林檎コンビ格納庫
ローズ♂×ジャック(女体化)
Very Very Bunny Girl
「おーーーっしゃ!!!ジャック先輩負けぇー!!」
「っしゃ!俺の勝ち!!」
「オイオイオイオイ、マジかよ……!!」
目の前のカードはYou Loseを冷ややかに告げる。久々にボルテ学園に遊びに来て、カードゲームに誘われてみればこの仕打ち。ジャックはこの先に待ち構えている罰ゲームを思い出し、口元がひくつくのを感じた。
「いやー先輩、男に二言はねーよ、とか言ってましたよねー?」
「ぜってー負けねーとか言ってたよなー?」
魂と雷刀はニヤニヤと笑いながら、真っ先に勝利を決めた冷音は心配そうに、ジャックを見つめる。
「だぁああ!うっせえ!!ったりめーだろ、ほら、さっさと貸せよ!!!」
「待ってましたー!!!」
「ヘイジャック!カメラ持って待ってるからなー!」
「だ、大丈夫なんですか先輩……」
「うっせえ!いーから貸せよ、お前らが発情するレベルだからチ●コ抑えて待ってろ!!」
男に二言はない、と言い切った手前だ。果たして、ジャックは机の上にある、文化祭で何に使われたのかが一切不明な代物に手をかけた。
廊下で自分以外のピンク色を見かける事はあまりない。それが長髪ならばなおの事だ。レイシスは元気よく、その髪の持ち主のもとに走った。
「はわわっ、こんにちは、ローズさん!」
「おや、こんにちは、レイシス」
髪の毛を翻し、ローズはにこやかに挨拶をした。
「珍しいデスね!今日はなにかご用事デスか?」
「ええ。ジャックとここで待ち合わせをしていたのですが、珍しく、彼の方が早かったらしく、雷刀達と遊んでいる模様なので迎えに来ました」
「そうなのデスカ!雷刀達はまだ教室にいると思いマス♪」
「ああ、ありがとうございます」
実際にローズ自身もそう思っていたし、教室に近づけば近づくほど、下品な笑い声が聞こえてくる。ジャックの周りはいつもそうだ。笑いが絶えなくて、ほんの少しだけ羨ましくもある。
「騒がしいデスネ……」
「いつもああですよ。まったく……ヘイ、ジャッ――――――――――――――」
小さく笑いながら、教室の引き戸に手をかけ、開け放ち、ローズとレイシスは、揃って全身が凍り付いた。
その、
バニーガール衣装の、
ジャックに。
なんの需要があるのか知らないが、衣装はメンズサイズらしいとはいえ、ジャックの男性平均よりは比較的筋肉質な体には少しキツいらしく、かなり体のラインが浮き彫りになっている。背中は惜しげもなく開いており、無理やり詰め込んだピンク色のボクサーパンツが見え隠れしていた。脛毛が生えている足にはご丁寧に網タイツが纏ってある始末だ。
「だーーーーーっひゃっひゃっひゃ!!!ジャック先輩ぱねぇーーーーー!!!」
「いや、めっちゃセクシーだろ!おら、触っていーんだぜー?」
「無理無理無理、ひひひひひひ、きんめー!!!」
「……ぶっ、っくふ、ふふふ」
「おい、冷音!!!目ェ逸らしてんじゃねーよ!!」
「あーーーー!!!やめてやめてやめろ、魂ぅ!!!!あはははははははは!!!」
健全な男子学生なら、この下品な冗談への大爆笑もわかる。だがしかし、ローズとレイシスがそれに付いていけるはずもない。
「あ、」
冷音の視線と、焦った声に、レイシスが飛び上がる。何も言わずに真っ赤な顔をローズに向け、「行きマスネ」とだけ小声で告げて走り去る。
「ローズ先輩じゃないっすか」
「へ?」
ローズ、の単語に過剰に反応して、ジャックとローズの視線がぶつかる。じっと自分を見つめているローズに、ジャックは何を勘違いしたのかニヤ、と笑った。
「お、ローズ、なーに突っ立ってんだよ」
「……」
「笑うなりなんなりしねーの?あ、わかったぜ、俺のセクシーな姿に言葉も出な―――――――」
「なんと言いますか……」
その先に言葉はいらなかった。
ローズの目はただひたすら、至極まっとうに、冷ややかに『本当に馬鹿ですね』と言っていた。
「さっさと着替えてください。急がないと帰りますよ」
「は?だぁ、クソ!なんだよ!!ノリ悪ぃな、馬鹿!!この……ったく!!!」
どたんばたんと着替え、脛毛が絡む網タイツを脱ぎ捨て、雷刀に押し付ける頃には、ローズは教室を出て、廊下のはるか向こうにいた。
「どーゆー事だよ!!ムッツリのくせに、ヘイ、ローズ!!!」
「……」
「あーあ、行っちまったな、ジャック」
「あれめっちゃ面白かったのに」
勝手な事を言う雷刀の手には、無駄なぬくもりの残ったバニー服が押し付けられたままであった。
「……のやろっ」
バグプログラムの操作をしながら、ジャックは風呂上がりの髪の毛を拭いた。苛立ったのか、あれから今日一日、会話はするものの、ローズはずっと目を合わせてくれない。いつもならお湯が勿体ないだのなんだのと理由をつけてシャワーを浴びるところ、別々だったのがその証拠だ。何が琴線に触れたのか今ひとつぱっとしないが、わかることはただひとつ。
『あんな、馬鹿にした目ぇしやがって……』
馬鹿みたいに騒いでいただけなのに、笑ったり、小言をぶつけたり、皮肉を言うでも、なんでもない。ただ、心底呆れた、というような表情は、どうしても。
いつか感染したバグウイルスのデータを開き、ジャックはにやついた。何かのイタズラに使えないか、と思って保存していたかいがあった。ローズがシャワーを浴びる音が聞こえる。データを自身の体に打ち込めば、もう、イタズラの準備は万端だ。
