林檎コンビ格納庫
発禁
ジャック×ローズ♀
ジャックさんの誕生日 番外
「ああ、じゃあそこに置いといてください」
丁寧で、しかし興味は無さそうな言葉でそう告げると、小包を運んできた男は一礼して出ていった。ぞんざいに扱われた小さな小包は不貞腐れるように部屋の入り口近くのデスクに置かれたままだ。
興味がないわけではない。ただ、こういうときにどんな顔をして迎えればいいのかわからないだけだ。
しばらく考えた後、ローズは部屋に差し込んでいたわずかな光も遮断するように、カーテンをきっちりと閉めた。会議も行われる広い部屋のデスクから、例の小包のデスクまで足音が鳴る。
自分で考えた事なのに、いざ目の前に現物があると何を考えていたか忘れそうになるなんて。
『君のせいだ』
ジャック――――と、思った。
『生まれてくれて、ありがとう』などとちょっと恥ずかしい言葉を吐かれた。とジャックはちょっとご満悦だった。もっとご満悦になる事案の発生に嬉々としている。
「私の部屋に来れば美味しいワインもあるのに……」
ローズはジャックの持つコンビニ袋に詰まった大量のビールと缶酎ハイにぶつくさ言っていた。
「お前のお高いワインは何回も飲んでるっつの。たまにはな、こーゆー安っぽいジャンキーなのが必要だぞ?」
「生憎、ちょっと理解しがたいな」
誕生日会は流石に未成年ばかりだったせいで、アルコールは入れられなかった―――――となれば、祝い事としてはほんの少しだけ足りないわけで。
ボルテ学園からジャックの部屋への帰り道。コンビニに立ち寄った数分後には、ジャックの財布なんかすっからかんだった。コンビニの店員をブラックカードで震え上がらせるわけにはちょっといかない。前に同じことをしでかして、かなり時間を取らせたのは記憶に新しかった。
コンビニ袋から早々と駄菓子を取り出して、夜道で齧るジャックは中々行儀が悪い。
「ジャック、」
「ん、お前も食うか?」
そういう意味でないのに、駄菓子を渡される。行儀の悪さについて窘めようとしたローズの口は、見たことのないパッケージに書かれた『蒲焼さん太郎』に釘づけになっていた。
いつの間にかしょっぱいそれを口に入れて、夜道をてくてくと一緒に歩いていた。
二十分近く歩いてようやくたどり着いたジャックの部屋。がさごそと古めかしい鍵を取り出して、建て付けの悪いドアを開けた。ローズの鼻に、嗅ぎ慣れたにおいが届く。
「……君、また『ぺやんぐ』ばっかり食べてませんか?」
「ペヤング? 昨日はアレだ、炒飯食ってた」
「出来合いの物ばかりでは体によくありませんよ」
ローズの言葉に、口元がうずうずする。仕事との兼ね合いで栄養補助食品に頼る一週間があったのを、ジャックは知っていた。
バチン、と電気を付けると、ごみと洗濯していない服で散らかった部屋が姿を現した。少しだけちかちかと明滅し、ちゃんと明かりになる蛍光灯。
蛇口の近くから放置された形の違うグラスを2つ取り出してきて、ジャックはテーブルに置いた。ローズを適当に座らせて、自分は布団の上で胡坐をかき、ビールのプルタブを起こす。
「ハイハーイ、俺様、誕生日ー!」
「……ビールだと、永遠の十七歳ってことにはできませんね」
くすくすと笑って、前にジュースみたいだと言っていた酎ハイの缶を開き、ローズはグラスに注いだ。炭酸の泡が弾ける。カン、とグラスと、ジャックのビール缶が交差する音が部屋に響いた。
「本日何回目だか……」
「いーじゃねーの、残り少ない誕生日時間だぞ!」
言われてみてみれば、今日が終わるまであと二時間程度しかない。ふむ、と思案するようにローズは口元に手を当てた。ビールを早々ひと缶飲み干して、ジャックは酒臭い息をぶはーと吐く。今日歳を取って、またひとつ、所謂オッサンとやらに近づいたようだ。彼は2桁の値段の例の駄菓子もがじがじと齧る。
「……で、ローズ、」
「はい?」
「いやいやいや、『はい?』じゃねーよ」
真面目な顔でも口元はやたらしまりがない。
「ノコノコ俺んちまでついてきやがって。それもこんな日だぜ? 『誕生日デスシ、私ヲアゲマス❤』みたいな期待でもしてんのかー?」
ふた缶目を開けながら言うと、ローズはあからさまに不快そうな顔でグラスを干した。
