Short & present!
愚才行進曲 そのよぉぉおおおん!
愚才行進曲 そのよぉぉおおおん!
愚かな、つまりバカバカしく、社会の役に立たなくて、自分本位すぎる、才能の持ち主。僕はピンポイントで当てはまる奴を僕は知っている。残念ながら僕の幼馴染で、しかも隣人だ。名前はユウジ(仮名)だ。本名を明かすと色んなところが煩いとユウジが煩い。
僕の名前? そんなの重要じゃない。ユウジだって年に一度呼ぶか呼ばないか、という位だ。時々忘れられてるんじゃないかと思う。いつもいつも、我が幼馴染よ! だからね。
とにかくユウジの愚才っぷりは半端ない。あいつの貯金は特許と数学の賞金問題の額に比例する。某有名な台所用品がユウジの発明だと知って、僕は目眩がした。
あいつの前では何でも、どんな些細な事でも核ミサイルのスイッチ並みか、それ以上に恐ろしい引き金になりかねない。だってあいつは――――関戸ユウジ(仮)――――は愚才だから。
大事な事だから二回言おうか、くどいけど。
愚かな才能の持ち主で、愚才。本当にいつ見ても清々しいくらいにぴったりな当て字だ。僕は愚才と書いてユウジと読んでもいいと常々思っている。
昨日だってそうだ。
新幹線のシートをドライバーで改造する。以前僕が止める前に創ってしまった人体クローンの失敗作である宇宙人モドキ「古さん」を、助手としてとか言いながら荷物に収めてある。突然新幹線の座席から立ってどっかに行ったと思ったら、新幹線が一時間以上早く京都に着く。
本当にあいつはおれと同い年なのか? 残念ながら答えはイェス。ユウジの方が五ヶ月早いが、長年一緒にいると嫌でもわかるのだ。
さて、今回の件に置いて、僕は先生方にユウジに対するマニュアル作成を頼まれてしまった。例えば
あいつの危険な発言 → 真正面から否定すると爆弾飛来
有毒物になりかねないものは与えない
あのマニュアルならぬ、しおりは学会に発表出来るくらいの出来ではあると思う。ある意味では。
長い長い前述へのお目通しありがとう。ただ今僕は―――――ユウジと同じ班で、絶賛修学旅行中だ。
「我が幼馴染よ」
「……………………………ハイ」
「なんだその『あああぁぁ……こんな風に改まって呼ばれるとアレだよ。絶対なんか良くない事企んでるよ……いい加減僕を巻き込むのを止めるか理(コトワ)さんみたいに社会のためになることしろよ本当に……』って顔。大体おれにあのクソ兄貴を見習えと? セミの土の中の七年間を見習う方がマシだ」
「修学旅行にまで『心が読めちゃうぞ☆』君を持ってくるお前の神経を疑いたい」
「古さんの時から文句言ってばっかりだな、お前」
「ちゃんと修学旅行のしおり読めよ! 持ち物書いてあったよな!?」
「2ページから先は読んでない」
「……頭痛い」
「おれ特製のバフ○リン飲むか?」
「お前特製って時点でもう何か違う」
「あのな、ちゃんと修学旅行の目的は読んだ。1、旅行先の文化遺産に触れる。2、修学旅行を通して、高校生活の思い出を作る。3、団体行動により、社会的な規律を身に着ける」
「おお、ユウジ、ちゃんと1ページ目を……」
「守る気はない!」
「言いきるなァアア!」
「ともかく、我が幼馴染よ。他の班員とおれ達の6m77cm以上の距離は何だ?」
「……適当?」
「おれの目分量に適当なんかあるか。測ってみるか?」
「メジャーを出すな、メジャーを……あのな、その6m77cmは、お前と他の班員との心の距離だからな?」
「ふむ、埋めた方がいいのか?」
「ああ埋めた方が断然いいとも……!」
「よしよし、お前以外は名前すら覚えていないんだがどうすればいい?」
「………僕はわかるな?」
「ああ」
「よし、あっちの男のメガネが小金井、ショートカットの女子が白木、女子のメガネが沢崎」
「見事に名簿順だな。2班だっけ?」
「僕はハ行なのにな。お前がいるからな……!」
「ふむふむ、よしよし。どうやって打ち解けようか?」
「……まずは人の話を聞いて、プライドは少し捨てて、ちゃんと気持ちとかを伝えればいいんじゃないか?」
「無理そうだからやめとく」
「止めるな、この愚才っ。ちょっと小金井!」
「え、あ!?」
ごめんよ小金井!
「さ、て、と、ユウジ、小金井と話してみたまえ…!」
「……はぁ……」
「ため息をつきたいのは僕だ…」
「まぁいい、我が幼馴染に免じて……っと、小金か」
「小金井デス」
『早々とこいつは……』
「人の話を聞く…か……よし、テストの点数でも言ってみろ!」
「はぁ…!?」
『……馬鹿がいる…人の気持ちを考えない馬鹿が……!」
「なんだ? 言えないほど悪いのか? 満点取ってるんだろ、おれの馬鹿幼馴染ほどじゃない」
「お前が破格すぎんだよ…」
「……えっと…満点は…ないけど」
「はぁ? 馬鹿だな。あんなテスト、5分で終わって満点だろ? この前テスト中にフェルマーの最終定理の新しい解を見つけたぞ」
「…ふぇ…?」
脚注 フェルマーの最終定理とは数学史上最大の難問だったものである。近くの数学の先生に聞いてみよう! 数学の先生だ、間違ってもユウジに聞かないでくれ……!