筋肉質の男性の身体は溶けて、代わりに艶めく肌のオンナノコの身体が鏡に映る。ジャックはニヤリと笑った。
「後悔させてやるぜ、ローズ」
「ヘイ、ジャック?」
不機嫌な面持ちの彼がいたはずのその部屋はもぬけの殻で、脱ぎ散らかした服とタオルしかない。まさか全裸で外に出るはずもない、と首を傾げたローズの腕に、熱い手の温度が触れる。これくらいの事にはもう慣れた。驚かせようとするのは彼のさが、というものらしい。昼の一件に引き続き、幼稚さが浮き彫りでまたひとつため息が出た。
「君はまったく、少しは―――――っ」
熱い、それだけではない。
ぐっ、と押し付けられる、男性とはかけ離れた柔らかな感触に、ローズの表情が変わった。感触は柔らかいが、腕に触れるのは少し冷たい質感。滑らかで、どこか艶めかしい、見知らぬ質感。
「ヘイローズ、こっち向けよ?」
一段高い声に、その概要を理解した。ゆっくりと数秒かけて腕にくっつくその感触の正体と目を合わせる。ローズの視線に向かって、刺激的な笑みを向ける彼は、彼女に変貌していた。
「ほーら、ローズ。これならどうだ?」
「……」
ひと言で説明するなら、男性は満場一致で【セクシー】、なんて感想を言うだろう。昼に見た冗談じみたバニー男と同一人物とは思えない。
真っ黒な合皮の衣装に収まりきらない、見慣れた、下品に近い程の胸。腕にしがみついて見上げるジャックの背中は大きく開いており、くびれた腰は惜しげもなく晒されている。尻がギリギリで見え隠れしており、体のラインも浮き彫りだ。黒い尻尾がチラチラと見える。かなり大きく切り込まれた衣装で、無論尻は少し脚側からはみ出しており、網タイツは脚やら太ももだけでなく、零れた尻の肉にまで編み込んだラインを刻印していた。
こんなバニーガールが目に触れたら、大方の男は即座に立てなくなる事は間違いないだろう。
「ヘイローズ?お前が馬鹿にしたヤローだぜ、どう思う?」
「どうって……君ね」
ひょい、とウサギの耳ごと首を捻り、ジャックの拗ねたような、挑発するような顔が笑って、カフスだけを纏った手がローズの胸をなぞった。
「こーゆーのって男の夢ジャン?叶えてやった俺に、なんか言う事ねーのかよ?」
「……」
「おーい、ローズ」
「……」
「何とか言えよ」
「なんとか」
「違ぇよ!!おい!!お前なんとも感じねーの!!?はあ!?」
「わかりました。ジャック、下品です」
「げひ……ッ!?」
「言いたい事は、よくわかりました」
また呆れた顔で、ローズはジャックの肩に手をやり、憤慨したようなジャックに向かって肩をすくめた。
「昼間の一件は、まったくもって快くなかったです。学業に専念しなければいけない場で、あの場で最も年上である君が、ああいった冗談をするのは理解しかねますし、ましてやレイシスも見ていましたよ?」
「は!?レイシス、いたのかよ……!?」
「そう。女生徒に見られる可能性がある場でああいうことは、やっていい場とやってはいけないことの見極めがついていないという意味合いで、私は遺憾でしたということです」
「難しい言葉ばっか使いやがって……」
「……ああいう冗談は、もう少し時と場所と状況を選びなさいな、ということです。別に君という男のバニー姿を馬鹿にしたわけではありません」
「ったく……ほーんと、オカタイ奴……」
「まあ、それを抜きにしても、男性のああいう姿は大層見苦しいというか、君だと尚更ですね。馬鹿にした、というよりは、呆れたというか……」
「は?んだと、テメェ……」
からかうローズの表情は、今日の気まずさを少し和らげた。
「……ったく、にしても、オトコでもオンナでも、お前って全然変わらねーのな。バニーは範疇外かよ?」
「君は普段の自分の露出量を考えなさいな。さして変わりませんよ。下品なのも、ね」
成程その通りだ。普段から腹も肩も腰もむき出しの自分を思い返して、ジャックは返す言葉を失った。
「……チェッ、高かったのに」
ため息を吐いて、衣装を見下ろすと途端に自分がとんでもなく馬鹿に思えて仕方がない。予定では、馬鹿にした事をこれでもかというくらい謝らせて、焦らして焦らして、散々焦らしてからいざ、となるはずだった。衣装よりは安かった真っ黒なバニー耳が少し下がり、ちょっと落ち込んだ気分に拍車をかけた。
「―――――ヘイジャック、」
いつもより少し高いところからかかる声に顔を上げる、その前に――――――
「ひぃあ!?」
ぐい、とカフスごと細い腕が引っ張られる。有無を言わさない少し強すぎるくらいの力に、ピンヒールの足元がよたついた。
「ああ、すみません」
「だひっ!わ、ちょ、ローズっ!?」
太ももが持ち上げられ、体がふわりと浮く。思わずローズの首にしがみつくと、そのまま鼻先にキスされる。ベッドに下ろされた途端、ジャックはライオンを前にしたウサギの気持ちがよくわかった。腕を抑えつけられ、頭上で纏め上げられれば、艶めかしいバニーガールの姿はオレンジ色の目の前に晒される。
「まあ、そういう予定でしたし、ジャック、」
「なっ、な、おま、全然これっぽっちもキョーミ無いんじゃ……」
「バニーガールというものに興味を持った事は、確かにありませんね。まあ、それは」
わざと、わざと、ニセモノのバニー耳に向かって、
「今日までの、話ですよ」
などとローズは囁く。ニセモノの耳のはずなのに、まるで自分の耳に繋がっているような痺れが伝わり、ジャックは目をぱちぱちさせた。
「昼の件はさておき、君に合わせて敢えて下品に言わせていただくなら、そそりますね?」