「……下品な事を仰るじゃありませんか?」
「ほーぉ、違うと? じゃあ、アレだ」
人差し指と中指の間に親指を突っ込んで、ジャックは下品なサインを作る。
「まだ、お前から直接の誕生日プレゼントは貰ってねーし? いーだろ?」
「…………」
「ほーらほら、寄越せよ」
酒がまわりやすい男というか、やや乱暴じみてきたその口調は、別に嫌いではない。が、今日に関していえば――――ローズは気分を害した、と言わんばかりに鼻を鳴らした。
「……嫌ならレイプとか趣味じゃねーし、何もしねーけどよ」
と言ってるところで、ローズが立ち上がる。ばさり、とコートを脱ぎ捨てた。なくさないように、とヘアピンとヘアゴムも指輪も取って、テーブルの端に置く。ゴーグルと手袋もその隣に置いた。
その手はそのまま、ぽかんとするジャックが取るのを忘れていたゴーグルとバイザーを取って捨て、青い髪に一瞬触れる。
「……自分のアクセはあんな扱いする癖に」
「値段の違い、というものです」
「あの指輪、三百円だろ」
俺が縁日で――――と言いかけた口が、止まる。白いタートルネックを脱ぐ仕草から目が離せない。
特に、一瞬見えた見たことがない色に。
「似合わないし、必要ないのも重々承知ですが――――」
と、言いかけて口をつぐむ彼女に、目が奪われた。
ローズに、胸がある―――――というのは少し語弊がある。元々完全に無いわけではない。今も、しっかりそれらしいものがある、と言い切れるわけではない。
ただ、その白い服を脱いだ後の肌に残った知らない下着の色に、ジャックはビールの缶を落としかけた。
自分の服とかと同じ、スカイブルーのブラジャーがサテンの光を放っていた。白いレースには細身の赤いリボンがラインとなって通っている。少し、いや結構盛っているだろう胸には、ローズにも一応乳らしきものがあったのか、と驚愕させられた。どこで見つけてきたのか、ストラップの端は矢印型の金具がついていて、誰がデザインしたのかと壁に追い詰めて問いたいくらい。
「…………ちょっと」
スカイブルーのブラと、スレンダーな腰のラインにさら、とピンクの長髪がかかったところで、ジャックははっと我に返った。
「……ぉおおおおおおおおおおおおおぅうううううう!?」
「見世物ではないのですけれど……」
「どっ、どっ、どういうわけだ!? それ!? お前のブラとかパンツとか、色気もクソも何もないような黒で、むしろ付けてなくてもなんの問題もないようn」
この辺りでジャックの頬にヘイジャック! が飛んできた。
「いってぇえええええええええええええ、お前本気で殴……」
そう言いかけたところで、また目が彼女に戻る。さっきまでの下品な台詞も忘れた。海で巨乳の日に焼けたビキニの女の子を見たときより、目を逸らして腕を組むローズの方がよっぽどクる。
「君の、誕生日でしたから」
「でし……たって、おお、過去形になってねーか?」
「……君の誕生日なので、私だって色々考えたさ」
うまいことが全然思いつかなかった。これを考え付いた時だって、君は胸が大きい女の方が好きだから、別に喜びもしないだろうと思った。結果、誕生日会という予防線も張った。
「君を喜ばすのは、結構難しいよ、ジャック」
美味しいワインにも、顔色ひとつ変えないじゃないか、君は。
ふと、肩にかかっていた白と赤のストラップがずれて、腕に落っこちた。調整が甘いらしく、少し緩い。く、と上げるその仕草とか、調整に慣れていないのが見透かせるそれに、ローズらしさというのを感じて、ますますジャックのボルテージを上げた。
例の誕生日会の時も、今日、一緒にゲーセンに行った時も、コンビニで駄菓子を買った時も、ローズはこんな、セクシーな物を身に付けていたのか、と思った瞬間、股間が熱くなる。
絡みつくジャックの視線をちょっと睨んで、ローズは足を動かした。布団で胡坐をかいたまま動かなかったジャックの前に屈み込み、今にも音を立てて破裂でもしそうな彼の赤い顔をちらりと見やった。
「誕生日ですし……私をあげます」
長々と、数畳の部屋に沈黙が流れた。ああ、引いたか。と、ローズが少し身じろぎした、その体を、ジャックの腕ががっしりと掴む。
「痛……」
「ヘイ、ローズ、」