「話にもならないなお前。次だ、白井だっけか?」
「白木…だよ」
「なんでもいい。プライドを少し捨てる………うー…こんな事を言うとおれのプライドの危機だが仕方がない。ちょっと失敗した話をしてやろうか。この前人体クローンを作ったらな、材料が古くて「スト――――――――――――――ップ!!!」
危ない…僕が話に割り込まなかったら、ユウジは古さんの話をするところだった……人体クローンは法律に触れてるんだ! 迂闊に話したらどうなるか……!
「ダメなのか?」
「ダメに決まってんだろうが…!」
「ふむ、面倒だな…で、気持ちを伝えるだな? よし、沢田、手伝え!」
「……沢崎よ…手伝えってなによ。それが人に物頼む言い方!?」
「沢崎さん! ダメだ! ユウジにその程度の事で文句言っちゃいけない!」
「…………お前、腹立たしい奴だな」
「は?」
「馬鹿で頭に何も詰まってないくせにおれに立て付くんじゃない。そんな調子だから昨日母親と喧嘩して口で言い負かされるんだ。成績が学校で下から数えて20位以内なら文句言えないだろうな、よく生きてて恥ずかしくない。おれなら高校生という時点で大学首席で抜けられるレベルの頭を持っていなければ、お前くらいの頭なら羞恥で死ねるぞ。お前、自分がゴキブリ以下だとわかっているのか? ゴキブリは生命力に特化している。お前は何も特化しているところがないんだぞ。セミの土の下の7年の方はお前が今まで生きてきたよりもずっと意味のあるもの、という事になるな。どうだ? 自分をしっかり省みることができたか? これが一般論だぞ、カス」
「……沢崎さん、バカはユウジの方だから泣かなくてもいいよ」
「ぐすっ…うう、うっさい!」
「本当に、誰に対してもこんな感じだから!」
「どうした、我が幼馴染。ちゃんと気持ちを伝えてみたぞ! 素晴らしかったろ!」
「最低だ、この愚才。大体、僕はともかく一般の方々に『心が読めちゃうぞ☆』君を使ってるんじゃない! そしてセミに関してはお前のマイブームなのか!?」
「最近、セミの行動原理について学会に発表したからな」
「……楽しいのか……?」
「ちっ、人がいなくなったじゃないか」
「無視するし。はぁ……お前、もう喋るな」
「断る」
「断るな! 僕の話を聞けよ、マジで!」
「嫌だ」
プッツン
たまには僕だって怒っていいはずだ。
「そうかそうか、ユウジは誰とも仲良くするつもりはない、そういうつもりなんだな」
「なんだその手に持っているスイッチは?」
「コトワさんから借りてきた、お前のラボ(京都支部)に仕掛けた爆弾の爆破スイッチだ!」
「なにぃいいいい!? あ、あのクソ兄貴!」
久々にユウジが動揺する。ふはは、いい気味だ!
「か、返せ馬鹿野郎!」
「馬鹿野郎はこっちのセリフだ! 一方的に自分の価値観その他を押しつけてないで、折角友達になってくれるかもしれないって言う可能性ポイポイ捨てないで、ちゃんと人間として他人に向き合え、この愚才! それがまさに修学旅行だろうが!」
「……精神論を語られると…」
「そういえば眠くなるんだったな、こん畜生!」
いつも言われているんだった。
「と、に、か、く! これは修学旅行が終わるまで絶対に渡さない! 真面目に静かに修学旅行してなきゃ―――どがーん」
「………………………………………………………………ちっ」
長い間を経て、ユウジが納得した瞬間、僕は勝った! と思った。
「仕方がない、京都支部の研究室にはルテチウムやプルトニウム、みたいな希少金属も大量に保管してあるからな……ああ、原子力発電システムもあるんだった…」
『爆破させることにならないで良かった!』
「まぁ、楽しめることも少ないだろうが、研究室を壊されないようにエンジョイしてやろう」
「お前のエンジョイに他人のエンジョイも加えろ」
「それは無理ってハナシだぜ」
「研究室爆破」
「それは遠慮ってハナシだぜ」
「この矛盾を解消したいなら、前者をなんとかしろ!」
「ふむふむ……わかった。あと何日もないんだ。さっきの小金と白井と沢田を呼んできたまえ」
「小金井に白木に沢崎だから……まったく…」
なんとか他人に目を向けるようになってくれた。とりあえず良かった――――ここまでは。しかし、今回の話にはオチが二つある。それは―――――どちらも僕とってはいいものではない。
「あのさ…あの関戸をあんな風に扱うなんて、やっぱすげぇな!」
「はぁ!?」
「本当! やっぱり関戸君にはあんたが一番ね!」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 僕だって好きでやってるわけじゃないんだけど!?」
幼馴染で、家が隣という要因なのに!
今までユウジの及ぼす影響の凄惨さを肌で感じた事の無かったクラスメイトにとって、それを御する僕のインパクトもかなりのものだったらしい。
「やっぱ、関戸にはお前だよな!」
なんでセットになるんだ! あんなんと!
そしてもうひとつは――――――
「フハハハハハ! 古さんに調べさせた結果! 京都支部のラボに爆発物はなかった! ハッタリじゃないか、我が幼馴染よ……恨みはちゃんと晴らしてやるゾ?」
「ギャ――――ッ! バレた―――――ッ!」
「観念してしまえ! あっはっはっは!」
――――僕を苦しませる受難は、今日も続く……
時々 僕>ユウジ
いつも ユウジ>越えられない壁>僕
その差をなんとか頑張っているみたいです。
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プロフィール

- 奏 Euph
- 割となんでもやる、活動的な魚類。
狐狸・二ノ宮翼・塵芥・ラピなど、名前がたくさんあります。
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