じっ、とローズの視線がジャックの全身に行き渡った。途端にさっきまでの挑発も、不機嫌だった記憶も忘れて、なんでこんな衣装をという行き場の無い羞恥が指先まで行き渡っていった。
「みっ、み、見るなよ、そんな……!!」
「なぜです?君から着てくれたじゃありませんか?……見れば見る程、艶めかしいですね」
「っ、ん!」
カタく、冷たい衣装ごしの胸に、優しくローズの手が触れる。下から寄せられた胸は、上の方に柔らかい脂肪が偏っていた。少し指で触るだけで、ふに、と柔らかさを主張する。つ、と、ローズの指がなぞると、すぐに谷間にぶつかり、指を挿入するとずるずると埋まっていく。見ているだけでも恥ずかしい光景なのに、目が逸らせない。そんなジャックの反応を楽しむように、谷間に埋まった指を増やし、ずるずるとローズは少し汗ばんだ乳房に触れていった。
「いつもの服や、全裸では、ここはあまり意識することがなかったですし、」
「お前、この、ムッツリ野郎……!!」
「心外です。まあ、君にはぴったりの衣装じゃないですか?」
「ひっ!?」
顔が近づき、すれ違って、ジャックの耳に息がかかる。蕩けるような息が耳に入っていく。熱い温度が触れられる筈のない場所を撫でていって、喉から嬌声があがった。
「ウサギは万年発情期、などという話もあります。こうして私を誘ってくる君らしくて、いいと思いますよ」
「さ、そってた、わけじゃ、ぁ、あ……」
「はいはい、」
「んッ!」
乳房ばかり触られ、耳を犯す息に疼いていた胸の突起に、ローズの指が僅かに触れる。いなすような、からかうような言葉にも反応できず、溶けていく思考に任せきりだった。
「あっあっ……!」
「悔しいですけど、可愛らしいですよ。ジャック」
カッチリとした形を保っていた付け襟とネクタイを外し、すっ、と喉を撫でると、ローズはそのまま健康的な肌色の喉に歯牙を突き立てた。本当にケモノになったようなローズの歯の冷たさに、舌と唇の熱。ジャックの身体は痺れ、ウサギのように震えた。
「か、わいいって……やめろ、ばか、ローズ……」
「それは無理な相談です。君が誘ってくれたのを、断るわけにはいきません」
唾液の音を聞かせるように立て、ローズの唇が喉に吸い付く。離れようとするジャックの肩を抑え、逃げないように腰を抱く。もうジャックの手は拘束されていなかった。が、別の見えないなにかで縛られ、痺れ、その手は震えるか、シーツを握りしめるしかできない。
猩々色に染まった喉を見下ろし、その痕をひとつ舐める。
「ん、っ……ろー、ず……」
食べられる。
早速、喉の痕から毒の様に広がる熱にあてられ、身体の性感帯はびくりびくりと反応を始めている。こうなってしまったら抑えられないし、手の施しようがない。もう、食べられるしかない。もう何度も重ねては、食べられてきているのに、いまだにこの鼓動は収まらない。
「ローズ、の、ばかぁ……」
「すみませんね、でも、大好きです」
悪びれもせずに、言葉だけ謝って、ローズが唇に舌をさし込む。徐々に深く、舌が入り込み、ぬるりと口の中を蹂躙されれば。身体だけではない、自身のすべてがメスに堕されそうな心地よさがジャックを犯していった。
「大好き、って……」
「嘘に聞こえます?」
「……そーゆーわけじゃ、ねー、けどよ……んっ……あ、ッ、ひ……!」
「大好きな君がそんな恰好をして煽ってくれば、まあ、応えたくなるものさ」
「は、ひっ!?」
指の細い手が、むき出しの背中を撫でて、フワフワの尻尾を楽しそうに弄る。思わずジャックがのけ反り、額がローズの肩に当たった。くすっ、と面白おかしそうに笑う声が耳に入り、さっきとは違う恥ずかしさで、ジャックの眉間に皺が寄る。フワフワの尻尾をゆるりと指で楽しみ、脚との境目をなぞる。静かに近づいてくる指に、強張っていく。くい、と指が合皮の衣装の中に入り込み、網タイツの感触を楽しむように行き交うのが、恥ずかしくってたまらない。
「あ、あ……この、すけべ……ッ、ん!」
なじった途端、指が唐突に淫核を掠めていった。大袈裟な程に反応したジャックに、また楽しそうな声が部屋に鳴る。
「下着、履いてませんね?」
「だっ、ばか……だって、こんな服じゃ、見えちまうだろ!それに俺はソーユー趣味はないっ!」
「……バニーガールは着るくせに」
「それはそれ!これはこれ!」
「はいはい。まあ、この方が、やりやすくっていいですよ」
「や、り……や……ろ、ぉず……!」
とろり、と蜜が指で絡み取られ、淫核に擦りつけられると、ローズが嬉しそうに笑っているのが、見なくてもわかる。ジャックの口の端からは、興奮と羞恥の唾液が零れ、合皮の衣装の内側は、汗ばんで僅かに湿っていた。
『ほんと、だ……』
ライオンに齧られたところから、ライオンに爪を立てられたところからじわじわと広がり、発情したウサギみたいになる。カリッ、と弾かれれば、声も出ない程の刺激に、濁音混じりの息が零れる。
「ぁ、く、っあ!?」
蕩けるナカに、指が一本挿しこまれ、曲げられる。痛みは全くないが、待ち望んでいたそれが唐突に来たのに思考が追いつかない。びくびくと震えるジャックの体を抱きしめ、ローズが少しだけ苦しそうな声で、
「痛いですか?」
などと言う。首を振りながら、口元を抑え、指を齧るジャックを見下ろし、ローズは唾を飲んだ。喉が動いたのを視界の隅に捉え、また焚き付けられる。
挿しこまれた指が、ぐりぐりと動き、数を増やし、拡げられ、その度にジャックの口からは激しい息が零れ、目に発情の涙が滲む。ぺろ、とその涙を舐め取り、そのままキスする。唇の切れ目から零れる喘ぎに、恥ずかしいなんて思う余裕もなくなってきた。
