Short & present!
空には星、地には3人 らんま キツネさんへ
空には星、地には3人 らんま1/2
リュックには東北土産のういろうとパイナップル。あかねさんの所に帰る準備は万全だ。響 良牙は獣道を歩きながら落ち着こうと努力していた。
いるところは、山奥。しかも夜。なんともいたれりつくせりだ。
「蓄生……賞味期限まであと3日しかない」
昨日までは車や民家がたくさんあるところにいた。半日でこんなところにまで行けるとは、良牙のマイナスに働いた、超方向音痴というクオリティのためだろう。
「悩んでも仕方ない…。とりあえずここで野宿でも……ん?」
ぱちぱち、と火がはぜる音が聞こえてくる。
『人がいるのか?』
いるならば好都合だ。少なくとも自分よりは方向感覚がいいだろうし、案内してもらえば嬉しい。良牙が草をかきわけながら進むと、唐突に一本のクナイが頬を掠めた。
「なっ!?」
「誰じゃあ!!?」
茂みの向こうからどこかで聞いたことのある声が聞こえる。
「それはこっちのセリフだ!……って…」
「ぬ?」
「お?」
後半二つはシンクロしていた。茂みの先にいたのは、おさげの少年と長髪に瓶底メガネの男。好敵手である乱馬とムースだった。
「な、なんでお前らがここにいるんだ?」
「それはこっちのセリフだっつーの」
乱馬は不機嫌そうにため息をつく。その口調に苛立った良牙は、リュックサックに刺しておいた番傘を乱馬に突きつける。
「質問の答えになってねぇ」
「…あー、わかった、わかったっての。ムースの所にきた行商が、面白い情報を持ってきた」
「なにぃ?」
「フッフッフ…オラがそいつを締め上げた情報によると、この山のどこかに隠し湯バージョンの男溺泉があるそうじゃ」
「なんだと!?」
男溺泉。呪泉境で溺れた男なら、例外を除いて誰もがのどから手が出るほど欲する泉。元に戻れる希望だった。
「どこだ、男溺泉は!?」
「焦るなって。ちゃんと地図は持ってきてる」
バッ、と乱馬が懐から取り出したのは一枚の古びた紙きれだった。おそらくムースが持っていると、十中八九失くしてしまうからだろう。
良牙がその地図をのぞきこむ。そこには大きな岩の絵、アリの道のような参道の印、そして中国語らしい文章などが書いてあった。
「こうしちゃいられねぇ。早く行くぞ。いつかのように枯れていたりしたら洒落にならん」
「愚か者めが…」
くっくっくとムースが不敵に笑う。
「ここに書いてあることによると、朝日を浴びた瞬間に、その入口が30分だけ開かれるそうじゃ」
「なにぃ…?」
そんなおかしな話があってたまるか、と一蹴したい。だが、呪泉境にまつわることを常識のものさしで測る方がどうかしている。それだけ、あの泉関連は謎に満ちていた。なにがあっても不思議ではない。そんな入口云々の話がウソだというなら、自分たちにかかっている呪いはどうだ、というところだ。
「チッ…で、その入口はどこだ?」
「これだ」
乱馬があっさりと指を差す方向には、いつぞやの呪泉境のガイドの顔をした岩が置かれていた。あまりにもリアルで、感動どころか寒気を覚える。
「じょ…冗談じゃねぇんだろうな?」
「オレが冗談を言うような奴に見えるのか!?」
「いつも言ってるだろうがッ!!」
お決まりの口論が2人の間で繰り広げられている間に、ムースは良牙のリュックを漁り、カップラーメンを取り出し―――固まった。
「おい、良牙、お湯はどこだ?」
「お湯だと?んなもん沸かさなきゃあるわけねぇ…って、このアヒルが!なに勝手にオレのリュック漁ってやがる!」
「お、ういろうとパイナップルがあるじゃねぇか」
「食うな。それはあかねさんへの東北土産だ!ったく…どれだけ食い意地がはってるんだ、お前らは…」
「ま、いいじゃねぇか。カップラーメンのひとつやふたつ。道場にくるたび飯食ってくお前だし」
「うむ。猫飯店に来るたびにラーメンを思う存分食っていくお前だろうが」
シャンプーの手料理を食いおって、などとぶつくさ文句を言う彼らに、良牙には反論の余地はなかった。
「仕方ねぇな…今回だけだぞ。そうと決まったら水を汲んでこなきゃな」
「さっき川があったぜ」
