Short & present!
愚才行進曲
愚才行進曲
ぼくにはある友人がいる。彼の名前は仮にユウジ、ぼくの名前は仮に……なんでもいい。ぼくはメインじゃないんだ。
とにかく、ぼくにはある友人がいる。家も近い、というか隣だ。親同士の仲も良くて、ぼくの家にしょっちゅう遊びにきたユウジである。でもぼくは現在進行形で彼が好きではない。
ちっちゃい頃はまだ良かったんだ。
良ければ表面張力の研究、悪くてもセミの解剖。その程度で済んだからだ。この発言でわかったかと思う。
ぼくの隣人であるユウジは、
この世で一番の、
愚才である。
愚かな才能の持ち主、と言う意味で、ぼくは愚才と呼んでいる。一般人のIQ120を遥かに超すであろう彼は、いわゆる真正のマッドサイエンティスト。バイオや生命学、物理でも化学でも量子学だろうがなんでもござれの、筋金入りの理系のオタクだ。
あいつの前で中性子とでも発言してごらんよ。目を輝かせて中性子爆弾を作り始めるから(ぼくは精一杯止めた。本気だったからだ)。ちなみに中性子爆弾というのは、物などは壊さず、生命だけを消滅させる爆弾である、らしい。
ユウジの前ではちょっとした事でも銃の引き金だ。
これは昨日のことなのだけど。
「♪~~~♪~~」
『ああああああああああああああぁぁ……』
「ちょっと、その『こいつがこんな風に鼻歌なんか歌ってる時にはロクな事がねぇよ……諦めろよー、どうせまた無茶言ってぼくを巻き込むんだろ…』っていうような顔止めてほしいのだけど」
「どうしてそこまでピンポイント!?」
「おれが心理学的研究と脳の電気信号のやり取りをヒントに発明した『心が読めちゃうぞ☆』君だ」
「モノに名前をつけるお前はどうかしてるのか?」
「それより聞いてくれたまえ! 我が幼馴染よ!」
「嫌だ」
「まだなにも言ってないじゃないか」
「どうせマトモじゃないんだ」
「今回はマトモさ。昨日な、おれは素晴らしい本を読んだんだ」
「なにさ」
「かぐや姫」
この壮絶な間で何か感じてほしい。
「はぁああああああ!?」
「ほらほら、また大声出すー」
「出すよ!? 当たり前だよ!? か、かぐや姫ってお前の精神年齢幾つだよ!?」
「DSで脳内年齢を測ったら十五歳だった」
「嘘だ! 絶対お前のことだから――――あああもう…若いはずだよ…そうだよ…日頃からわけのわかんない計算ばっかりしてるから変なところ頭の回転速すぎんだよ…」
「とにかく、かぐや姫はなんでも、竹取物語とかいう古典からきてるみたいじゃないか」
「……それがどうかしたの?」
「昔にこんなバイオテクノロジーがあったんだ!」
「チガイマス」
「だって竹から指先ほどの少女が生まれてくるんだ! しかも数年で育って、竹も光るんだぞ!?」
「シッテマス」
「だからさ、おれも作ろうと思うんだ」
「ナニヲ」
「かぐや姫を」
……
…………
「やめろ」
「えー、なんでだよ。おれんちの科学培養室に出来ないことなんてない!」
「マジで出来そうだから止めろって言ってんだ!」
「いやー、照れるじゃないかー。絶対出来るなんて応援してくれるんだな、お前」
「そんないい奴になれるか、この愚才ボケ茄子が」
「まぁまぁ。今回はいつもと違うんだ」
「はぁ? いつもとどう違うんだ!? また変なこと思いついて変なことをやらかそうとしてるんだろうが」
「今回は蛍光タンパクを使おうと思ってるんだ」
「どこに差があるんだっ!?」
「緑色に神秘的に光る竹を再現したくて……あとは誰かのクローンを作ってある程度育ったものを割った竹に入れて、竹の継ぎ目は密閉。クローンがある程度までは育つ環境にしておけば、オールOK!」
「OKじゃねぇええええ!」
「すごいぜ、マジでかぐや姫を実現させちゃったら、おれノーベル賞ものだぜ!」
「日本でクローンは作れないからな!?」
「安心しろ……おれんちの地下からアメリカのハワイ近くの島まで透明シールド付き高速小型ジェットで繋がってる。もちろん日本なんて圏外だ」
「このアホ―――――ッ!」
「唯一の難点は携帯のアンテナが二本までしか立ってくれないことだ」
「立つのかよ、二本でも!?」
「当たり前だ、おれを誰だと思ってる?」
「……隣人の幼馴染デス」
「ああ、それもOKだ。とにかく、クローンの細胞老化を早めることが出来ればさらにいい。古典に忠実だ。嗚呼っ、古典という文学の世界にこんなに素晴らしいバイオテクノロジーがあったとは!」
「……それはつまり、クローンを作ると仮定して……寿命縮めるって話か!?」
「おーいえす!」
「非人間! 鬼畜! お前も科学者自称するくらいだったら人間性を高めろ! 量子化学よりも倫理の授業でも受けろ!」
「あのね、人間は興味のないことは退屈に思える生き物なんだ」
「詰まる所、嫌だと?」
「おーいえす!」
「このバカ野郎ぉおおおお!」
『いけない、このままではこの愚才がまたわけのわからないことをして、その尻拭いがぼくに回ってくる! なんとかここで諦めさせなきゃ…………親に叱られるどころじゃねぇええええ……』
完璧 犯罪♪
GO TO 刑務所☆
「嫌だぁあああああ!」
「なんだ、黒髪長髪は嫌だったか?」
「違うぅううう!」
『ダメだ、こいつに倫理なんて手は通じない! ……いや、もしかして……でも、まさか……』
「……よし、ユウジ、かぐや姫は作ってもいい」
「おおお、物分かりがいいな! 早速竹林に行って手頃な竹を取りに行くぞ!」
「だがな、ユウジ、ひとつだけ忠告しておく」
「なんだ?」
「その子、将来月に帰るぞ」
……マジで『かぐや姫製造計画』が中止されて、ぼくは本っっ当に良かったと思っている。とにかく、それくらいの愚才が、ぼくの数少ない友達だ。
そして――――
「おーい、昨日読んだ本がすごくてなー! 一口で効く即効性を含んだ毒リンゴが出てくるんだ! ひとつで軽く二十人は逝ける毒リンゴの成る木! どうよ!?」
「……カンベンシテクダサイ……」
――――ぼくを片言にさせる受難は今日も続く。
この愚才っぷりはお気に入り。
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プロフィール

- 奏 Euph
- 割となんでもやる、活動的な魚類。
狐狸・二ノ宮翼・塵芥・ラピなど、名前がたくさんあります。
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