Short & present!
愛とプライドの天秤 スクツナ 紗耶香さんへ
愛とプライドの天秤 スクツナ
『誰がこんなこと考えたんだぁ……』
ぐびぐびと出されてきたアルコールを胃に流し込みながら、スクアーロは大所帯を傍観した。酔っているもの歌っているものが半分半分くらい。スクアーロのようにシラフに近い状態にいるものはいない。
カラオケボックスの入口には、洒落で貼られた張り紙がしてあるはずだ。
貸切り
第一回 ボンゴレカラオケ大会+親交会もどき
もどきというのがミソだ。あながち間違ってはいない。普段ではありえないことも、酒の魔力だと自分に言い聞かせてやりたい。
自分と渡り合ったはずの雨の守護者はつぶれて寝ているし、嵐の忠犬は机に突っ伏して寝ている山本に愚痴を呟いている。カラオケボックスの外では戦いに疲れた雲と晴とルッスーリアの屍のようなものが転がっているだろう。
アルコバレーノは教え子とデュエット。ヴァリアーのボスとベルはやたらと真剣な顔でゲームコーナーに行き、音ゲーの機械を壊れんばかりに叩いている。
敵対マフィアが場所を察してきたら対応できるものがまずいないことを心配し(大丈夫だとは思うが万一のためだ)、スクアーロはあまり飲んではいない。しかし他の数十名が飲んできたものの合算は、きっと数十万に上ることは確信できた。
『…帰ってきたな』
大部屋の扉が開かれ、ザンザスとベルが帰ってきた。ザンザスが柄にもなくガッツポーズをしているところから色々おかしい。
「カス鮫が…どきやがれ。勝者に席は譲れ」
「ぐあっ!!!」
空いている席があるのにわざわざ自分を追い払ってそこに座る辺りだけが、まだ彼らしい。
「ちぇー、ボス強すぎるし!あの連打はねえよ」
「黙ってろ」
現在進行形で歌っていた骸の曲を強制終了させ、ぶれたような手つきで曲を入れ、ジャ○アン顔負けの声で歌う。みんな爆笑しながら耳を塞いだ。
「ったく…うるせぇ…!!」
唯一のシラフはしかめっつらで耳を塞いでいた。
「どうやればあんな声が出るんだぁ…。ん゛?」
ふと隣を見ると、真っ赤な顔をしたディーノがせっせせっせとなにやら作っていた。割りばしになにか書いているらしい。
「なにやってんだぁ(そもそもてめぇはボンゴレじゃねぇだろぉ…)」
「あー、王様ゲーム用のくじ!!」
「割り箸なんて環境に悪ぃな、オイ」
清々しい笑顔で、酔っ払い特有の大声で言われ、スクアーロは脱力した。ディーノの発言に、爆笑していたまわりの輩もわらわらとやってくる。
「すごーい、でーのさん!」
いつの間にかスクアーロの隣にきていたツナが、身を乗り出してくじを見る。いつからきていたのかとツッコミを入れたくなったが、そんなことはすぐにどうでもよくなった。
好きだった。リング戦で散々暴言を吐いたわけで(9割が照れ隠し)、キング・オブ・へタレなわけで、言えないが、この少年が、小さなボスが、スクアーロは大好きだった。
愛していると言っても、過言ではない。むしろ足りない。
『不快なのは…』
こいつが跳ね馬に注目しているということ。酔っ払いで、ただの尊敬なのに、自分の嫉妬が浮き彫りになる。
「できたぜ!!」
パアァとさもおかしそうに笑いながら、ディーノはその場にいる男たちに一本一本配って言った。
これから運命のいたずらが働く元凶を、苦々しげにスクアーロも受け取った。
「行くぜぇー、せーの…」
いい年こいた大人の男のくせに、スクアーロ以外のみんなが声をそろえていた(こんな姿を見たくなかったボスもいる)。
王様だーれだ!!?