「ローズ、も、む……りっ……ローズ……ローズ……ぅ、あ、っひあ!あ、あ……」
「ヘイジャック――――いいです?」
ローズのはち切れそうな鼓動が胸越しに当たる。豊満な胸の向こうからも伝わる程のリズムに、色欲がまたずるずると剥かれていく。肩越しで、ローズの表情は見えない。余裕を損ねた声しか聞こえない。
「しょーが、ねーな……ローズ、」
精一杯に強がるも、自分も限界だ。いつの間にか、腕はローズの首に回され、必死に縋りついてしまっている。熱に浮かされて、うわ言みたいに喉が鳴る。
「ほしっ……い、ローズ……」
「……」
触れる熱が離れ、薄い布地を脱ぎ捨てる。張りつめた其れをジャックの網タイツ越しの脚に擦りつける合間、ブチッという少し不快な音が、どこかで聞こえた。
「ちゃんと、後で買います」
馬鹿みたいに真面目な台詞がローズらしく、思わず笑いそうになった。しかしそれも、破られた網タイツを押しのけ、衣装の局部をずらし、手探りで位置を確認され、あてがわれた熱を感じるまでに消えてしまう。
「っあ、あ、ぁ、は、ろー……ずぅ……っ……」
欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい。そんな言葉が纏わりついて、剥がれなくなる。愛液が満ちたところに突き立てられ、圧に押し広げられる感触に息が詰まる。
「はっ、あ、あ、ひ、っあ、ローズ、ろー……ずぅ……あ、ん!あ、だめ、ぁ、ら、っひあ!あ、ぁ……」
「ジャック、あつ、い……ですね……?」
馬鹿みたいに興奮していたのを指摘され、ナカがまた震える。固さを帯びたローズの其れをきゅぅ、と締めつけ、離さない。それを少し強引に押しのけ、奥へ、奥へと侵入していく。ぐり、と壁を擦る度に生々しい熱の交わりがまた、劣情を煽り、ジャックを喘がせた。
「あッ!あッ、ローズ!!そ、こっ……ひぐ、あ、あ、すご……あ、んん、あ!」
「可愛いウサギさんですね、ジャック」
ちょっと余裕ぶってはいるものの、ぐっ、と奥まで押し当てる力強さは少し乱暴で、ローズも本能に圧されているのが膣越しに全部感じ取れる。
「腹ン、中……ローズ、が、っ、あ、ん、んっ!き、っひ!あ!」
「……っ、ジャック……」
「ん!ッ、は……ろ、」
続けようと思った言葉は、口に摘み取られた。息を吸い込み、ようやく頭に血が巡っても、腹の中を犯す熱で焼き切られていく。いつものように行き交いはせず、ただただ奥にねじ込まれ、全身が抱かれる。
「は、あ、ろ、ぉず!!イ、っ、んんッ―――――!!」
身体がひと際大きく跳ねて、子宮口まで締まる。肉の壁の神経はローズの熱を捉え、触れ、また目眩を引き起こすような快感をジャックの脳裏に焼き付けていった。
「も、む……ろーず……あっつ……ぃい……」
「ジャック、」
熱い腕で抱かれ、ぼうっとするジャックの耳に、ぐちゅぐちゅという卑猥な音と名前を呼ぶローズの声が鳴った。
「ろー、ず……」
耳元に、少し荒い息が聞こえる。興奮の息の音に、また全身が痙攣する。
まだ、まだ。
恥なんて、もう、昼間から脱ぎ捨てていたじゃないか。
「ローズ、あ、もっと……」
引き留める羞恥の声なんて、もうとうに消えていた。震える細い腕で、ローズの頬を撫で、引き寄せて、キスする。舌の熱さにまた興奮し、高鳴りが止められない。揶揄するのも忘れて、舌を絡めて答える。
「すみませんね、」
「はっ、ひ!?」
ぐ、と身体が後ろ向きにされ、視界がシーツだけになる。ほんの少し不安になった瞬間、ひと筋、ピンク色の髪の毛が視界にあった。
その髪の持ち主は、乱れた髪をかき上げ、息を吐き、眼前に広がる光景を見渡した。汗ばんだ背中に、合皮の衣装。首筋は真っ赤で、きゅぅ、と不安げにカフスの先の手がシーツを握りしめている。むっちりとした肉づいたヒップは衣装から少し零れていて、フワフワのバニーに尻尾の下では、ずらされた局部の衣装と破れた網タイツの向こうの秘所に、自身がしっかりと突き刺さっていた。荒い息を吐く、口からピンク色の唾液交じりの舌が覗く。発情したウサギ、という言葉は本当にぴったりだった。
ずれたバニーの耳を軽く直しながら、ローズはくすり、と笑った。
「……中々、やらしい光景です」
「ばかぁ……」
唇をぺろ、と舐めて、その口が、名前を呼ぶ。
「ろーず」
なんて。
そうなるともう我慢はできない。
指輪のはまった右手の感触がジャックの腰に走り、ゆっくり、モノが引き抜かれる。と、
「あ、が、ひっ!!!?」
ずん、と重く中に打ち付けるように侵入してきた、その凶悪な熱。
「あ、ッひ!?ろーず、まっ、むり、だめ、ろーず!!」
「……すみ、ません」
正常位の時とは比べ物にならない程、深く入り込み、ゆっくり引き抜かれては、またジャックのナカの弱い部分を責め、それ以外を考えられなくさせる。
衣装の中に手を突っ込んで、乳首を抓られる。網タイツに覆われた太ももを愛しげに撫で、掴み、またローズが強く挿入すると、膣内の肉のヒダが摩擦し、熱さをいっそう強調してくる。喉が痛くなりそうな程喘げば、喉に唾液が絡んで、咳こんだ。いつもならローズが真っ先に心配して来るのに、一瞬腰を止めて、ジャックの喉に触れるだけ。余裕なんてものは脱ぎ捨てて、ジャックがウサギになっていたのと同じくらい、ローズもライオンになっていた。
「はッ、ひ!!?あ!!?」
