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Short & present!


鍵付きの箱 スクツナ 嘉向さんへ




 鍵付きの箱



 パンドラの箱は開けちゃいけません。
 その中には疫病・悲嘆・犯罪・死が入っていますから。
 希望が入っている?
 希望を手に入れるために、最悪を被れますか?



 ツナが鍵付きの箱を持っていた。
ツナが奈々の買い出しに行っている間、窓から侵入した男でありながら彼の恋人でもあるスクアーロは部屋の至る所に隠してあった隠しカメラを壊す作業に徹していた。

 ひとつは霧の守護者のもの。
 ひとつは自分の上司のもの。
 ひとつは嵐の守護者のもの。

『ったく……毎回毎回、うざってぇったらありゃしねぇ……』
 ばきばきとひとつずつ鉄くずにしながらスクアーロは一人苛立っていた。イタリアからはるばる来る度に壊しているはずなのに、一ヶ月も経つとすぐに軽く50は越える。
『オレのツナヨシ盗撮しようなんて……あいつらぁ…』
 勝負を挑むには数も質も良すぎる。ヴァリアーではベルもマーモンもザンザスもターゲットになってしまうという酷いありさまだ。それを一人で相手するなんて、無謀にも程があるという事は嫌でもわかった。

 そんな風に部屋を『掃除』している最中に見つけたのが。

「……なんだぁ?」

 机の上に置かれたままの、鍵付きの箱。
 誰から貰ったのかはわからないが、細かい装飾からしてボンゴレ関係のものだろう。親バカな家光からの物かもしれないし、教え子大好きなリボーンからかもしれない。もしかしたら自分の同期である跳ね馬ディーノからかもしれない。
『……まぁ、アイツが何持っていようが、アイツの好きだろぉ』
 気にする事はない、はずなのに。

『ツナー、イタリアからの土産だぜー♪』
『うわぁ、ディーノさん、ありがとうございます!!』

『ツナ、これ受け取っときやがれ』
『な、こんなの投げるなって!……リボーン、これ……』
『オレのものが受け取れねぇってのか?』
『…ううん、すごく…嬉しい……///』


 バキリ。
 手の中で隠しカメラが数個、まとめて煙を上げた。
「ツナヨシのくせに……いい度胸してるじゃねぇかぁ……!」

 恋すると嫉妬が底なしになってしまう。
 自分はただ、傲慢だっただけじゃないか。スペルビはそういう意味で、嫉妬はレヴィの専門だったはず。なのに、こんな風にしたのは恋させた彼の責任。

「責任取りやがれぇ、ツナヨシぃ…!」
 鍵付きの箱を手に取ると、スクアーロは左腕から長剣を出した。まずは鍵を破壊して、箱ごと中身を―――――


「すくあーろ?」


 呆けたような声に心臓が跳び上がった。自分の嫉妬の度合いを思い知らすような。それ位の勢いで気が付かなかった。帰ってきたらすぐに抱きしめようかとか、お土産のトマトを渡そうかとでも思っていたのに。
「ツ、ツナヨシぃ!?」
「………なにしてんの、オレの部屋で……」
『ま、まじぃ!!アレはツナヨシが隠しカメラを設置して来やがる霧の守護者の連中に送る冷視線!!』
 お株急落の文字がよぎる。

「……まぁ、スクアーロならいっか」

 何か腑に落ちないが、とりあえず安心できた。
「御帰り、スクアーロ」
「お゛、おぅ…」
 気恥ずかしくなるようなやりとりだ。自分の家はイタリアにあって、イタリアが母国なのに、ツナが『御帰り』と言ってくるせいで、こっちが家なのかと幸せな錯覚をしてしまう。
「で、それ……返してよ」
「……コレかぁ…」
 自分の中の嫉妬も少しは収まっている、その内に。ツナの手の中に返すと、彼は嬉しそうに、安心したように笑った。その笑顔とさっきの妄想が相俟って癪に障る。
「……これ、壊そうとしてたよね…?」
「…誰に貰ったんだぁ、そんなもん」
「Ⅸ世だよ、誕生日に」
 イタリアの名職人に作らせたらしい。大切な物を守りたい、という彼らしい老獪な物だと思った。
「なんだぁ、ジジィからかぁ……」
「うん」
「中身はなんだぁ?」
「秘密」
 ブチリ
 突発的に頭の中で何かが切れた気がする。
「掻っ捌くぞぉ!!」
「うわ!!?な、なんなんだよ、突然!!?」
「テメェが……っ!!~~~~!!」

 秘密も含めてみんな知りたいというなんて。
 馬鹿馬鹿しいにも程がある。
 どれほど独占欲が強いんだというハナシ。

「……鍵、壊してやりてぇ……!」
「スクアーロ…?」
 その鍵を壊して、その秘密をこの目の前に晒す。気に入らないものなら全部燃やして、切って、無くしてやる。


「……笑わない?」
「…オレの気に入るものじゃなかったら―――――」

 カチャリ

「――――っ!?」
 心配はいらなかった。
 箱の中は――――
 たくさんのイタリア語の手紙
 ツナにプレゼントした薔薇の押し花
 友達との写真
 自分と写っている写真

「……いや、似合わないよねー!だから、ほら……鍵は―――壊さないでよ?うん、こんなの…壊すだけ時間の無駄だって――――っ?」


 ふいに抱きしめられた。


「っ、て…めぇ……っ!」


 こんなパンドラの箱を用意しておくなんて、本当に性質が悪い。

 自分の嫉妬を振り返って、病気みたいに顔が熱い。
 手紙の中には喧嘩の時に吐いた暴言。あの時は悲嘆した。
 小さな体を犯しつくしたくなってしまう、犯罪の種に。
 もう死んでもいいくらいの熱さに、喜び。


「どれだけオレを喜ばせたいんだぁ、この馬鹿野郎っ!!!」


 貴方を愛せるという希望が、鍵をかけられ残っていた。








 駄文すみませぬ!!嘉向さんのみ御持ち返り可。お誕生日おめでとうございました!!

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奏 Euph
割となんでもやる、活動的な魚類。
狐狸・二ノ宮翼・塵芥・ラピなど、名前がたくさんあります。
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