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Short & present!


愚才行進曲 そのGO!



 愚才行進曲  そのGO!




 僕の家の隣には愚才が住んでいる。社会のために役立たない馬鹿馬鹿しい事を、これまた馬鹿馬鹿しい程の天才的クオリティでやりこなす。僕はそんなあいつを、嫌な意味の敬意を払って愚才と呼んでいる。
 『愚』かな、『才』能の持ち主で、『愚才』……ぴったりだ。


 彼の名前は関戸ユウジ(仮)だ。ユウジというのは仮名である。僕の数少ない友人と、幼馴染と、お隣さんという肩書もあるが、僕としては単なる迷惑な存在でしかない気がする、というのが最近の僕の評価だ。
 あいつの言う事には耳を貸さないと、小型爆弾、もしくはドライバーが飛んでくる。共通点はどちらも避けることができるようになってしまった事だ。以前スパナを肩にあてられて以来、首がばきばき云うようになってしまった……それ以来、僕はユウジの言う事にはちゃんと耳を貸している。


 なんでそんなユウジと僕がこんなにもガッチリとワイヤーロープのような縁で結ばれているかというと、それは周囲の環境も要因している。
 僕は本人非公認だが、どうも周りから言わせると神経が図太いという部類に入るらしく、ユウジのやることなす事にしっかりとツッコミを入れられる。


 中性子爆弾を作るユウジに――――喝。
 無反動砲を撃ったユウジに――――喝。
 宇宙人モドキを作りやがる――――脱力。


 そんなに神経が図太く、ユウジの暴走を止められるという事もあり、僕は十年近くに渡ってこの愚才と同じクラスだ。僕が陰謀を感じるのも無理ないだろ?
そんな日々が毎日続く中で、僕は今日、例年行事に体を緊張させていた。一年で一番と言ってもいいほど緊張するこの日。
 十月二十五日、いたって普通の日曜日だ。全国民としては普通の、普通の休みの日。
 だがこの日は、一年で最も僕が恐れている日だ。これを言うと誰にでも頭上に『?』このマークを浮かべられてしまう。
 十月二十五日、僕の誕生日だ。




「Happy birthday to you Happy birthday to you Happy birthday dear…」
「ちょっと待って」
「なんだその『なんでここまでこの歌を原作に忠実と言うか……とにかく素晴らしく英語ちっくに歌うんだよ……。ここまで綺麗に歌ってくる奴は初めてだぞ、オイ。大体こういう歌は地下研究室で歌うものじゃなくて……また読まれた…』とかいうその、ちょっと待って、は。うん、英語は日頃から綺麗に発音した方がいいと思うんだ、おれは」
「もうこの『心が読めちゃうぞ☆』君を使うのはお決まりパターンになってきてるな、オイ」
「これをこういう時以外いつ使うんだ?」
「使わないから壊してしまえ。大体、僕はこれはいつか壊したと思うぞ。ドロップキックで」
「設計図は残っていたから、塗装を軽量チタンにして作り直したぞ。もうお前のドロップキックなんかでダメになったりはしない」
「…………」
「さて、我が幼馴染の虚しい無言の雄たけびは置いといて、さぁ古さん! 誕生日ケーキを切り分けたまえ!」
「毎年毎年恒例行事になってるけどさ、なんで僕の誕生日ってユウジんちで祝うんだよ……」
「蓮華(はすか)母さんが『いつもお隣さんの子にお世話になってるんだから、お誕生日くらいちゃんと祝いなさいよ』とかとか煩いんだよ」
「………あー…そう」

 忘れた方のための関戸家
 父、染色体(せいた)さん   母、蓮華(はすか)さん
 長男、理(ことわ)さん   長女、章文(しょうぶ)さん
 次女、命(みこと)さん   次男、刹那(せつな)
 三女、世蓮(せれん)   三男、ユウジ(仮)
 ユウジが作った人体クローン失敗作 宇宙人モドキの古さん

