!?」
「パイプ椅子は固いから苦手だ。お前もう少し肉付けろ。太ももなのに固い」
「なんでパイプ椅子にしたんだよ!? ソファとか絨毯でもよかっただろ!?」
「手近にあったからな」
手近にあったからなんて理由で、僕はこいつに膝の上を貸さなきゃいけないのか……。ああくそぅ。
「ちなみに操作はリモコンひとつでOKだ」
「無駄なところ便利だな」
「スイッチオン」
「ちょ、3、2、1、0とかお決まりパターン言えよ!」
僕の叫びも空しく、僕とユウジは4次元の彼方へ吸い込まれていった。パイプ椅子に乗ったまま―――――
「いだっ!」
「よし、予想通りだ。地面に落ちる衝撃はお前によって和らぐ。計算通りだ。だけどベクトルの大きさが一致しなかったな。次からは検討しておく」
「被るのは結局僕だろうがッ!」
僕はユウジに噛みつき、こいつが僕のひざから降りないうちに立ちあがった地面に落とした。
「オイ、バランス崩すだろ」
「もう頭のバランスが崩れてるからいいんだよ………で、ここはどこ? 日本?」
「おお、たしかに戦国時代。1500年だぞ」
「あのさ、僕はここがどこだか知りたいんだ。見ろよ、このストリート! 洋風にも程があるよ! おまけにこの臭い……日本じゃ考えられない」
「うん、この垂れ流し状態。たしかに1500年だけどヨーロッパみたいだな」
「中世ヨーロッパにこんな恰好でどうしろと!?」
「落ち着け、我が幼馴染よ」
「これが落ち着いていられるか!? 今回はいつもよりも申し分ないんだ。TPOの内、TとOはまぁまぁ満たしていると思う。でもな、なんでこんな時に限ってPを! プレイスを確認してないんだお前は!?」
「3分の2を満たしていないよりはマシだ」
「どうやればそんな風に物事をいい方いい方に解釈できるかどうか知りたいよ……切実に」
「結局は根底にあるものがプラス思考か、マイナス思考か、という違いが一番大きいとおれは思うのだが」
「冷静な答えは、今は期待していないんだ。わかるか?」
「お前の言う事はつくづくわからないんだ」
「そうこうしている内に見ろよこの人だかり………」
「おお、素晴らしい具合に集まってきたな」
「素晴らしいじゃないよ。この時代にパイプ椅子があると思うか? この辺りの地域で着物の人が暮らしているところなんてあると思うか?」
「あるわけないだろ、この阿呆めが」
「それはお前に一番言いたいセリフだよ、こん畜生」
「おお、なにか相談しているが言葉がわからないな」
「翻訳機でも持ってんだろ?」
「なんでわかるんだ?」
「マジで持ってるとはちょっと思わなかったかなー……」
「よしよし、お前に免じて……てれててってってーん☆『言葉がわかっちゃうぞ♪』君だ!」
「今回は星じゃなくて音符が付いてんだな。どうでもいいけど」
「さてさて、我が幼馴染のコメントは華麗にスルーして、スイッチオン」
「今までのソレは計算だったのか……?」
「ふむふむなになに……?『ここらじゃ見ない怪しい奴らやないか。王さんに言っとこかー?』」
「何故にエセ関西弁!?」
「『いやいや、そないなことしても、王さんの杞憂増やすだけや。服とか見てんも、別に貴族ってわけでもなか』」
「土佐弁混じったよ!?」
「『それに言葉も通じんようやなぁ……やっぱ、ワイらでなんとかしておきましょか?』」
「ユウジ、僕らの言葉は通じないのか?」
「内緒話まで伝わりそうで怖いからな。とりあえず一方通行なのだが、ご感想は?」
「もうどこからツッコめばいいのかわからないけど、とりあえずサイテーだ! 状況といいお前の頭といい……!」
「我が幼馴染よ、おれのIQは最高レベルだ」
「どうでもいいんだよ! IQ最高レベルの天才は、この不気味な状況を打開できるとでも言うか?」
「小型無反動砲が巾着の中にある」
「未来になんらかの後遺症が出来たらどうするつもりだ!? 知ってるぞ! 過去で人を殺したら、自分の手が薄くなってきて、最終的にはもうすぐ消えちゃう。みたいなことになってる映画!」
「それはやってみなければわからないだろう?」
「殺人は殺人許可証を持ってからやれ! 持っても無暗にバズーカは使うもんじゃない!」
「そのバカっぽい言い方はやめて、ちゃんと無反動砲と言ってほしいのだけど」
「大差ないどころか同じものだっつの、この愚才!」
「『おいおい、なんかモメとるでー』」
「『せやなぁ、もしかしてワイらをぶっ倒そうとかそういう会議でもしてるんかもしれん』」
「ピンポイントで正解だよ!? どうすんだよ!?」
やるせなさすぎる。
「『まぁ、あの変な物と一緒に王さんに持ってこか?』」
「『いやぁ、なんか危ないモンやったらどうするんや?』」
「危ないのはユウジ自身だけですから……!」
「『そうだ、フランクに言って、新しい絞首台の実験台になってもらえば、ええんとちゃう?』」
「ちょ、待って」
「『ああ、それはええなぁ!』」
「待って、僕はまだ死ぬのには早すぎると思うんですけど!?」
まだ17歳の誕生日すら迎えてない。二週間後が誕生日の僕に、なんですかこの酷い仕打ち!