そのまま、ちょっと汚い布団に転がされて、ぐじゅん、と熱い舌がローズの口の中に入ってくる。
「んぅ、」
いきなりのこれは、準備がなかった。ローズの口から呻きに近い息が漏れる。少し、唇に舌を這わせてから、ぶはあ、と彼は息を吐く。上着を脱いで、自分の服やアクセサリーをぽいぽい捨てながらジャックはぼやいた。
「お前さあ、そーゆーのほんと、やめろよ。ちょっと……なあ、俺だって我慢できねーぜ?」
俺だって、だなんて。くす、とローズが笑うのに含まれたそれに、ジャックは口元をへの字にする。
「いつから、我慢できるような人種になったと言い張るんですか?」
「……言うじゃねえか、エローズ」
「怒りますよ?」
「そんだけエロいと、そーだろ?」
「君のせいですよ、ジャック」
「俺ぇ?」
「そうです」
ぐ、と押し倒された体を起こして、ちゅ、とジャックの口の端に口づける。
「こんなに色々、おおよそ私らしくもないような事ですら考えるようになったのも、君のせいですよ」
君を喜ばせたいなんて、必死で考えるようになったり、少しでも期待して、こんな下着を買ってしまったり、あまつさえ、こんなバカみたいな台詞とほとんど素面で吐くなんて。
「ほんとうに、なぁ……」
ぽかんとするジャックと目が合って、顔にかかってきた髪を耳にかける。セクシーな仕草に心臓が掴まれた。そして、この笑み。
「生まれてくれて、ありがとう」
存外、幸せなものだ。
と、ローズの体が不意に揺れた。ローズの腕を掴んでいたジャックの手が、背中に回される。折角起こした体を組み伏せたところで、無言で彼は息を止めた。
急にジャックは立ち上がって、のそのそとどこかに向かう。ぽつり、と部屋に転がされたローズだったが、すぐに彼は帰ってきた。手に持ってきたゴムの箱が見えた途端、思わず目を逸らしてふきだした。
「笑ってんじゃねーよ、てめえ!」
「いや、悪いね。せっかくの君の気遣いなのはとてもよくわかっているけれど――――ああ、そうそう、」
笑いがいまひとつ止められないが、真面目くさった、でも赤い顔の君を見返す。
「君のそういう、妙に律儀なところは評価していますよ」
「言い方がいちいち嫌味ったらしいなお前……」
いつ、出してしまうかわからないくらいに、正直興奮した。布団のどこかにティッシュが寝転がっているのは知っているから、最悪そこに出すこともできるだろう。が、どこまで頭が馬鹿になってしまうかわからなかった。
「君、今つけるのかい」
「悪いかよ」
「それは―――――」
できるのか、と訊きかけたが、ちら、と視界の端に映ったそれは、ローズの知る限りではだいぶ興奮した状態であった。それこそ、コンドームを着けるなんて作業を余裕でこなせるくらいには。
羞恥、というのだろうか、思わず目を逸らしてしまうそれは。
「それは、光栄、かな」
彼と致すのはだいぶ慣れた、と言っていいほど回数をこなしているはずだ。現にゴムを着ける彼を待つ時間は昔よりだいぶ減った。
「ヘイ、ローズ、」
慣れた名前を、慣れた声で呼ばれたはずなのに、ローズの心臓は一拍跳び上がる。キスなんて本能とは遠いような舐め合いは、ジャックみたいな男には煩わしいくらいの作業だろうに、彼はその無駄な行為が結構好きらしい。
ローズの身体を、パズルのように、ひとつひとつ丁寧に解いて、繋げていく。ジャックの手は本能かなにかに従順で、何も考えない内にローズの胸元におかれていた。普段は無礼なくらいに『寂しい胸だ』としかコメントが湧かないそこは、本日は大変ご丁寧なラッピングが施されている。解くのがあまりにも勿体ない気持ちは喉まで上がって、ローズとキスする口が、ぐぅ、と鳴った。
嬉しいくらい読み取れる感情に、ローズの目が少し細くなる。
「外したければ、どうぞ? それとも、外し方がわかりませんか?」
からかうローズの口から口を離した。
「わかる、けどな、まー、お前からのプレゼント……だし?」
「ふむ」
壊さないように、その布の隙間からローズの胸の肌を触った。さらさらしているその胸は、丁寧に言うならスレンダー、というやつなのだろう。ジャックがゆるゆると肌を撫でると、こそばゆそうにローズは身をよじらせた。スカイブルーのサテン地が、ジャックの目を嫌でも奪う。
「そんなに気にいってくれたのなら、本望だよ」