乱馬が指差す方向からは、さらさらという水が流れる音が聞こえてきた。
「しゃーねーな、ここはオレが行くか」
乱馬が立ちあがった。意図に気が付き、良牙が反論する。
「待て!オレのカップめんだ!オレが行かなくてどうする!?」
「なんだと!オレが行くって言ってんだろ!」
「バカ野郎、てめぇなんて川に落ちてごめんなさいな状況になるだろうがっ」
「知るか。オレは行くからな」
「乱馬…貴様…誰が行かせるか!」
「じゃあオラが行くだ!」
「「どうぞどうぞ」」
「え゛…」
ムースが行くことになった。しぶしぶとバケツを持って川に歩いていくムースを見送りながら、2人は岩にもたれかかってくつろいでいた。
「アホだなあいつ」
「まーな…それにしても気になるんだけどよ…」
妙に神妙そうな乱馬の口調に、良牙がいぶかる。
「なんだ?」
「いや、さっき、お前オレが川に落ちるようなこと言ってたよな」
「ああ」
「ムースは自分から呪泉境に落ちるアホだぞ?」
「…………」
「「待てぃ!!!」」
自分たちで送っておきながら、2人は地面を踏みしめながら川に向かって走っていく。ドドドドド!そんな音が聞こえてきそうな勢いだ。
「ムース!」
「このド近眼が!!」
「ん?お゛ぅ!!?」
茂みからほとんど飛び出すように川辺に向かってジャンプすると、3人の声はさっきのようにシンクロした。2本の足がほとんど習慣になっているかのように、ムースの顔面にかまされる。川岸にいたムースと乱馬と良牙のメガトン級の威力という不可抗力により、ムースはもちろん、後者の2人も
「え゛」
見事にやや深めの川に落ちた。
げーげーと文句を言うようかのようにわめきたてるアヒルは無視し、少女に変身したらんまは溺れかけていた黒豚を救いあげ、頭の上にのせた。
「ちっくしょ~…おい、大丈夫か、良牙」
ぴっ、と頭を震わせようやく落ち着いた良牙に安心し、乱馬は岸に上がろうとした、が。
「? おい、流されてないか?」
問いかけてみても動物が答えてくるはずがない。と思ったが、頭の上の良牙はなにかに恐怖し、悲鳴を上げた。頭の上の黒豚と、小脇にいるアヒルが見る方向を見てみると、滝。
「なっ…!?」
一瞬顔がムンクの叫びになるが、反対方向にクロールする。だがクロールがすぐそばの滝の勢いにかなうはずもなく、らんまと良牙、そしてムースは、勢いよく滝壺に落ちて行った。ほんの一瞬だけ、滝壺の裏に洞窟のようなものが見え、何かがらんまの頭の上に落ちてくる。
ごがん
目の前に星が散り、らんまの意識はブラックアウトした。
「う…ぬぅ?」
見なれた町の見なれた川で、らんまはぷかぷかと浮かんでいた。胸の上には黒豚。腹の上にはアヒルという、なんとも不思議でシュールな光景だ。
「ここは…通学路?」
ばしゃ、という水音をたて、らんまは立ち上がった。玄馬とフェンスの上で闘って落ちたり、あかねに落とされたりした川だ。
「あの川…ここまできてるのか…?…ん?」
一緒に流されてきたらしい、どこかで見たような壺が、ぷかぷかと浮いていた。目を覚ました良牙とムースを肩と頭に乗せると、らんまは嫌な予感と共に壺を開けた。
長年のご愛顧、ありがとうございます。呪泉境 男溺泉の日本チェーン2号、隠し湯の滝裏は、客不足のために閉鎖いたしました。中国にある呪泉境をよろしくお願いします。
いつかも同じようなものを見たことがあった。ああ、女子更衣室の地下にあったものだ。
「ってことは…またハズレかよ~~っ!!」
あんな山に、あんな場所にくるわけねぇだろ!と、らんまの声が高らかに、わびしげに響く。黒豚とアヒルも、傍でしょぼくれていた。らんまは深くため息をつくと、壺を蹴って道に跳んだ。
「…おい、道場に行こうぜ。風呂だ、風呂」
「がっ…」
「ぶぃ…」
三者三様に肩をすくめながら、1人と2匹は道場へと向かっていく。良牙が『お土産』を山に置いてきたのを嘆き、また山へ走り、結果迷子になるのは、また別の話。
ケンカするほど仲がいい3人は、また同志として、一歩寄りあった。そんなある秋の朝のこと。空には明星が光っていた。
本当にぐだぐだでごめんなさい…orz キツネさんのみお持ち帰り可。