ゴリッ、と音がしそうなほど、強く、ジャックの腹部側の壁に打ち付けられ、視界がばっと白くなっていく。
「だっ、ゃら、あ、あ、また、イッちゃう!!ローズ、ろー……もっ、ん、あっあ、あっひ!?あ!?ッんぅ、あ、あ゛、っはああ、あ、あ、も……ッ!!」
「好き、です……ジャック、ジャック……っ、ぁ、っく……!」
ぞくぞくとした強烈な快感の後を追うように、あくまで控えめなローズの喘ぎが、ジャックの耳に響く。腹の中にぶちまけられる確かな感触。濃く、べとついたナニカの正体はすぐわかり、イッたばかりの体が戦慄いた。
「気持ちひ、あ、あ、ローズ、すご、あ、っひ、ぃ!!あ、あ!!ら、ぁ……ッ~~!!」
とろとろ、としたそれが子宮に達すると、メスの悦楽が痺れとなって全身に迸る。ローズの髪の感触が背中に当たり、続けて、熱い頬が首筋に当たった。
「……っ、ジャック……」
「あ、あ……」
まだ、出ている。そういえばしばらくしていなかったような。どろどろの濃い、白に塗り潰され、ジャックの指からは力が抜けていった。
「で、いくらでした?」
「そんなクソ真面目な事言うの、お前くらいだろーな」
いつもの様にそのまま寝てしまう前に、たまにはやることをやっておこうなどと。あくびをしながら網タイツを脱いで、それをゴミ箱にさも当たり前のように捨てる。
「別にこんなん、とっとくもんでもねーし。買い直す必要もねーよ」
「おや、残念です。似合っていましたよ?」
「嬉しくもなんともねーからな、ローズ」
昼間にはあんなに貶すような顔をしていたくせに、と舌を出して、適当に椅子に散らかしておいたパンツを履いた。脚を上げると、中に残った軽い痛みが走り、ジャックは顔を顰めた。
「これに懲りて、昼間みたいな節操のない真似はおやめなさいな」
「んだよ。ヤローが冗談でバニーガール着るくらいいいじゃねーか」
「先に言った通りですよ。時と場所と場合をちゃんと選びなさい、という話です」
「じゃー、さっきのは時と場所と場合も、ぴったりだったってか?夜に、ローズの部屋で、ローズの前で」
「否定はしませんよ」
しれっと言う横顔が、ちょっと卑怯だ。
「バニーガール、少し疲れましたけれど、悪くなかったです」
「……素直にヨカッタデス、とか言えよ」
「君が調子に乗らないように、という配慮です」
「けっ。このムッツリスケベ」
そんな風に軽口をたたいて服を着て、床に脱ぎ捨てていたバニー服を跪いて回収した。ちょうど、ベッドに座っているローズの足元辺り。汗でちょっと湿っているのが生々しい。喜ぶならまた着てやっても、なんて思ってしまうのが我ながら少しだけ腹立たしかった。少し視線を上にあげれば、ローズと目が合う。視線を逸らしながら、ジャックは小さくぼやいた。
「……なー、ローズ」
「はい」
「お前さぁ、リアルにバニーガールのねーちゃんとか、見た事あんのかよ?」
「外国に行けば、場所に寄りますがいますね」
「……マジで?」
「その、『マジで』の意味が定かではありませんが、念のために。行けばちやほやしては貰えるでしょうね。君の英語力によりますけど。もうひとつ、」
ベッドの上に転がっていたバニー耳を、ジャックの頭に被せ、ローズの口元は微笑を描く。
「中身が、ジャック、君じゃなければ、意味がありません」
「……お前の方が、無節操じゃねーか」
「ご冗談を」
スカした顔しやがって。火が付いたイタズラ心の赴くまま、その手はローズの頬を抑える。
「ヘイローズ」
スカした顔は一転。
一瞬入り込む舌に、反応も出来ない。
「にししっ。どーだよ、ローズ?」
ぴょん、と跳び上がるように離れ、ぴこぴこと両手でウサギ耳を作って茶化してくる。これはどうも、応えなければいけないらしい。
「……君には敵いませんね?」
「間抜けなライオンちゃんに捕まるかよ、バーカ!」
「ほら、そこでじっとしていなさい、バニーちゃん?」
立ち上がるローズと目を合わせ、にやつくと、セクシーなバニーの脚が跳ねる。
「捕まえてみろよ、ローズ!」
「受けて立ちますよ、ジャック!」
歳も格好も忘れた追いかけっこが始まり、さて、ケモノの夜はまだまだ長いらしい。
「っしゃ!俺の勝ち!!」
「オイオイオイオイ、マジかよ……!!」
目の前のカードはYou Loseを冷ややかに告げる。久々にボルテ学園に遊びに来て、カードゲームに誘われてみればこの仕打ち。ジャックはこの先に待ち構えている罰ゲームを思い出し、口元がひくつくのを感じた。
「いやー先輩、男に二言はねーよ、とか言ってましたよねー?」
「ぜってー負けねーとか言ってたよなー?」
魂と雷刀はニヤニヤと笑いながら、真っ先に勝利を決めた冷音は心配そうに、ジャックを見つめる。
「だぁああ!うっせえ!!ったりめーだろ、ほら、さっさと貸せよ!!!」
「待ってましたー!!!」
「ヘイジャック!カメラ持って待ってるからなー!」
「だ、大丈夫なんですか先輩……」
「うっせえ!いーから貸せよ、お前らが発情するレベルだからチ●コ抑えて待ってろ!!」
男に二言はない、と言い切った手前だ。果たして、ジャックは机の上にある、文化祭で何に使われたのかが一切不明な代物に手をかけた。
廊下で自分以外のピンク色を見かける事はあまりない。それが長髪ならばなおの事だ。レイシスは元気よく、その髪の持ち主のもとに走った。
「はわわっ、こんにちは、ローズさん!」
「おや、こんにちは、レイシス」
髪の毛を翻し、ローズはにこやかに挨拶をした。
「珍しいデスね!今日はなにかご用事デスか?」