「気に入らねーわけがねーだろ」
いよいよ、と後ろのホックを外して、少し上にずらす。魅惑の朱色をべろ、と唾液まみれの舌で舐めると、びくん、と彼女は背中を揺らす。
「好きな、女に、そーゆーことされて、男がどーなっちまうかとか」
どんな問題よりもわかりやすいだろ、馬鹿。熱い舌が触れる度、突き抜ける情欲が互いを犯していく。過ぎてしまえば記憶にしか残らない不思議な熱は、やたらめったらと全身に沁み込む。
テーブルの上に転がっている、酒の缶と、赤い酎ハイが入ったグラスがローズの視界の隅に映った。体が虫みたいに小さくなって、あのグラスに放り込まれたら、きっとこんな感じなのだろうな。
そういったくだらない考えをしていた頭は腹に差し掛かったジャックの手に、意識を持っていかれた。
「あ、」
「は?」
「……聞いておくが、君は、プレゼントのリボンは、自分で解きたい人種かい?」
「―――――ああ」
ピンときて、にやついて、ローズのズボンを一気に引きはがした。ずる、という股間に来る衣擦れの音と共に、男の夢とやらが広がっていた。上の下着と揃いの、スカイブルーのサテン地。白いレースも、赤い細身のリボンも、サイドのレースを留める矢印のチャームも全部お揃い。ローズの全身を改めて上から眺めると、声も出ないくらいいい景色だった。
スレンダーなピンク混じりの白い肌に、光沢感のあるスカイブルーの下着と、彼女らしさを示すオレンジ色の目に、ピンク色の長い髪、牡丹みたいな色のつやつやした唇。
白いどろどろの液体ぶっかけたら、一生おかずに困らなさそうだ。素晴らしい景色を前に、ジャックは真面目な顔でそう思った。目に焼き付けようかと、しばらく見ていると、オレンジ色の目は不愉快そうに逸らされた。
「ジャック、その――――」
「いや、待てって、もう少しくらい――――」
俺の肉眼レフで脳内保存を、と言いかけたところで、その、という言葉の糸を辿った。
下のサテン地のスカイブルーは、わずかに中心が湿り気を帯びた、濃い色だった。
かけなくても、おかずに困らない。
「……君ね、そんな意地悪な顔をしなくても……」
「だっ……どんな顔だってんだよ」
にやついたような、呆けたような、複雑な顔を引っ込めて、ジャックはローズに覆いかぶさった。
「わかりやすいね、君は」
「うっせえ」
サテン地の上からローズの股間を指でそっとつつくと、艶やかな布の感触とは明らかに違う感覚が指に走る。鮮烈な触感に、ぞくぞくっとするのを、ジャックは感じた。似ているが異なるぞくぞくは、ローズの背中にも走っていく。
脱がすのが勿体ないそれをちらと、見やり、目の前のたくし上げられたブラジャーをせめて味わっておくべきか、なんて馬鹿を考え、ジャックは犬歯で浅く齧った。サテンもレースも味はしない。ローズがくす、と笑っていた。『変態かい、君は』なんて台詞が聞こえてくるような顔。
その顔の淡い紅色が、強くなった。
「ン、」
きゅ、と肩に細い手が回った。
「ちょっと、そこは」
肌に移った歯が、甘く齧ってくる。存外齧れる程度には、皮とか、脂肪とかがあった。布よりは味がする。ローズの味。舌と歯で胸元に朱色が落ちるくらいの頃には指を飲み込むくらい十分すぎる程、粘液で満たされた其処が僅かにひくついていた。下着をジャックの指が押しのけて、その場所に触れる。
途端、つま先からとろとろ溶けるような熱さが、ローズの全身を襲った。いつまで経ってもこの魅惑は慣れそうにない。
「ローズ」
俺のもん、と言わんばかりに、ジャックは口付けてくる。赤い舌がぺろ、とローズの口の中をまさぐって、綺麗な歯列をなぞっていった。痺れるような。神経を伝ってその痺れは、ジャックの肩を抱くローズの指先まで走って、その力を強める。つま先まで走った方の痺れは、蕩けていたところに鮮やかな快感を吹き込む。
「ジャッ、く」
「ああああ、悪ぃ……」
せっかくお前が、俺の為に用意してくれたのはわかるが、ちょっと限界だ。そのあたりの台詞を全部言える程、頭は正常に機能しちゃくれない。
えろい、そんな手つきで、ぎこちなく下のレースに手をかけた。薄紅の陰毛がわずかに指に絡む。離れるのが惜しいように、ほんの少しだけ体を起こして、例の下着をローズの膝まで脱がす。する、と膝から、重力に任せて脛の方まで、サテン地は転がって行った。
