Short & present!
Etoile 幻ツナムク 紗耶香さんより
遥か遠く、高い空に手を伸ばし
掴めるだけの星屑を捕まえて
青い瓶の中にそっと滑らせると
ほら、輝いた。
『Etoile』-エトワール-
イタリアの夜空は美しい。
澄み渡る星々は、世界最高の天然プラネタリウム。
月は宝飾師が磨きあげたアクアマリンのように蒼い。
「綺麗だなあ…」
ボンゴレ邸のプライベートルームにて。
ドン・ボンゴレこと沢田綱吉は、ミルフィオーレの幻騎士を招いて天体観測に勤しんでいた。
星図を手に空を見上げる綱吉に、幻騎士は微笑む。
「何がどの星か分かるか?」
「…ちょっと不安です」
綱吉は申し訳なさそうに頭を掻いた。幻騎士はその隣に立ち、星図を受け取った。
「星図のここが北極星。空だとあれがそうだ。ここから等倍し…あの青白い星がシリウスだ」
「本当だ!凄い明るい…」
星の魅力に陶然とする綱吉に、幻騎士は目を細める。
綱吉は思い出したように幻騎士を見上げ、問った。
「ね、幻騎士さん。星が欲しいって思ったこと、ある?」
首を傾げる綱吉に、幻騎士は瞬いた。
数秒間の沈黙。
「幼少の時分に、そんなことを言ったかも知れんな。お前は欲しいのか?」
「う~ん…」
綱吉は口元に手を当てた。しばらくうんうんと唸っていた綱吉を、幻騎士は急かすでもなく見つめていた。
「手に入るなら欲しいと思いますけど…。やっぱり、無理ですよね」
「無理ではないさ」
幻騎士は即答し、空に手を伸ばす。目を見開く綱吉を横目に彼は何かを掴動作をし、その手を差し出した。
手のひらに乗せられたのは、青い小さな硝子瓶。コルクの蓋に閉じ込められていたものは…
「星砂?」
歪で、しかしどこか温かい形をしたクリーム色の粒子。
綱吉は掌で硝子瓶を転がした。
「本物の星ではないが…中々綺麗なものだろう?」
稀にみる優しい微笑み。幻騎士は美しい人だが、笑えばその美しさが顕著になる。
「…ありがとうございます」
感極まった綱吉が瞳を揺らした。
「綱吉」
引き寄せられるように二人が近づく。唇が触れ合おうかという瞬間…。
─ドカッ
「「!!?」」
二人の間に、三叉槍が突き刺さった。
「クハハハ!綱吉君に手を出そうなんて百年早いんですよ!」
不敵な高笑いに幻騎士は困惑し、綱吉は憤慨する。
「何しに来たんだ骸!!」
「無論君達の監視です!捨て置けばまず確実にあーんなことやそーんなことを……」
「あーんなことって何だよ!俺達を何だと思ってるのさ!!」
「中学生の弁解ほど信用できないものはありませんね!最近の学生はモラルが乱れてます!」
「お前だってその中学生じゃないか!骸の馬鹿!おかん!!」
「おかんで結構!君が過ちを犯さないように気を配ってるんです!」
賑やかにぎゃんぎゃんと言い合う二人(おやこ)に、幻騎士はぽつりと呟く。
「…綱吉。親御の許可が出ないなら日を改めようか?」
「えぇっ!?気にしないで下さい幻騎士さん!てゆうか骸はただのお節介だ!」
「よ・く・も言いましたね!!」
綱吉の一言を引き金に言い争いが激化する。二人とも武器を構えた。いよいよ手が出るという時、幻騎士が二人を制した。
「綱吉。やはり日を改めよう」
「「え!?」」
骸までもが度肝を抜かれて動きを止める。幻騎士は不満げな綱吉と視線を合わせた。
「お前にはただのお節介でも、六道骸はお前のことを心底心配している。天体観測はまたできる。お前はボスだ。自分に向けられる好意は大切にしろ」
訥々と諭す幻騎士に、綱吉は悲しそうな顔をする。骸は驚きで顔が強張った。
「…本当に、またやれますか?」
「ああ」
綱吉は長く躊躇っていたが、意を決すると幻騎士に抱きついた。
「…今度は、いつ?」
「予定が合えば、いつでも」