ひとりひとり、自分のくじを見る。スクアーロの割りばしクジには12と書いてある。
「オレですね」
ひっく、としゃっくりしながら、ランボが自分のくじを振った。ちくしょー、アホ牛かよー、というような声がまわりからかかったが、ランボは強気に考えているようだった。酒を飲むと泣き虫が弱くなるのか?スクアーロはまたしても目の前の光景を疑った。
「では、3の人と12の人が、その順番に、自分の好きな人の名前を大声で告白して、ラブソングを送ってください」
いいぞー、この伊達男がー、という酔っ払いの声が飛ぶ中、スクアーロは冷や汗をかいていた。
『あの…アホ牛が……ッ!!!!!』
これはどういう夢だと、自身に問いたくなる。
「誰だー、3の奴はー?」
山本が10の札をふりながらまわりに聞く。獄寺は2を、リボーンは笑いながら9を、ザンザスは1を、ベルは6を、という具合に次から次へと上げられて行った。
「あー、おれだぁ」
隣の少年が、自分の札をふった。たしかに、3と書いてある。
『う゛お゛…ぉぃ……』
どういう冗談だ?冗談なら今すぐこの場から出て行きたい。自分の好きなもの、つまりこの少年の名前を言うなんて、剣士のプライドが許さない。
ツナもボンゴレのボスだ。きっと、愛人のひとりか笹川妹のあたりの名前を出すだろう。思って虚しくなってきた。
『まー…適当に愛人の名前でも出しゃいいだろぉ』
こんなところでカミングアウト。しかも盛大にふられたあとで、しかも男から男へ。冗談にも何にもならない。スクアーロはハイボールを入れたグラスに、自分の割りばしを投げ込んだ。それでもインクは消えてくれない。ディーノのことをちょっと恨めしく思った。
「じゃー、歌うよー」
そう、その声が聞けるだけでいい。誰が好きかと聞いてしまっても、相手を殺さないでいるくらいの自制心は持ち合わせているつもりだ。
マフィアの拍手が上がる中で、ツナは立ち上がり、照れながらマイクを握った。
「おれの、一番、一番愛してる人に」
ひゅーひゅーと口笛を吹く輩の前で、ツナはどういうわけかスクアーロに目線を落とした。
「すぺるび・すくあーろに」
舌ったらずな名前を呼ぶ声が、愛しすぎる。耳をふさごうと思っていた手が急に止まり、カラオケボックス内に響く声に耳をすませた。ツナの柔らかな声は、絹のようだ。
こんな僕を笑うかな?
笑う。笑顔で受け止められる。
誰にも見せなかった「とっておきのボク」を
こんなに捧げる 裸の唇 恋する唇 KISSして
プライドは音を立てて崩壊した。みんな酒を飲んでいてよかった。きっとこの日のことは夢だと思ってくれるかもしれない。だが、視線が痛い気がするのは……気のせいだと思いたい。
「じゃ、じゃあ…12のやつは?」
全員がさっと、自分の札に目を走らせる。スクアーロは間髪入れずに曲セットのリモコンを握った。全員の視線が、再びスクアーロに向けられる。
「わりぃな、オレだぁ」
グラスからカランと音を立てて割りばしに書かれた12を見せる。隣にいるツナが、酒のせいではない赤みを頬に浮かべ、口元を覆った。
天瓶は、愛の方向に傾いてくれたらしい。
「オレの好きな奴に贈るぜぇ」
贈る、の字は送るとは違う。
「会った時から好きだったぜぇ、ツナヨシぃ…」
もう口笛は上がらない。泣きじゃくりながらも歌は聞いてくれるツナが、いつも以上に愛しくなった。
100万回の『愛してる』なんかよりも
ずっとずっと大切にするものがある
おれは何も言わずに抱きしめるから
お前はオレの腕の中で幸せな女になれ
勇気を出してよかった。ツナは笑った。
本気で人を好きになった時は
頭ひねるより腹くくるしかない
始まりはいつも抱きしめたいっていう気持ち
それを行動に移すこと
歌い終えると、殺気が飛んだ。スクアーロだから気がつけるが、まわりはみんな酔いがさめている。ツナはというと、ひたすら顔を真っ赤にしたまま、こくこくと頷いている。
「……肯定だろうなぁ?」
ちょっと間が空いて、ツナはこくこくと頷いた。
心が愛で満たされる気持ち。今ならよくわかる。