「ローズ……」
普段は絶対、そんな風に私を呼ばないくせに。必死そうな君の顔はいいものだ。意地悪な事を考えながら、中に入って拡げられていく感覚を抱いた。
「っ、は、ああ」
どちらの声ともわからない。煽情の息が混じったそれに、互いの熱が混ざっていく。ジャックの肩を抱くローズの手が、更に強くなった。
腕と、唇、あと身体中―――性器以外に限れば、その距離はゼロ。
「だぁあああ……」
人の体温か、と疑うほどに熱い蜜が絡みついてくる。猛った竿にそれはなんとも凶悪で、締めて殺さんばかりに、きゅうきゅうと種を吐き出すよう要求してきた。
浅く、速く、何回も、呼吸する。
「動く、か、らな」
「どうぞ……」
おいおいローズ、なんだよ。今にも喉を鳴らしそうな、ご機嫌な面しやがって。そんなに俺のでけーのが欲しかったってか。
下品に煽ろうとはいつだって思うのだが、それは大抵、思考の隅から出られない。ぐ、とジャックがケダモノみたく腰を振ると、彼女は「んぐ」とか声を殺そうと啼く。それを聞くと、もう煽るとかなんとか、どうでもいいから、とにかくこの女を大事に、大事に、犯したくなって。
足首まで落ちたサテン地も震えるが、もはやその存在は覚えていない。
「ジャック……きそ……です」
きゅ、と肩を抱く腕が、汗っぽい首に回され、ジャックの胸にローズの胸にあったサテン地が密着した。ローズの腰と、背中を、潰すように抱きかかえる――――我を忘れて。
「出……」
る、と言ったか、言ってないかは、覚えていられない。
髪の先からつま先の細胞まで満たしていくような彼の振動に、びくびくと貫かれ、弾けていった。
ローズがしょっぱい駄菓子を食べていると、ジャックが起き出してきた。安いアパートの窓から、薄いカーテンを突き抜けて朝日が部屋を焦がしてくる。洗っていなさそうな毛布から身を起こし、ジャックは大きな欠伸をした。
「朝チュンだ……」
「朝チュン、とは?」
きょとん、と首を傾げるローズの身体は、えろっちい紅い痕ばかりが鎖骨だの肩だの胸だのに付いている。派手にやったなあ、と他人事のようにジャックは思った。
「なんつーんだ……なんか、こーゆー朝の事だよ」
「セックスした後の、朝ですか」
「多分」
おそらくなんとなく違う気もするが。
横で膝を抱え、事もなげにローズは駄菓子を食べる。布団の上には、皺だらけになった彼女のラッピングが無造作に放置されていた。いつ完全に引ん剝いたかも覚えていない。
「ジャック、」
「なんだ?」
ローズの隣で、同じ駄菓子の袋を開ける。しょっぱい、安い味が口の中に広がった。
「別に、君の誕生日でなくてもいい」
「あ?」
「君の誕生日だから、私をあげる、なんていうのも、なんだか、おかしい気がして」
なんだろうな、そんな特別なものじゃない。確かに例の下着は特別を意識したが。真面目くさった顔で、ローズは言う。
「今思えば、おかしい言葉でしたね。『私をあげます』なんて」
「…………」
「私、ずっと前から、君の物でしたのに――――ジャック? ちょっと、どうしたんです。……おや、なんでそんなに赤いんですか」
「うるせー」
君は布団に顔を埋めて、くぐもった声を出す。
ああなるほど。ようやく合点がいって、ローズはふたつめの駄菓子の袋を開けた。
「大好きですよ、ジャック?」
「……」
布団には、使用済みのゴムやら、ティッシュやら、サテン地のブラジャーやら、お前の『大好き』って言葉が転がっていて。
俺も、と言うには、かなり恥ずかしい朝だった。
22/27
- TOP
- Blog Ocean
- トップランカーの戦場
- Fly higher than the sky.
- 林檎コンビ格納庫
- ユメクイ
- G・D・F
- パイレーツ・アミュレット
- character
- Short & present!
- Pict
- BBS
- LINK
- Reborn!
プロフィール

- 奏 Euph
- 割となんでもやる、活動的な魚類。
狐狸・二ノ宮翼・塵芥・ラピなど、名前がたくさんあります。
携帯用QRコード
- アクセス数

- ページビュー数
