楽天市場
[無料でホームページを作成] [通報・削除依頼]

Short & present!


愚才行進曲 その2!



 愚才行進曲  その2!



 僕には幼馴染がいる。名前はユウジとしよう。とにかく仮名にしておかなければ警察がこれを見た時に色々ヤヴァイ。この危険度は『ヤバい』なんて言葉じゃ済まない。この場合は『ヤヴァイ』だ、間違いない。ネタが古いなんて言っちゃいけない。
 僕はユウジの事をしょっちゅう愚才と称している。これは素晴らしい当て字だと自分でも思うんだ。
 ちょっと見てみろよ。
 素晴らしく、いっそ清々しいほど人間的に愚かなくせに
 素晴らしく、いっそ賞賛したくなるほどの才能の持ち主

 え、似てる? 差があるように思えない? 嫌だなぁ、似てるから色んな意味で素晴らしいんだろ? 悪い事に。

 とにかく、ユウジは自も他も認める、正真正銘の理系オタクだ。バイオテクノロジーの話を耳で捉える度に、しょっちゅう人体クローンを作ろうとする。しかもこの前、僕が知って止める前にマジで作った。材料が古くて宇宙人みたいなのが出来上がった。
『どんなものでも、材料が古くちゃネ☆』
 非常に珍しい失敗だった。あいつがやることは大抵成功してしまうことは否定できないのがまた悲しい。
 彼は作ってしまった宇宙人に大して悪びれもせず、とりあえず研究室で育て助手にしてしまった。従順でいい奴だと言っていた。
 宇宙人モドキの名前は「古さん」だ。あいつのネーミングセンスはどうかと思う。全国の古さん、ごめんなさい。


 そんなこんなで、僕はユウジのブレーキとしての役割を持っている。先生からも言われてしまった。
『関戸君がテスト5分で終わらせて、勝手に机に謎の公式書いたり、シャーペンの中の細工で科学実験するのを止められるのはお前だけなんだ!』
 ……あ、ごめん。ユウジの名字だけだけどバレたね。忘れてほしいといえばそうなのだけど。
 クラス替えが小・中・高と総計4回あった。全部同じクラスだったというのは、先生の陰謀を感じるのだけどどう思う? 僕はこいつのブレーキ役を果たすため、高校受験の時は偏差値を二十上げなきゃいけなかったんだ。
 そんな風にこいつの隣にいると、どうしても事件というか、不可抗力に巻き込まれる。それを止めるのが僕だ!
 ……話だけ聞いていても実感わかないよなぁ……。でも一度経験すると、こいつへの説得は本当に、プレッシャーの塊なんだ。


「ふん、ほっ、ふぉっ!」
『ああああああああああああぁぁぁぁ……』
「ちょっと、その『こいつがこんな風に、横断歩道の白い所だけ踏んでいる時はロクな事がねぇよ……止めろ。最近胃炎になりかけたんだ。誰のせいだと思ってるんだ、お前が巻き起こす関連だよきっと』って顔。うーん……マジで胃炎?」
「もう何もツッコまないから、いいようん」
「胃炎ならおれの化学実験室で治せるよ?」
「信頼性にかけるから遠慮しておく」
「チッ……」
「ナニ、その舌打ち!?」
「そんなことは気にしなくてもいい! 我が幼馴染の固い頭に舌打ちの原理を語っていたら夜が明けるからな!」
「ごめん、今4時だけど」
「何言ってるのさ? 一週間後の朝だよ!」
「僕をバカにするのはいい加減やめてほしいんだけど」
「あ、一ヶ月後?」
「せめて一日後はないのかオイ」
「無理だろ、お前じゃ」

 ポイント。ここで反論できないのが腹立たしい。

「で、今度は何なんだ? 早めに聞いておかないとこの前みたいに宇宙人モドキ作るの止められないからな……」
「あれはマジで人間クローンを作ろうと思ったんだ。今度こそ綺麗にできるようにホームセンター一軒買収した」
「何やってんだ――――ッ!?」
「特許なら数百件持ってるからなー。でもうちでは一番財布が苦しいんだよ」
「僕は財布にCD2枚買えるお金があれば豊かなんだけど」
「我が幼馴染よ、それはいわゆる端金と言うのだ」
「お前みたいなやつをサイテーと言うんだ…! で?」
「ああ、今回はいつもよりも凄いぞ! まぁ、いつもが凄くないとかそういう話ではないのだけれどな」
「細かい自画自賛はイタイ人がやることだ」
 僕の言葉は綺麗にスルーする。これがユウジだ。
「フフフフフ…聞いて驚け! 今回はジャイアントモア、タスマニアタイガー、コーカサスバイソンを初め、絶滅してしまった動物を復活させようという考えなんだ!」


