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Short & present!


未来永劫 幻ツナ 陽炎さんへ


 未来永劫


 例えば――――
 刹那的に、人を愛するとか
 刹那的に、人を抱くとか
 刹那的に、接吻を送るとか


「対義語?」
 ……ってなんだったっけ、とか思いながら国語のプリントを前に頭をかいた。未来から戻ってきた自分に待ち受けていたのは、ヴァリアーの時のデジャヴでもある課題の山だった。
 数学は獄寺の手伝いでなんとか終わっているが、国語は自分でやれとリボーンにも言われてしまう始末である。
 辞書で引いてみる。
 対義語、と引いてみる前に、目の前に留まった。善の欄に、対義語、悪と書いてある。ああ、そうだ。対になっている言葉、といか、反対の意味を持つもの。
 ツナはようやく質問内容を読み解くと、問題の方に移ってみた。
「刹那の対義語を述べよ―――?」

 どくん。

 刹那的に、思い出す。
 未来永劫に自分を揺り動かす存在を。




 未来では白い機械を見つめながら佇む幻騎士がいる。後ろから黒いスーツの青年が寄ってきた。
「またここにいたんですか……幻騎士さん」
「ああ」
 ぶっきらぼうに返事を返す彼は、自分の知っている過去であり、未来にいた人と全く同じだった。
「お前に会いたい」
「おれはここにいますよ」
「そうだな」
 短絡的に会話が続く。ツナは耐えがたい苦悩を感じ、ぺたり、と床に座った。体育座りで。
「過去のおれに会いたいんですか」
「………」
 この会話において初めて、幻騎士が黙りこくる。ツナは切なげに微笑むと、ゆるく首を振った。
「おれは来ませんよ。ここにはおれがいますから」
「そう……か」
「幻騎士さんは、『おれ』を愛してるんですか?」
「どちらもお前だろう」
 欲張りで、わがままに、子供のような意見を突き通そうとする彼は、まるで彼らしくなかった。

「おれは貴方が好きです」
 ぴくり、と幻騎士が身じろぎする。
「大好きです」
 繰り返してみると、反応が顕著にうかがえた。
「貴方は、おれが好きですか?」
「愛している」
 そう、愛している。未来永劫、この男を愛すると決めて以来、ずっとその想いに揺らぎはなかった。過去の彼にそう誓って以来、未来のこの青年も、ずっと愛してきたはずだった――――。
「ごめんなさい、おれにはそう思えない」
「だって貴方が好きなのは、まるで過去のおれみたい」
「おれはもう、24歳」
「14歳のおれではないし、これからもまた歳をとる」
「未来に進み続ける」
「そんな風に歩いていると、貴方に愛されないのが一番怖いんです」

 白い機械を見つめていた視線が、ツナの茶色い髪を見下ろすようになった。
「お前を、愛している」
「本当に?」
「そう誓ってやった」
 覚えているとは思う。過去のあの少年に言ったのだから、その記憶はこの青年が持っているはずだ。幻騎士はそれだけ言うと、再び白い機械に視線を戻す。

 なんてもどかしい人なんだろう!
 おれの泣きたい気持ちに気付いて!!
 もっとおれを見て、おれを愛して!!!
 お願いだから。


 ふいにツナは立ち上がる。幻騎士に動く暇を与えずに、その身を押し倒して、素早く、刹那的な―――――接吻を送る。
「刹那的に」
 涙をにじませ、幻騎士に覆いかぶさりながらツナは言葉を吐く。
「貴方は『おれ』を愛したんですか」
「それは――――」
「刹那的に」
 幻騎士の言葉を遮り、ツナは言葉を紡ぐ。
「あの時『おれ』を抱いたんですか」
「聞け、綱よ―――」
「刹那的に!!」

 思わず絶叫してしまった。

「『おれ』に接吻したんですね?」
「…………」

 恋なんて儚い。一瞬の夢物語だ。すぐに気の迷いに気が付く。そんな事を言う連中もいるが、幻騎士にとってそんな言葉は戯言にすぎなかった。
 ひとつ指を鳴らす。
 その行為の中には確か、65刹那という時間がある。
 そんな風に刹那的に、
 人を愛することなんてできようか?

「反対だ」
 自分を押し倒して来たツナを、幻騎士は抱き込むように腕の中に捕らえた。真っ赤な顔をした青年が自分の腕の中にいるという事実だけで、どうしようもない心地よさを得てしまう。
「俺は、今この瞬間のお前だけでなく、お前という存在をすべて、愛している」
 言われた途端に、耳元に血が集まる。耳が、頬が、熱い。蕩けてしまいそうな温度だ。
「俺は今も誓う事が出来る」
 ツナを下ろし、4本の剣を置いた。鋭い銀色を放つ剣。銀色の光が集まる中、幻騎士は涙目で自分を見つめる瞳に口付けた。
「忘れるな。こればかりは刹那ではない」
 自分だって、この存在を刹那的にしか愛せないなんてことは許さない。どうせなら、ずっとずっと抱いていたい。死んでもいいくらいの深いキスをしたい。未来永劫、愛していたい。

 これはもう、願望で済ませない。

「お前も誓え、綱吉」
「…ん」
 ちゅっ、と刹那的に幻騎士の目に口付けるツナの頬を指で撫でる。
「お前という存在だけが、愛しい」

 過去であろうと未来であろうと、お前という存在だけに会いたい。逆に言えば彼がいればもうどうにでもなってしまえばいい。そんな冗談じみた狂いを隠し、もう一度折り重なるように抱き寄せた。

「未来永劫、お前だけを愛する」
「…おれも、貴方を愛します」
 未来永劫。刹那的だなんて言わせない。



 ツナはプリントに辞書で調べた一文字を書き込む。お世辞にも上手いとは言えない字のはずなのに、なぜか心にずくずくと染みわたり、なぜか涙が零れた。


 刹那⇔永劫






 陽炎さんのみ、御持ち返り可。
 お粗末な文章でスミマセンでした!そしてお誕生日おめでとうございます!
 陽炎さんに抱えきれないほどのグラジオラスの花を!

プロフィール

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奏 Euph
割となんでもやる、活動的な魚類。
狐狸・二ノ宮翼・塵芥・ラピなど、名前がたくさんあります。
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