「ええ。ジャックとここで待ち合わせをしていたのですが、珍しく、彼の方が早かったらしく、雷刀達と遊んでいる模様なので迎えに来ました」
「そうなのデスカ!雷刀達はまだ教室にいると思いマス♪」
「ああ、ありがとうございます」
実際にローズ自身もそう思っていたし、教室に近づけば近づくほど、下品な笑い声が聞こえてくる。ジャックの周りはいつもそうだ。笑いが絶えなくて、ほんの少しだけ羨ましくもある。
「騒がしいデスネ……」
「いつもああですよ。まったく……ヘイ、ジャッ――――――――――――――」
小さく笑いながら、教室の引き戸に手をかけ、開け放ち、ローズとレイシスは、揃って全身が凍り付いた。
その、
バニーガール衣装の、
ジャックに。
なんの需要があるのか知らないが、衣装はメンズサイズらしいとはいえ、ジャックの男性平均よりは比較的筋肉質な体には少しキツいらしく、かなり体のラインが浮き彫りになっている。背中は惜しげもなく開いており、無理やり詰め込んだピンク色のボクサーパンツが見え隠れしていた。脛毛が生えている足にはご丁寧に網タイツが纏ってある始末だ。
「だーーーーーっひゃっひゃっひゃ!!!ジャック先輩ぱねぇーーーーー!!!」
「いや、めっちゃセクシーだろ!おら、触っていーんだぜー?」
「無理無理無理、ひひひひひひ、きんめー!!!」
「……ぶっ、っくふ、ふふふ」
「おい、冷音!!!目ェ逸らしてんじゃねーよ!!」
「あーーーー!!!やめてやめてやめろ、魂ぅ!!!!あはははははははは!!!」
健全な男子学生なら、この下品な冗談への大爆笑もわかる。だがしかし、ローズとレイシスがそれに付いていけるはずもない。
「あ、」
冷音の視線と、焦った声に、レイシスが飛び上がる。何も言わずに真っ赤な顔をローズに向け、「行きマスネ」とだけ小声で告げて走り去る。
「ローズ先輩じゃないっすか」
「へ?」
ローズ、の単語に過剰に反応して、ジャックとローズの視線がぶつかる。じっと自分を見つめているローズに、ジャックは何を勘違いしたのかニヤ、と笑った。
「お、ローズ、なーに突っ立ってんだよ」
「……」
「笑うなりなんなりしねーの?あ、わかったぜ、俺のセクシーな姿に言葉も出な―――――――」
「なんと言いますか……」
その先に言葉はいらなかった。
ローズの目はただひたすら、至極まっとうに、冷ややかに『本当に馬鹿ですね』と言っていた。
「さっさと着替えてください。急がないと帰りますよ」
「は?だぁ、クソ!なんだよ!!ノリ悪ぃな、馬鹿!!この……ったく!!!」
どたんばたんと着替え、脛毛が絡む網タイツを脱ぎ捨て、雷刀に押し付ける頃には、ローズは教室を出て、廊下のはるか向こうにいた。
「どーゆー事だよ!!ムッツリのくせに、ヘイ、ローズ!!!」
「……」
「あーあ、行っちまったな、ジャック」
「あれめっちゃ面白かったのに」
勝手な事を言う雷刀の手には、無駄なぬくもりの残ったバニー服が押し付けられたままであった。
「……のやろっ」
バグプログラムの操作をしながら、ジャックは風呂上がりの髪の毛を拭いた。苛立ったのか、あれから今日一日、会話はするものの、ローズはずっと目を合わせてくれない。いつもならお湯が勿体ないだのなんだのと理由をつけてシャワーを浴びるところ、別々だったのがその証拠だ。何が琴線に触れたのか今ひとつぱっとしないが、わかることはただひとつ。
『あんな、馬鹿にした目ぇしやがって……』
馬鹿みたいに騒いでいただけなのに、笑ったり、小言をぶつけたり、皮肉を言うでも、なんでもない。ただ、心底呆れた、というような表情は、どうしても。
いつか感染したバグウイルスのデータを開き、ジャックはにやついた。何かのイタズラに使えないか、と思って保存していたかいがあった。ローズがシャワーを浴びる音が聞こえる。データを自身の体に打ち込めば、もう、イタズラの準備は万端だ。
筋肉質の男性の身体は溶けて、代わりに艶めく肌のオンナノコの身体が鏡に映る。ジャックはニヤリと笑った。
「後悔させてやるぜ、ローズ」
「ヘイ、ジャック?」
不機嫌な面持ちの彼がいたはずのその部屋はもぬけの殻で、脱ぎ散らかした服とタオルしかない。まさか全裸で外に出るはずもない、と首を傾げたローズの腕に、熱い手の温度が触れる。これくらいの事にはもう慣れた。驚かせようとするのは彼のさが、というものらしい。昼の一件に引き続き、幼稚さが浮き彫りでまたひとつため息が出た。
「君はまったく、少しは―――――っ」
熱い、それだけではない。
ぐっ、と押し付けられる、男性とはかけ離れた柔らかな感触に、ローズの表情が変わった。感触は柔らかいが、腕に触れるのは少し冷たい質感。滑らかで、どこか艶めかしい、見知らぬ質感。
「ヘイローズ、こっち向けよ?」
一段高い声に、その概要を理解した。ゆっくりと数秒かけて腕にくっつくその感触の正体と目を合わせる。ローズの視線に向かって、刺激的な笑みを向ける彼は、彼女に変貌していた。
「ほーら、ローズ。これならどうだ?」
「……」
ひと言で説明するなら、男性は満場一致で【セクシー】、なんて感想を言うだろう。昼に見た冗談じみたバニー男と同一人物とは思えない。
真っ黒な合皮の衣装に収まりきらない、見慣れた、下品に近い程の胸。腕にしがみついて見上げるジャックの背中は大きく開いており、くびれた腰は惜しげもなく晒されている。尻がギリギリで見え隠れしており、体のラインも浮き彫りだ。黒い尻尾がチラチラと見える。かなり大きく切り込まれた衣装で、無論尻は少し脚側からはみ出しており、網タイツは脚やら太ももだけでなく、零れた尻の肉にまで編み込んだラインを刻印していた。