命は無駄にしたくなかったので、とりあえずカラオケボックスから逃げ出した。ツナをお姫様抱っこして。
「あのさ、スクアーロ!」
「ん、あ゛ぁ、そういやお前も言ってたなぁ」
ツナが疑問符を頭上に散らすのを無視し、スクアーロは囁いた。
「それが、『とっておきの』てめぇなんだろうな?」
自分が歌った曲を思い出し、ツナは顔を朱に染めながらもスクアーロをまっすぐ見つめ返し、笑った。
「KISSして♪」
悪戯っぽく歌って見せると、スクアーロはおかしそうに笑い、口づけしてきた。
「大好きだからプライドは捨ててきたんだからなぁ!?」
等身大のラブソングをあなたに!紗耶香さん、ありがとうございます!紗耶香さんのみお持ち帰り可。
『誰がこんなこと考えたんだぁ……』
ぐびぐびと出されてきたアルコールを胃に流し込みながら、スクアーロは大所帯を傍観した。酔っているもの歌っているものが半分半分くらい。スクアーロのようにシラフに近い状態にいるものはいない。
カラオケボックスの入口には、洒落で貼られた張り紙がしてあるはずだ。
貸切り
第一回 ボンゴレカラオケ大会+親交会もどき
もどきというのがミソだ。あながち間違ってはいない。普段ではありえないことも、酒の魔力だと自分に言い聞かせてやりたい。
自分と渡り合ったはずの雨の守護者はつぶれて寝ているし、嵐の忠犬は机に突っ伏して寝ている山本に愚痴を呟いている。カラオケボックスの外では戦いに疲れた雲と晴とルッスーリアの屍のようなものが転がっているだろう。
アルコバレーノは教え子とデュエット。ヴァリアーのボスとベルはやたらと真剣な顔でゲームコーナーに行き、音ゲーの機械を壊れんばかりに叩いている。
敵対マフィアが場所を察してきたら対応できるものがまずいないことを心配し(大丈夫だとは思うが万一のためだ)、スクアーロはあまり飲んではいない。しかし他の数十名が飲んできたものの合算は、きっと数十万に上ることは確信できた。
『…帰ってきたな』
大部屋の扉が開かれ、ザンザスとベルが帰ってきた。ザンザスが柄にもなくガッツポーズをしているところから色々おかしい。
「カス鮫が…どきやがれ。勝者に席は譲れ」
「ぐあっ!!!」
空いている席があるのにわざわざ自分を追い払ってそこに座る辺りだけが、まだ彼らしい。
「ちぇー、ボス強すぎるし!あの連打はねえよ」
「黙ってろ」
現在進行形で歌っていた骸の曲を強制終了させ、ぶれたような手つきで曲を入れ、ジャ○アン顔負けの声で歌う。みんな爆笑しながら耳を塞いだ。
「ったく…うるせぇ…!!」
唯一のシラフはしかめっつらで耳を塞いでいた。
「どうやればあんな声が出るんだぁ…。ん゛?」
ふと隣を見ると、真っ赤な顔をしたディーノがせっせせっせとなにやら作っていた。割りばしになにか書いているらしい。
「なにやってんだぁ(そもそもてめぇはボンゴレじゃねぇだろぉ…)」
「あー、王様ゲーム用のくじ!!」
「割り箸なんて環境に悪ぃな、オイ」
清々しい笑顔で、酔っ払い特有の大声で言われ、スクアーロは脱力した。ディーノの発言に、爆笑していたまわりの輩もわらわらとやってくる。
「すごーい、でーのさん!」
いつの間にかスクアーロの隣にきていたツナが、身を乗り出してくじを見る。いつからきていたのかとツッコミを入れたくなったが、そんなことはすぐにどうでもよくなった。
好きだった。リング戦で散々暴言を吐いたわけで(9割が照れ隠し)、キング・オブ・へタレなわけで、言えないが、この少年が、小さなボスが、スクアーロは大好きだった。
愛していると言っても、過言ではない。むしろ足りない。
『不快なのは…』
こいつが跳ね馬に注目しているということ。酔っ払いで、ただの尊敬なのに、自分の嫉妬が浮き彫りになる。
「できたぜ!!」
パアァとさもおかしそうに笑いながら、ディーノはその場にいる男たちに一本一本配って言った。
これから運命のいたずらが働く元凶を、苦々しげにスクアーロも受け取った。
「行くぜぇー、せーの…」
いい年こいた大人の男のくせに、スクアーロ以外のみんなが声をそろえていた(こんな姿を見たくなかったボスもいる)。
王様だーれだ!!?
