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Short & present!

捧げもの

ロマネ・コンティ スクツナ テンマさんへ

 ロマネ・コンティ


 約束は守る。誰に対しても大抵はそうだが、こればっかりはいつも以上に守らなければいけない約束だった。覚えていないかもしれない。だけどこっちは覚えているということを前提に行動しているからなぁ…。

 どすり。ぴったり、20歳の誕生日に恋人が用意してくれたのは一本のワインだった。ラベルはまだ慣れない外国語で書かれていて、読みにくいことこの上ない。
「ろむん…こんてい?」
「ロマネ・コンティだぁ。前に約束しただろうが」
 スクアーロはグラスを2人分用意しながら、疲れた表情でイスに座るツナに言った。無理もない。さっきまでボンゴレじゅうから祝福され、20ということで少ないながらも慣れない酒を飲まされた。疲れないほうがおかしいだろう。
「ロマネ…ああ!」
「ようやく思い出したかぁ?思ったより時間はかからなかったな」
「って…まさかホントにやってくれるなんて…」
 思い出したのはヴァリアーの酒盛りを傍観していたツナと、ほろ酔いになっていたスクアーロの会話。


『お酒ってそんないいもんなの?』
『悪かぁねぇな』
『ししっ♪ツナちんも飲んでみる~?美味しーよー』
 既にボトルをあけてべろんべろんになっているベルに迫られ、その艶めいた顔にツナは内心びくびくしていた。
『け、けけけ結構です…!』
『そうだな。これ以上頭が悪くなってもな…』
『否定できないけどすごく酷いよ!』
 感慨深げに言うスクアーロにつっこむが、その通りだ。リボーンにも酒は二十歳からとキツく言われていたから、その時は眺めているしかなかった。もしも破ったら即座に家庭教師様のスパルタ教育という愛のムチが飛ぶ。
『お酒か~…』
『ま、お前が二十歳になった時の夜に、一緒にいい酒を飲もうじゃねぇか』
『本当?いい酒って…わかんないけど…』
『オレにまかせとけぇ。最高のヤツを用意してやる』


「ってことは…これがすごくいいお酒?」
「年間数百本できるかどうかの、代物だぁ。ワインの王だぜ」
 いくらだったとか無粋な事は、訊ねられても言うまい。ツナはグラスに注がれる血のように赤い液体を、ただ呆然としながら見ていた。
「嬉しいな…約束、覚えていてくれて」
「ハッ!てめぇの約束は、忘れたくても忘れられねぇな」
「…喜んでいいんだよね?」
「…あ゛ぁ」
 ツナはグラスの持ち手をいじりながら、緊張気味に微笑んだ。スクアーロもグラスを掲げる。グラスのふちとふちが合う寸前で、スクアーロはそれをさっと引いた。
「え…」
「笑え」
「笑ってるじゃん……」
「お前だけの笑顔を見せろ。それじゃねぇヤツだぁ。折角、お前がオレのために生まれてきた日なんだからな」
 スクアーロのふざけたような、冗談めかしたような、それでも真剣だとわかる言葉に、ツナは火がついたように赤くなる。
「お、おれはスクアーロのためだけに生まれてきたんじゃないって…。でも、さ――――」

 生まれてきて、本当によかった。

「オレも、お前と会うために、愛し合うために生まれてきたんだからなぁ」
「そのセリフくさいよ、スクアーロ…」
 そう言うツナの顔は、彼が見せる中でも一番極上のものに変わっていた。艶めいていて、純粋で、無垢で、輝いた笑顔。その笑顔を見るために、自分は生まれてきた。
「Salute!」
「Grazie、スクアーロ…」
 今度こそ杯を交わし合い、ツナは笑みを浮かべたまま、まだ少し苦く感じる祝いの液を、小さなのどにすべらせた。

 おれが誕生した理由は、もしかするとこの人と会うため、愛し合うためだったのかもしれない。
 スクアーロの言葉が少しだけ、現実めいた夜のこと。



プロフィール

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奏 Euph
割となんでもやる、活動的な魚類。
狐狸・二ノ宮翼・塵芥・ラピなど、名前がたくさんあります。
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