こんなバニーガールが目に触れたら、大方の男は即座に立てなくなる事は間違いないだろう。
「ヘイローズ?お前が馬鹿にしたヤローだぜ、どう思う?」
「どうって……君ね」
ひょい、とウサギの耳ごと首を捻り、ジャックの拗ねたような、挑発するような顔が笑って、カフスだけを纏った手がローズの胸をなぞった。
「こーゆーのって男の夢ジャン?叶えてやった俺に、なんか言う事ねーのかよ?」
「……」
「おーい、ローズ」
「……」
「何とか言えよ」
「なんとか」
「違ぇよ!!おい!!お前なんとも感じねーの!!?はあ!?」
「わかりました。ジャック、下品です」
「げひ……ッ!?」
「言いたい事は、よくわかりました」
また呆れた顔で、ローズはジャックの肩に手をやり、憤慨したようなジャックに向かって肩をすくめた。
「昼間の一件は、まったくもって快くなかったです。学業に専念しなければいけない場で、あの場で最も年上である君が、ああいった冗談をするのは理解しかねますし、ましてやレイシスも見ていましたよ?」
「は!?レイシス、いたのかよ……!?」
「そう。女生徒に見られる可能性がある場でああいうことは、やっていい場とやってはいけないことの見極めがついていないという意味合いで、私は遺憾でしたということです」
「難しい言葉ばっか使いやがって……」
「……ああいう冗談は、もう少し時と場所と状況を選びなさいな、ということです。別に君という男のバニー姿を馬鹿にしたわけではありません」
「ったく……ほーんと、オカタイ奴……」
「まあ、それを抜きにしても、男性のああいう姿は大層見苦しいというか、君だと尚更ですね。馬鹿にした、というよりは、呆れたというか……」
「は?んだと、テメェ……」
からかうローズの表情は、今日の気まずさを少し和らげた。
「……ったく、にしても、オトコでもオンナでも、お前って全然変わらねーのな。バニーは範疇外かよ?」
「君は普段の自分の露出量を考えなさいな。さして変わりませんよ。下品なのも、ね」
成程その通りだ。普段から腹も肩も腰もむき出しの自分を思い返して、ジャックは返す言葉を失った。
「……チェッ、高かったのに」
ため息を吐いて、衣装を見下ろすと途端に自分がとんでもなく馬鹿に思えて仕方がない。予定では、馬鹿にした事をこれでもかというくらい謝らせて、焦らして焦らして、散々焦らしてからいざ、となるはずだった。衣装よりは安かった真っ黒なバニー耳が少し下がり、ちょっと落ち込んだ気分に拍車をかけた。
「―――――ヘイジャック、」
いつもより少し高いところからかかる声に顔を上げる、その前に――――――
「ひぃあ!?」
ぐい、とカフスごと細い腕が引っ張られる。有無を言わさない少し強すぎるくらいの力に、ピンヒールの足元がよたついた。
「ああ、すみません」
「だひっ!わ、ちょ、ローズっ!?」
太ももが持ち上げられ、体がふわりと浮く。思わずローズの首にしがみつくと、そのまま鼻先にキスされる。ベッドに下ろされた途端、ジャックはライオンを前にしたウサギの気持ちがよくわかった。腕を抑えつけられ、頭上で纏め上げられれば、艶めかしいバニーガールの姿はオレンジ色の目の前に晒される。
「まあ、そういう予定でしたし、ジャック、」
「なっ、な、おま、全然これっぽっちもキョーミ無いんじゃ……」
「バニーガールというものに興味を持った事は、確かにありませんね。まあ、それは」
わざと、わざと、ニセモノのバニー耳に向かって、
「今日までの、話ですよ」
などとローズは囁く。ニセモノの耳のはずなのに、まるで自分の耳に繋がっているような痺れが伝わり、ジャックは目をぱちぱちさせた。
「昼の件はさておき、君に合わせて敢えて下品に言わせていただくなら、そそりますね?」
じっ、とローズの視線がジャックの全身に行き渡った。途端にさっきまでの挑発も、不機嫌だった記憶も忘れて、なんでこんな衣装をという行き場の無い羞恥が指先まで行き渡っていった。
「みっ、み、見るなよ、そんな……!!」
「なぜです?君から着てくれたじゃありませんか?……見れば見る程、艶めかしいですね」
「っ、ん!」
カタく、冷たい衣装ごしの胸に、優しくローズの手が触れる。下から寄せられた胸は、上の方に柔らかい脂肪が偏っていた。少し指で触るだけで、ふに、と柔らかさを主張する。つ、と、ローズの指がなぞると、すぐに谷間にぶつかり、指を挿入するとずるずると埋まっていく。見ているだけでも恥ずかしい光景なのに、目が逸らせない。そんなジャックの反応を楽しむように、谷間に埋まった指を増やし、ずるずるとローズは少し汗ばんだ乳房に触れていった。
「いつもの服や、全裸では、ここはあまり意識することがなかったですし、」
「お前、この、ムッツリ野郎……!!」
「心外です。まあ、君にはぴったりの衣装じゃないですか?」
「ひっ!?」
顔が近づき、すれ違って、ジャックの耳に息がかかる。蕩けるような息が耳に入っていく。熱い温度が触れられる筈のない場所を撫でていって、喉から嬌声があがった。
「ウサギは万年発情期、などという話もあります。こうして私を誘ってくる君らしくて、いいと思いますよ」
「さ、そってた、わけじゃ、ぁ、あ……」
「はいはい、」
「んッ!」