ひとりひとり、自分のくじを見る。スクアーロの割りばしクジには12と書いてある。
「オレですね」
ひっく、としゃっくりしながら、ランボが自分のくじを振った。ちくしょー、アホ牛かよー、というような声がまわりからかかったが、ランボは強気に考えているようだった。酒を飲むと泣き虫が弱くなるのか?スクアーロはまたしても目の前の光景を疑った。
「では、3の人と12の人が、その順番に、自分の好きな人の名前を大声で告白して、ラブソングを送ってください」
いいぞー、この伊達男がー、という酔っ払いの声が飛ぶ中、スクアーロは冷や汗をかいていた。
『あの…アホ牛が……ッ!!!!!』
これはどういう夢だと、自身に問いたくなる。
「誰だー、3の奴はー?」
山本が10の札をふりながらまわりに聞く。獄寺は2を、リボーンは笑いながら9を、ザンザスは1を、ベルは6を、という具合に次から次へと上げられて行った。
「あー、おれだぁ」
隣の少年が、自分の札をふった。たしかに、3と書いてある。
『う゛お゛…ぉぃ……』
どういう冗談だ?冗談なら今すぐこの場から出て行きたい。自分の好きなもの、つまりこの少年の名前を言うなんて、剣士のプライドが許さない。
ツナもボンゴレのボスだ。きっと、愛人のひとりか笹川妹のあたりの名前を出すだろう。思って虚しくなってきた。
『まー…適当に愛人の名前でも出しゃいいだろぉ』
こんなところでカミングアウト。しかも盛大にふられたあとで、しかも男から男へ。冗談にも何にもならない。スクアーロはハイボールを入れたグラスに、自分の割りばしを投げ込んだ。それでもインクは消えてくれない。ディーノのことをちょっと恨めしく思った。
「じゃー、歌うよー」
そう、その声が聞けるだけでいい。誰が好きかと聞いてしまっても、相手を殺さないでいるくらいの自制心は持ち合わせているつもりだ。
マフィアの拍手が上がる中で、ツナは立ち上がり、照れながらマイクを握った。
「おれの、一番、一番愛してる人に」
ひゅーひゅーと口笛を吹く輩の前で、ツナはどういうわけかスクアーロに目線を落とした。
「すぺるび・すくあーろに」
舌ったらずな名前を呼ぶ声が、愛しすぎる。耳をふさごうと思っていた手が急に止まり、カラオケボックス内に響く声に耳をすませた。ツナの柔らかな声は、絹のようだ。
こんな僕を笑うかな?
笑う。笑顔で受け止められる。
誰にも見せなかった「とっておきのボク」を
こんなに捧げる 裸の唇 恋する唇 KISSして
プライドは音を立てて崩壊した。みんな酒を飲んでいてよかった。きっとこの日のことは夢だと思ってくれるかもしれない。だが、視線が痛い気がするのは……気のせいだと思いたい。
「じゃ、じゃあ…12のやつは?」
全員がさっと、自分の札に目を走らせる。スクアーロは間髪入れずに曲セットのリモコンを握った。全員の視線が、再びスクアーロに向けられる。
「わりぃな、オレだぁ」
グラスからカランと音を立てて割りばしに書かれた12を見せる。隣にいるツナが、酒のせいではない赤みを頬に浮かべ、口元を覆った。
天瓶は、愛の方向に傾いてくれたらしい。
「オレの好きな奴に贈るぜぇ」
贈る、の字は送るとは違う。
「会った時から好きだったぜぇ、ツナヨシぃ…」
もう口笛は上がらない。泣きじゃくりながらも歌は聞いてくれるツナが、いつも以上に愛しくなった。
100万回の『愛してる』なんかよりも
ずっとずっと大切にするものがある
おれは何も言わずに抱きしめるから
お前はオレの腕の中で幸せな女になれ
勇気を出してよかった。ツナは笑った。
本気で人を好きになった時は
頭ひねるより腹くくるしかない
始まりはいつも抱きしめたいっていう気持ち
それを行動に移すこと
歌い終えると、殺気が飛んだ。スクアーロだから気がつけるが、まわりはみんな酔いがさめている。ツナはというと、ひたすら顔を真っ赤にしたまま、こくこくと頷いている。
「……肯定だろうなぁ?」
ちょっと間が空いて、ツナはこくこくと頷いた。
心が愛で満たされる気持ち。今ならよくわかる。
命は無駄にしたくなかったので、とりあえずカラオケボックスから逃げ出した。ツナをお姫様抱っこして。
「あのさ、スクアーロ!」
「ん、あ゛ぁ、そういやお前も言ってたなぁ」
ツナが疑問符を頭上に散らすのを無視し、スクアーロは囁いた。
「それが、『とっておきの』てめぇなんだろうな?」
自分が歌った曲を思い出し、ツナは顔を朱に染めながらもスクアーロをまっすぐ見つめ返し、笑った。
「KISSして♪」
悪戯っぽく歌って見せると、スクアーロはおかしそうに笑い、口づけしてきた。
「大好きだからプライドは捨ててきたんだからなぁ!?」
等身大のラブソングをあなたに!紗耶香さん、ありがとうございます!紗耶香さんのみお持ち帰り可。
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