リュックには東北土産のういろうとパイナップル。あかねさんの所に帰る準備は万全だ。響 良牙は獣道を歩きながら落ち着こうと努力していた。
いるところは、山奥。しかも夜。なんともいたれりつくせりだ。
「蓄生……賞味期限まであと3日しかない」
昨日までは車や民家がたくさんあるところにいた。半日でこんなところにまで行けるとは、良牙のマイナスに働いた、超方向音痴というクオリティのためだろう。
「悩んでも仕方ない…。とりあえずここで野宿でも……ん?」
ぱちぱち、と火がはぜる音が聞こえてくる。
『人がいるのか?』
いるならば好都合だ。少なくとも自分よりは方向感覚がいいだろうし、案内してもらえば嬉しい。良牙が草をかきわけながら進むと、唐突に一本のクナイが頬を掠めた。
「なっ!?」
「誰じゃあ!!?」
茂みの向こうからどこかで聞いたことのある声が聞こえる。
「それはこっちのセリフだ!……って…」
「ぬ?」
「お?」
後半二つはシンクロしていた。茂みの先にいたのは、おさげの少年と長髪に瓶底メガネの男。好敵手である乱馬とムースだった。
「な、なんでお前らがここにいるんだ?」
「それはこっちのセリフだっつーの」
乱馬は不機嫌そうにため息をつく。その口調に苛立った良牙は、リュックサックに刺しておいた番傘を乱馬に突きつける。
「質問の答えになってねぇ」
「…あー、わかった、わかったっての。ムースの所にきた行商が、面白い情報を持ってきた」
「なにぃ?」
「フッフッフ…オラがそいつを締め上げた情報によると、この山のどこかに隠し湯バージョンの男溺泉があるそうじゃ」
「なんだと!?」
男溺泉。呪泉境で溺れた男なら、例外を除いて誰もがのどから手が出るほど欲する泉。元に戻れる希望だった。
「どこだ、男溺泉は!?」
「焦るなって。ちゃんと地図は持ってきてる」
バッ、と乱馬が懐から取り出したのは一枚の古びた紙きれだった。おそらくムースが持っていると、十中八九失くしてしまうからだろう。
良牙がその地図をのぞきこむ。そこには大きな岩の絵、アリの道のような参道の印、そして中国語らしい文章などが書いてあった。
「こうしちゃいられねぇ。早く行くぞ。いつかのように枯れていたりしたら洒落にならん」
「愚か者めが…」
くっくっくとムースが不敵に笑う。
「ここに書いてあることによると、朝日を浴びた瞬間に、その入口が30分だけ開かれるそうじゃ」
「なにぃ…?」
そんなおかしな話があってたまるか、と一蹴したい。だが、呪泉境にまつわることを常識のものさしで測る方がどうかしている。それだけ、あの泉関連は謎に満ちていた。なにがあっても不思議ではない。そんな入口云々の話がウソだというなら、自分たちにかかっている呪いはどうだ、というところだ。
「チッ…で、その入口はどこだ?」
「これだ」
乱馬があっさりと指を差す方向には、いつぞやの呪泉境のガイドの顔をした岩が置かれていた。あまりにもリアルで、感動どころか寒気を覚える。
「じょ…冗談じゃねぇんだろうな?」
「オレが冗談を言うような奴に見えるのか!?」
「いつも言ってるだろうがッ!!」
お決まりの口論が2人の間で繰り広げられている間に、ムースは良牙のリュックを漁り、カップラーメンを取り出し―――固まった。
「おい、良牙、お湯はどこだ?」
「お湯だと?んなもん沸かさなきゃあるわけねぇ…って、このアヒルが!なに勝手にオレのリュック漁ってやがる!」
「お、ういろうとパイナップルがあるじゃねぇか」
「食うな。それはあかねさんへの東北土産だ!ったく…どれだけ食い意地がはってるんだ、お前らは…」
「ま、いいじゃねぇか。カップラーメンのひとつやふたつ。道場にくるたび飯食ってくお前だし」
「うむ。猫飯店に来るたびにラーメンを思う存分食っていくお前だろうが」
シャンプーの手料理を食いおって、などとぶつくさ文句を言う彼らに、良牙には反論の余地はなかった。
「仕方ねぇな…今回だけだぞ。そうと決まったら水を汲んでこなきゃな」
「さっき川があったぜ」
乱馬が指差す方向からは、さらさらという水が流れる音が聞こえてきた。
「しゃーねーな、ここはオレが行くか」