「そっかー…蓮華おばさんなら仕方な―――――」



 ドシュッ

 唐突に僕のすぐそばの壁から、金属の棘が壁を突き破って出てきた。僕すれすれのところに来たという恐怖。

「今回はおれじゃないぞ」
「………………………………蓮華お母様の言う事なら仕方ないよな、うん」

 僕がそう言うと、ようやく棘は引っ込んで行った。

「さぁ、古さんがショートケーキを持って来たぞ! 何等分にしようか?」
「ホールケーキかよ!?」
「ショートが付くんだ。ホールも何も関係ない」
「関係あるよ、なんだよ理系人間らしくないその文系ジョーク」
「お前への誕生日プレゼントとして、本を数冊読んでみたんだ。常日頃、お前から言われているからな」
「……ぶっちゃけ、僕へのプレゼントになってるの? 精神的に得してるのはおそらくユウジ、お前だ」
「そうかもしれないな。よし、3・2・1の割合で、おれ、古さん、我が幼馴染だ」
「僕を祝う気があるのか、お前ら」
「なんだ、ショートケーキは好きか?」
「嫌いじゃないし、何よりも一応僕の誕生日だぞ!?」
「まったく、注文の多い奴だ。じゃあ、6・1・1で、お前、おれ、古さんでどうだ?」
「ゴメンナサイ、そんなに食べられない事を忘れてた」
「ほらみろ」
「お前といると、自分が損をしているという感覚が浮き彫りになってくるんだよ……!」
「よし、古さん、タッパーを用意して来るんだ。抗菌仕様のやつだぞ」
「最初っからそうしろよ……」
「さぁ、ロウソクもつけた。吹き消すのが常等だろ」
「ごめん、僕の目の錯覚かもしれないけど、ロウソクの数が多くない?」
「そこはスルーで」
「先にあるのが小型爆弾に見える」
「そこもスルーで」
「できるかぁああああ!!」
「小型爆弾だから仕方ないだろう。はっはっは、お前のせいじゃないさ」
「まるっきりお前のせいだろうが! つけるな! 古さん、火はつけなくていい!」
「安心しろ、ちゃんとお前が吹き消せばいいだけの話だ」
「自分の誕生日ケーキのロウソクの火を消すのに、こんなに緊張したくないよ!」
「まぁ、細かい事を気にしていると禿げるぞ。おれからのプレゼントがカツラになっていいのか?」
「謹んで遠慮してやろうじゃないか」
「大体、これくらいにしないと面白くないじゃんか! これでも精一杯妥協したんだぞ!? 最初は中性子爆弾の熱性スイッチにしておこうかと思ったほどだ」
「僕の誕生日をめちゃくちゃにしたくてたまらないらしいな」
「…………………まさか☆」
「ごめん、すっごくウザい!」
「幼馴染に、それも誕生日を祝う幼馴染に対して、ウザいとは御挨拶じゃないか、まったく」
「まったく、はこっちのセリフだ」
「まぁいい、おれも早く食べたいから切り分けてくれ」
「散々引っ張っておいてそれかぁ!?」
「煩い。巣鴨の白山通りにあるフレンチパウンドハウスで特注したショートケーキだぞ。お前がここにくるのにあと数分でも遅れたら、古さんと食っていた所だ」
「………コメントに困るぞ」
「ネットで調べて古さんに買わせてきた」
「古さん表に出ちゃったよ!?」
「おれが行くのは面倒だったからな。お前にプレゼントを作っていたからな」

 嬉しいというのと、素晴らしく嫌な予感がするのはどういうミスマッチなのだろう……?

「さぁ、古さんが切り分けている間にプレゼントだ」
「……わー、わー」
「ふむ、古典的すぎる棒読み口調だな。くっくっくっく、そんな事を言っていていいのか?」
「だってお前からのプレゼントなんて、ロクなものがないだろ」
「うん?」
「去年は生物反応性特殊照準付き実弾ライフル、一昨年は青と緑のモルモット、その前は危険生物取扱い施設一部屋」
「うーん、近年に来るにしたがってチープになってるな。景気が悪い証拠だ」

 モルモットは僕の机の上で生活しているが、それ以外は物置にしまっている。施設はユウジの地下研究施設の一室だから、適当な部屋になっている。

「そ・こ・で! 今年はお前に対してプレゼントをいくつか用意してみたぞ! さぁ、どれでも選んでみろ!」
「………アリかぁ…?」
「アリだ」
「お前の常識はずれした思考回路が、ここまで行ってるとは思いもしなかったよ」
「褒めてないだろ」
「もちろん」

 きっぱりとユウジに告げると、僕はユウジの後ろに出来た見た目ガラクタの山に手を突っ込む。落ち着け、僕。ツッコミを入れてはいけない……!