「ユウジ……僕、まだ死にたくないんだけど……!」
「奇遇だな、おれもだ」
流石のユウジもこの状態の悪さを感じたらしく、ようやくパイプ椅子を畳んで走る体制を整えた。クラスで一番足が遅いから、こいつは期待できないけど。
「こんな道路に排泄物垂れ流しの国では死にたくない」
「そっちか」
「死については興味があるんだ。死後の世界というのを研究して、生き帰ってから正確にレポートする」
「死んだらそれっきりだっつの!」
「おれに出来ないように思えるか? ん?」
「………」
ヤバい。出来そうで怖い。
「と、とにかく僕はそんな芸当持ってないし、お前もここで死にたくないんだったら……ど、どうにか考えろよ……」
「脱出案か?」
「そうそう」
「今パターンを43ほど考えてみた」
「ユウジ様!」
「全滅した」
「ユウジィイイイイ!」
「人類はいつか……滅びるものさ」
「それだけはお前に悟られたくない」
僕はきっぱりと言い捨て、周りをぐるりと囲む市民や農民をにらみつけた。軽く50人。まずい。
「『それっ、かかれやー!』」
「『『お――――ッ!』』」
「ギャ――――――ッ!」
僕が悲鳴をあげてから数秒後経っても、人に襲われるという感覚は感じなかった。それどころか、肩にどこかで味わったあたたかさが広がる。僕は思わず前方を見上げ、唖然とした。
「コトワ……さん?」
「やぁ」
ユウジとどこか似た所のある顔で、二十代半ばの青年は笑う。あ、隣でユウジがものっすごい顔しているのもわかった。
「過去に戻る時にエネルギー出力見てたら、他の時代にも未知のエネルギーが出ていてびっくりしたよ。案の定、来てみたら君らだったけどね」
「余計なことすんな、クソ兄貴」
「まぁまぁ、俺がいなかったら絞首台行きだったかもよ?」
「本当にありがとうございます……!」
感謝してもし足りないというのは、このような状態だと、僕は思う。コトワさんはふわふわとした笑顔をたたえたまま、農民や市民の間に入って僕らを守ったシールドを支えた。
『出力ゲージ、800』
「撃破(ショット)」
ああ、この人もアニメや漫画の見過ぎかもしれない。バトル漫画のアクションシーン顔負けの勢いで、シールドに触れていた人々はみんな8メートルほど吹っ飛んでしまった。僕が目を見開いて唖然としている様子と、コトワさんの笑顔を、ユウジはイライラと傍観していた。
「さてさて、軽く吹っ飛ばしただけさ。今のうちに帰ろう」
「はい!」
「……」
コトワさんのシールドの陰から出てきた絨毯は、某ネズミの国のアニメのひとつに出てくるように、まるで生きているみたいに僕らの足元に来る。
「オートナビゲーション付きだよ」
「ナビがいるなんて、自分が作ったもの理解していない証拠だろ?」
「俺たちの幼馴染が、こうして乗るんだ。最悪を想定しなきゃね」
流石だよ、コトワさん。ユウジとは大違いだ!