乱馬が立ちあがった。意図に気が付き、良牙が反論する。
「待て!オレのカップめんだ!オレが行かなくてどうする!?」
「なんだと!オレが行くって言ってんだろ!」
「バカ野郎、てめぇなんて川に落ちてごめんなさいな状況になるだろうがっ」
「知るか。オレは行くからな」
「乱馬…貴様…誰が行かせるか!」
「じゃあオラが行くだ!」
「「どうぞどうぞ」」
「え゛…」
ムースが行くことになった。しぶしぶとバケツを持って川に歩いていくムースを見送りながら、2人は岩にもたれかかってくつろいでいた。
「アホだなあいつ」
「まーな…それにしても気になるんだけどよ…」
妙に神妙そうな乱馬の口調に、良牙がいぶかる。
「なんだ?」
「いや、さっき、お前オレが川に落ちるようなこと言ってたよな」
「ああ」
「ムースは自分から呪泉境に落ちるアホだぞ?」
「…………」
「「待てぃ!!!」」
自分たちで送っておきながら、2人は地面を踏みしめながら川に向かって走っていく。ドドドドド!そんな音が聞こえてきそうな勢いだ。
「ムース!」
「このド近眼が!!」
「ん?お゛ぅ!!?」
茂みからほとんど飛び出すように川辺に向かってジャンプすると、3人の声はさっきのようにシンクロした。2本の足がほとんど習慣になっているかのように、ムースの顔面にかまされる。川岸にいたムースと乱馬と良牙のメガトン級の威力という不可抗力により、ムースはもちろん、後者の2人も
「え゛」
見事にやや深めの川に落ちた。
げーげーと文句を言うようかのようにわめきたてるアヒルは無視し、少女に変身したらんまは溺れかけていた黒豚を救いあげ、頭の上にのせた。
「ちっくしょ~…おい、大丈夫か、良牙」
ぴっ、と頭を震わせようやく落ち着いた良牙に安心し、乱馬は岸に上がろうとした、が。
「? おい、流されてないか?」
問いかけてみても動物が答えてくるはずがない。と思ったが、頭の上の良牙はなにかに恐怖し、悲鳴を上げた。頭の上の黒豚と、小脇にいるアヒルが見る方向を見てみると、滝。
「なっ…!?」
一瞬顔がムンクの叫びになるが、反対方向にクロールする。だがクロールがすぐそばの滝の勢いにかなうはずもなく、らんまと良牙、そしてムースは、勢いよく滝壺に落ちて行った。ほんの一瞬だけ、滝壺の裏に洞窟のようなものが見え、何かがらんまの頭の上に落ちてくる。
ごがん
目の前に星が散り、らんまの意識はブラックアウトした。
「う…ぬぅ?」
見なれた町の見なれた川で、らんまはぷかぷかと浮かんでいた。胸の上には黒豚。腹の上にはアヒルという、なんとも不思議でシュールな光景だ。
「ここは…通学路?」
ばしゃ、という水音をたて、らんまは立ち上がった。玄馬とフェンスの上で闘って落ちたり、あかねに落とされたりした川だ。
「あの川…ここまできてるのか…?…ん?」
一緒に流されてきたらしい、どこかで見たような壺が、ぷかぷかと浮いていた。目を覚ました良牙とムースを肩と頭に乗せると、らんまは嫌な予感と共に壺を開けた。
長年のご愛顧、ありがとうございます。呪泉境 男溺泉の日本チェーン2号、隠し湯の滝裏は、客不足のために閉鎖いたしました。中国にある呪泉境をよろしくお願いします。
いつかも同じようなものを見たことがあった。ああ、女子更衣室の地下にあったものだ。
「ってことは…またハズレかよ~~っ!!」
あんな山に、あんな場所にくるわけねぇだろ!と、らんまの声が高らかに、わびしげに響く。黒豚とアヒルも、傍でしょぼくれていた。らんまは深くため息をつくと、壺を蹴って道に跳んだ。
「…おい、道場に行こうぜ。風呂だ、風呂」
「がっ…」
「ぶぃ…」
三者三様に肩をすくめながら、1人と2匹は道場へと向かっていく。良牙が『お土産』を山に置いてきたのを嘆き、また山へ走り、結果迷子になるのは、また別の話。
ケンカするほど仲がいい3人は、また同志として、一歩寄りあった。そんなある秋の朝のこと。空には明星が光っていた。
本当にぐだぐだでごめんなさい…orz キツネさんのみお持ち帰り可。
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