「…………これナニ?」
「レーザー光線発射装置」
「……これは?」
「クローンの素」
「…これは?」
「プルトニウム」
「お前はさ、僕がこれらで喜ぶと思うのか?」
「染色体父さんに聞いてみたんだ。自分が喜ぶものをあげれば、きっと相手も喜んでくれると言っていた」
「ある部分じゃ間違っちゃいないかもしれない。だがな、お前僕から宮沢賢治の本を送られても喜ばないだろ」
「当たり前だろ」
「レベルは格段に違うけど、次元は同じだ!」
「本当に我儘な奴だな」
「お前にだけは言われたくないセリフベスト3だ!」
「ちなみに他は?」
「一位、愚才。三位、変人」
「愚才?」
「お前の辞書に書き加えろ。じゃないと今度からハリセンを常備するようになってやる!」
「………ハリセンでいいのか?」
「え?」
「誕生日プレゼント」

 眉をひそめながら、ユウジは適当に置いておいた設計図か何かで、ホチキスを使いつつ丈夫そうなハリセンを作り上げた。ちゃんと折り上げてあり、綺麗な棘まで飛び出て―――――

「棘ぇ!?」
「釘を使って作ってみたぞ?」
「お前は折り紙も出来ないのか!? 大体、これはお前に使われるものなんだぞ!?」
「ピコハンで応戦してやる」
「お前が言うと冗談に聞こえないマジックか」
「いらないのか、ハリセン。じゃ、何か違うので」
「ハリセンガイイデス」
「なんなんだ毎回その棒読み口調は」
「ハリセンがいいです! 素晴らしく! いや~、こんなハリセンが欲しかったんだよ、うん。素晴らしいフォルムじゃないか、あっはっは」
「そうだろう、そうだろう。こんな深い造詣は、きっとおれにしか出来ないな!」
「おー、じゃあプレゼントの事は忘却して」
「忘却という単語に色んな意味を含ませていないか?」
「……なんにも! まぁとりあえずケーキを食べようか! 古さん、小型爆弾は除去して切ってくれ。2・1・1で、古さん、僕、ユウジだ」


 僕は家に帰って、まっさきにハリセンから飛び出ている棘の除去作業を始めた。あいつが二分で手作りしたハリセンのくせに、棘の除去作業が二時間かかるというのがどうなのか不思議に思ったが。
 とにかく、棘を除去した今! これは普通のハリセンだ。ハリセンとしてあいつにツッコミを入れるために使ってやろう。周りのあいつへの親近感も増えるかもしれない――――わかってる、後半は僕の幻想だ。希望を持ってもいいじゃないか!
 僕はハリセンをカバンの中に入れる。一応ギリギリ入る大きさだ。あいつは自分の送った物を、少なくとも一回は使わないと機嫌が悪いからな。ちなみに去年貰ったライフルで、僕はハエを倒してみた。
 だが、今年はハリセンだ! なんて平和的なんだ! ハリセン程度で済めば、僕とユウジの生活ももっと平和さ!
ところが――――――




「さーて、今日の校内全校ワックスのため、特殊酸を持って来たんだが」

 このタイミングだ! 僕は素早くハリセンを取り出す。

「このバカ…………?」
「フッフッフ…言ったろ、ピコハンで応戦すると」

 甘かった。ハリセン程度が平和だなんて、ナンセンスだったのを忘れていた。ユウジの手には手元に妙なスイッチが付いた金属製のハンマーが握られていた。

「どこがピコハンだ――――――――――ッ!?」
「ちゃんとピコピコ言うぞ。試そうじゃないか」
「んなもん、試す気になれるか、馬鹿野郎―――――ッ!」



 十七歳になっても、僕を苦しめる受難は今日も続く……









 うちの班室にはピコハンがあります。マトモです←

プロフィール

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奏 Euph
割となんでもやる、活動的な魚類。
狐狸・二ノ宮翼・塵芥・ラピなど、名前がたくさんあります。
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