大きく綺麗な掌が、名残惜しそうに琥珀色に触れる。
一瞬の間を置き、幻騎士の輪郭がまるで切り取られるように消え失せた。
綱吉は硝子瓶を握り締め、青年が消えた場所を見つめていた。それは、恋をしている人間の目だった。
長い、長い沈黙。
「………」
「………」
「………」
「あ~っ!仕方の無い!!」
余りの空気の重さに、骸は叫んだ。頭を掻き毟る骸に綱吉は戸惑う。
「まさかこの僕がこんなことを言うなんて…!!」
「む、骸?」
骸はぶつぶつ呟きながら勢い良く振り返った。そのまま綱吉の肩を掴む。そして、実に苦々しげに絞り出した。
「絶対…絶対に日付が変わる前に帰ってきなさい……!」
綱吉は一瞬固まったが、言葉の意味を理解すると目を輝かせた。
「骸大好き!」
「…早く行きなさい。僕はこれから自己嫌悪と後悔に悩むことにします」
わざわざ敵に塩を送るような行為に、骸はうなだれた。…いや、二人の仲に当てられたというのもあるかもしれない。
「安心してよ、ちゃんと守るから!」
「そうして下さい…」
歓喜して懐いてくる綱吉の頭を撫で、骸は複雑な顔をした。
綱吉は心底嬉しげにバルコニーから飛び降りた。危なげなく着地し、愛する者の元へひた走る。
「…仲睦まじいことだ」
呆れたように見守る骸の目は、それでもどこか優しかった。
術を使って去ったから、彼が何処へ向かったかは分からない。しかし、綱吉は確信している。彼はこの先にいると。
(超直感?)
走りながら考える綱吉。その懐で、星砂が光っていた。
「さぁ、どうなるか…」
幻騎士はボンゴレ邸を少し離れた、小高い丘の上に立っていた。星見には絶好の場所である。
幻騎士は下手に絡まず引き下がった。向けられる思いを大切にしてほしいのは事実だが、同時に実験したいことがあったのだ。
綱吉に渡した星砂には、術をかけてある。あれを持っていれば二人は互いの場所を察知できる。
裏世界の人間には信じがたい愚行だろう。しかし、それでも彼は少年に絶対の信頼を寄せていた。
幻騎士は同じ仕様の硝子瓶を取り出し、星明かりに翳す。
さて、あの子は保護者の制止を振り切って来るか。それとも……。
「幻騎士さん!」
不思議と心を揺さぶる、その声。
翳した硝子瓶の中、小さな夜空が眩く煌めいた。
実験は成功。
振り向けば、数多の星々を背に愛し子が走ってくるのが見えた。
見守る者。
探す者。
只、静かに待つ者。
それぞれを、その全てを『星』-etoile-
は照らし出す。
夜の帳を舞台にした寸劇を、さんざめく光の粒子が見つめていた。
寄り添う二人。
案ずる一人。
『夜明け』-finale-はまだ、遥か遠い。
END
そんなこんなで幻ツナ骸。(何
Euph様、お誕生日おめでとうございます。タイトルの『Etoile』には、仏語の『星』という意味の他、舞台の花形という意味もあります。天体観測と変な掛け合いを意識しましたが…。やる気の空回りですね(乾笑)
…これでも無い知恵絞って必死に考えました。捧げます。最後にもう一度。
Happy Birthday!
奏 Euph
本当に素敵すぎる幻ツナムクをいただいてしまいました!!情景描写とかすごく綺麗だし、キャラが生き生きしていて…ああもう誕生日幸せすぎです!広い空の下の天体観測…やってみたいものです。
紗耶香さん、素敵な幻ツナムク小説、本当にありがとうございました!!
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プロフィール

- 奏 Euph
- 割となんでもやる、活動的な魚類。
狐狸・二ノ宮翼・塵芥・ラピなど、名前がたくさんあります。
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