鍬や鎌を持って僕達に向かってきたその時代の人々には何も言えずに、僕とユウジとコトワさんは、時空の彼方に消えて行った。流石ユウジの兄貴、コトワさん。間髪入れずにスイッチを入れる姿は、ついさっき見たばっかりだったのに。
ドラ○もんではタイムマシンで四次元を進む時、何故かチューブの中のような所を通っていて、しかもその壁は青くて、黄色と赤の時計が描かれていた極彩色の世界だ。
だけど、僕らは絨毯に乗ったまま、保護シールドの発光くらいしか見るものがない。歴史がすぐ真下で展開されるのを見られるかと思ったけど、ちょっと残念だった。
「ふむ、ユウジのタイムマシンは保護シールドも付けてないのか」
「なんです、その保護シールドって?」
「時空旅行をする時に、タイムマシンから振り落とされたり、エネルギーはを外部から与えられないようにするためのシールドだ。これがないと、四次元に落とされて永遠に彷徨う可能性もないではない」
「オイコラ、ユウジ。そんな話、僕は聞いてない」
「だって面倒だったし」
「お前ただ単に早く行きたかっただけなんだろ!?」
「正解だ!」
「いっそ清々しいくらいに言い切れば、なんでも済むとか思うのは大違いだ!」
「まぁまぁ、とりあえず無事だったんだ。次に気をつければいいさ」
「次もクソもありませんよ! 僕は今回ばかりは頭に来てるんですから!」
今回ばかりは僕も怒ってるんだ。こいつがもう何をしようと、僕には関係ない! 家が隣とか、先生たちに頼まれても、そんなのはもう関係ない。僕には僕の人生があるのに、こいつに滅茶苦茶にされてたまるもんか。
だがそんな僕の様子を見て、コトワさんが苦笑する。
「いやー、俺は十年後をちょっと見て来たんだけどさー」
「へ?」
「おお、そういえばどうだった?」
「待ってください。この文脈でそのセリフって、すごく嫌な予感がするんですけど!? コトワさん、僕が望んでいること言えますか!? 僕はもうユウジの僕を胃炎にするような実験や研究は御免なんですけど――――」
「十年後も同じようなこと言ってたけどさ、ユウジが世界最小のナパーム弾の装甲実験を止めるので、それどころじゃなかったかなぁ」
僕は絶句した。
ナパーム弾ってナニ?
装甲実験って、他の実験もあるってコト?
それどころじゃないって―――――
「嫌だ―――――ッ!」
「流石に未来はどうすれば変わるなんてわからないからなぁ」
「え、ってことは、僕はとりあえず、少なくとも向こう十年はユウジのブレーキ続けてるってことですか!?」
「君の愚痴によると、ユウジの研究や実験成果の自慢によって、まだ結婚出来ていないみたいだな。せめて高校時代、彼女は欲しかったんだ! とかなんとか言ってたよ」
「僕の青春返せ――――ッ!」
「嫌だ♪」
ニッコリとダークスマイルを浮かべ、ユウジは爬虫類のような目で僕を見る。
「ということは、おれの素晴らしく使い勝手のいい実験台は、とりあえず向こう十年は使えるってことだな」
「じょ、冗談じゃない! 大体、未来は変わるとかなんとか言ってたのはお前だろ!? そんな未来、絶対嫌だからな! なんとかして違う未来を作ってやる」
「諦めろ、我が幼馴染」
「出来ないわけじゃないだろ!?」
「よーく聞け。おれの解説を無視して、兄貴は帰ってきた。つまり、地図やコンパスはかなり明白な道を持っているってハナシだ」
「………ってことは?」
「結構確定しちゃってる未来って事だ☆」
「…………諦めない……諦めないぞ、僕は!」
半泣きになっていても、見逃してほしい。
「それにしても、クソ兄貴が過去にまで来るなんてな。計画台無しじゃねぇか」
「うーん、エネルギーの出力抑えれば、目的の時代につくまでちょっと時間はかかるけど、なんとか過去にも行けるもんだよ。まぁ、限度はあるけど。1000年くらい前になると、多分俺や母さんにだって無理だと思う」
「ほぅ?」
「未来行きだって同じさ。30年以降はかなりおぼつかないしね。たくさんある地図をコンプリートすることはできないし、これも確立に頼るしかないんだよね」
「ほぅ?」
ヤバい。ユウジの目が、コトワさんの話を聞いてキラキラして来る。これは色々とまずいことが起こる前兆だ………! せめてこれ以上僕を危険な目に陥らせないでくれ!
ああでも実験ことわったら、僕の人生は家族もろとも裏の道まっしぐらっていうのはユウジに告げられた。ああいうのを脅しって言うんだよ。とにかく……下手な無茶はしないでくれ……!
――――っていうか、兄弟げんかというか一方的ないがみ合いはよそでやってくれ! 僕は切に願った。
しかし――――――
「よし、我が幼馴染よ! 今回は兄貴が行けなかった1000年前と30年後に行って、あいつの鼻を明かしてやるぞ!」
「……カンベンシテクダサイ……」
―――――僕を片言にさせる受難は今日も続く。
「僕」にはきっと、ユウジが一生つき纏ってるさw
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