「へー」
「その微妙な間の意味は?」
「今までになくまともな考えをしたなぁと思って。うん、絶滅種の復活とか、なんだかちゃんと社会に貢献できそうじゃん」
「今まで社会に貢献していないような言い方だな」
「だってしてないし。でも、今回は別に止める理由もないかな。でもどうやってやるのさ、そんな技」
「おれの研究ラボに出来ないことがあると思ってるのか?」
「うーん……あ、お前を真人間にできる?」
「理学的に可能な事を言わないと、古さんに解体させるゾ?」
「気持ち悪いからヤメロ」
「とにかく、おれんちの父さん母さん兄さん姉さんおれの力をすべて結集させれば、火星だってすぐに地球みたいな環境にできるさ」
「マユツバものだな、オイ」
 そういえばこいつにも家族がいたんだった。
「何か失礼なこと考えてないか?」
「いやいや。でもそんな勝手なことしたら、日本やアメリカの政府に怒られると思う」
「だからやってないんじゃないか。金がなければ研究も出来ないしな」
「自分本位」
「出来てもやらない方がいいこともあるものさ」
「それを常日頃のお前に言ってやりたいのだけど?」
「多分耳を貸さないと思う」
「わかってるなら言うな!」
「とにかく、おれは絶滅した動物を復活させる!」
「だから、話を戻そう。どうやってだよ。僕のHow to ? に答えてくれると嬉しい。できれば作文原稿2枚までくらいの語数で」
「千文字詰め原稿でいいかな?」
「四百字で」
「善処しよう」
「ナニ、その信用できない政治家みたいな返答!?」
「我が幼馴染よ、染色体や遺伝の話はわかるな?」
「一応生物の授業は中学の時とったから」
「よろしい」
「お前のブレーキになるために、常に同じ授業を取らされる身にもなってみろ」
「おれはおれ、君は君」
「ぐあ――――っ! なんかムカつく!」
「まず、おれやお前の遺伝子は、父さん母さんから来ていて、その父さん母さんの遺伝子は祖父や祖母から来ている」
「うんうん」
「じゃあそれをずっとずっと辿って言ったらどうなると思う?」
「………うーん?」
「生命の起源というのは高分子化合物だと言われていて、化合物の性質は紫外線などの影響で差異がうまれ、そこから生命になるに繋がった」
「ふーん」
「これには色んな主張があるけど、そこは今回触れないでおこう」
「なんで?」
「君にそこまで理解出来るとは思っていないから」
「いちいち腹立つなオイ」
「というわけで、生命のルーツを辿ると、共通の化合物になると思われるわけだ。ダーヴィンの進化論で考えて、人間の起源のサルから考えようか」
「頭痛くなってきたな」
「まず、染色体を研究室でとことん追求して、サルの辺りまで戻していく」
「できるのか!?」
「できる」
 その自信がどこから来るのか、遺伝子の起源だかなんだかよりも先に知りたい。
「人間とサルの共通先祖の辺りまで来て、人間に変化するところを、サルに方向転換させるわけだ。で、現在確認されているサルとは違う遺伝子構造を作っていく。ゲノムの辺りも関わるのだろうけど省こう」
「理由はもう聞かないからな」
「こうして違う遺伝子構造を作った種の中に、必ず絶滅してしまったサルの種類がいるはずだ! 同じ要領で犬からニホンオオカミ、タスマニアデビルからタスマニアタイガー、というように媒体の生物さえいればなんとか遺伝子が作れる。おれなら」
「その『おれなら』ってナニ!? すげぇ腹立つ!」
「遺伝子から培養していって、内臓や骨格は絶滅した種の資料があるからそれを参考にする。試験管の中である程度育てて、はい、完成」
「生命の感動を三分クッキングのように語りやがってこの野郎」
「実際、完成が一番適当だと思うのだよ」
「それにしても、そんなに簡単に行くもんなのか?」
「ああ、おれなら」
「もう『おれなら』にはツッコまない。だけど、そんなに簡単なら、もっと他の施設でも出来ないのか? よく、クローンを使ってそんなことやるような実験とか、話題になるじゃん?」
「……我が幼馴染よ」
「はい?」
「なんで今まで実験してきた研究者が、そこまで時間や費用をかけて、絶滅種の復活や精巧な人間クローンが完成しなかったかわかるかい?」
「いいや、わからない。なんでだ?」

 ここでいつもの嫌な笑顔。

「人間としてヤバい所に手出ししてないからだ、わかったか?」
「お前みたいな奴を、世間一般では外道と呼ぶことはわかった」
 やっぱりダメだ、こいつ。
「久々にいい事するかと思ったら疑問が湧いたよ! 遺伝子構造違う奴たくさん作って、目的の奴ができなかったらどうするつもりなんだよ?」
「もちろん破棄」
「あああああああ、やっぱりサイテーだ……お前には道徳がないんだから! これ以上命をいじるな!」
「道徳はあるさ。化学技術使って殺人や傷害をやらかしたことはない」
「命を生む上での道徳だ!」
「おれの性別は男だ」
「んなこと見りゃわかるわ!」
「なんだよ。お前もいいことやるな、とかなんとか言ったし、今回は別にいいんだろ? 久々の課題が多い研究対象に、おれは燃えているんだ!」
「はい? 課題対象が多い?」
「絶滅した種類って、ものすごい量なんだろ?」
「それはつまり、お前が言う破棄する量も多いって事かぁ!?」
「おふ、こーす!」
「エセ英語で返すなっ!」
 ダメだ、このままではヤヴァイ。生まれた瞬間に殺すなんて、こいつが人間の道を踏み外すのを黙って見ていてはいけない。それが僕の使命らしい。
「~~~~~わかった! 勝手に絶滅種復活させればいいよ!」
「よーし、そうと決まったら早速――――」
「でもな、ユウジ、よく聞け」


「絶滅種が復活したなんてなったら、もっと広いスペースが必要だ。スペースを得る過程で人に話が漏れて、政府がお前んちに来て、人間クローン作ったことバレて、お前は研究機材がない刑務所で終生過ごすんだぞ?」





 マジで諦めてくれてほっとした。あいつにとって研究機材は命らしいからな。流石は僕だ! あの愚才を誘導できるのは、不本意ながら僕しかいない…! しかし――――


「おーい! サファリパークを三件買収したぞー! これなら心置きなく繁殖できる!」
「……カンベンシテクダサイ」

 僕を片言にさせる日々は、今日も続く―――――……







 「僕」は慢性胃炎です

プロフィール

プロフィール画像
奏 Euph
割となんでもやる、活動的な魚類。
狐狸・二ノ宮翼・塵芥・ラピなど、名前がたくさんあります。
QRコード
携帯用QRコード
アクセス数
ページビュー数