乳房ばかり触られ、耳を犯す息に疼いていた胸の突起に、ローズの指が僅かに触れる。いなすような、からかうような言葉にも反応できず、溶けていく思考に任せきりだった。
「あっあっ……!」
「悔しいですけど、可愛らしいですよ。ジャック」
カッチリとした形を保っていた付け襟とネクタイを外し、すっ、と喉を撫でると、ローズはそのまま健康的な肌色の喉に歯牙を突き立てた。本当にケモノになったようなローズの歯の冷たさに、舌と唇の熱。ジャックの身体は痺れ、ウサギのように震えた。
「か、わいいって……やめろ、ばか、ローズ……」
「それは無理な相談です。君が誘ってくれたのを、断るわけにはいきません」
唾液の音を聞かせるように立て、ローズの唇が喉に吸い付く。離れようとするジャックの肩を抑え、逃げないように腰を抱く。もうジャックの手は拘束されていなかった。が、別の見えないなにかで縛られ、痺れ、その手は震えるか、シーツを握りしめるしかできない。
猩々色に染まった喉を見下ろし、その痕をひとつ舐める。
「ん、っ……ろー、ず……」
食べられる。
早速、喉の痕から毒の様に広がる熱にあてられ、身体の性感帯はびくりびくりと反応を始めている。こうなってしまったら抑えられないし、手の施しようがない。もう、食べられるしかない。もう何度も重ねては、食べられてきているのに、いまだにこの鼓動は収まらない。
「ローズ、の、ばかぁ……」
「すみませんね、でも、大好きです」
悪びれもせずに、言葉だけ謝って、ローズが唇に舌をさし込む。徐々に深く、舌が入り込み、ぬるりと口の中を蹂躙されれば。身体だけではない、自身のすべてがメスに堕されそうな心地よさがジャックを犯していった。
「大好き、って……」
「嘘に聞こえます?」
「……そーゆーわけじゃ、ねー、けどよ……んっ……あ、ッ、ひ……!」
「大好きな君がそんな恰好をして煽ってくれば、まあ、応えたくなるものさ」
「は、ひっ!?」
指の細い手が、むき出しの背中を撫でて、フワフワの尻尾を楽しそうに弄る。思わずジャックがのけ反り、額がローズの肩に当たった。くすっ、と面白おかしそうに笑う声が耳に入り、さっきとは違う恥ずかしさで、ジャックの眉間に皺が寄る。フワフワの尻尾をゆるりと指で楽しみ、脚との境目をなぞる。静かに近づいてくる指に、強張っていく。くい、と指が合皮の衣装の中に入り込み、網タイツの感触を楽しむように行き交うのが、恥ずかしくってたまらない。
「あ、あ……この、すけべ……ッ、ん!」
なじった途端、指が唐突に淫核を掠めていった。大袈裟な程に反応したジャックに、また楽しそうな声が部屋に鳴る。
「下着、履いてませんね?」
「だっ、ばか……だって、こんな服じゃ、見えちまうだろ!それに俺はソーユー趣味はないっ!」
「……バニーガールは着るくせに」
「それはそれ!これはこれ!」
「はいはい。まあ、この方が、やりやすくっていいですよ」
「や、り……や……ろ、ぉず……!」
とろり、と蜜が指で絡み取られ、淫核に擦りつけられると、ローズが嬉しそうに笑っているのが、見なくてもわかる。ジャックの口の端からは、興奮と羞恥の唾液が零れ、合皮の衣装の内側は、汗ばんで僅かに湿っていた。
『ほんと、だ……』
ライオンに齧られたところから、ライオンに爪を立てられたところからじわじわと広がり、発情したウサギみたいになる。カリッ、と弾かれれば、声も出ない程の刺激に、濁音混じりの息が零れる。
「ぁ、く、っあ!?」
蕩けるナカに、指が一本挿しこまれ、曲げられる。痛みは全くないが、待ち望んでいたそれが唐突に来たのに思考が追いつかない。びくびくと震えるジャックの体を抱きしめ、ローズが少しだけ苦しそうな声で、
「痛いですか?」
などと言う。首を振りながら、口元を抑え、指を齧るジャックを見下ろし、ローズは唾を飲んだ。喉が動いたのを視界の隅に捉え、また焚き付けられる。
挿しこまれた指が、ぐりぐりと動き、数を増やし、拡げられ、その度にジャックの口からは激しい息が零れ、目に発情の涙が滲む。ぺろ、とその涙を舐め取り、そのままキスする。唇の切れ目から零れる喘ぎに、恥ずかしいなんて思う余裕もなくなってきた。
「ローズ、も、む……りっ……ローズ……ローズ……ぅ、あ、っひあ!あ、あ……」
「ヘイジャック――――いいです?」
ローズのはち切れそうな鼓動が胸越しに当たる。豊満な胸の向こうからも伝わる程のリズムに、色欲がまたずるずると剥かれていく。肩越しで、ローズの表情は見えない。余裕を損ねた声しか聞こえない。
「しょーが、ねーな……ローズ、」
精一杯に強がるも、自分も限界だ。いつの間にか、腕はローズの首に回され、必死に縋りついてしまっている。熱に浮かされて、うわ言みたいに喉が鳴る。
「ほしっ……い、ローズ……」
「……」
触れる熱が離れ、薄い布地を脱ぎ捨てる。張りつめた其れをジャックの網タイツ越しの脚に擦りつける合間、ブチッという少し不快な音が、どこかで聞こえた。
「ちゃんと、後で買います」
馬鹿みたいに真面目な台詞がローズらしく、思わず笑いそうになった。しかしそれも、破られた網タイツを押しのけ、衣装の局部をずらし、手探りで位置を確認され、あてがわれた熱を感じるまでに消えてしまう。
「っあ、あ、ぁ、は、ろー……ずぅ……っ……」
欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい。そんな言葉が纏わりついて、剥がれなくなる。愛液が満ちたところに突き立てられ、圧に押し広げられる感触に息が詰まる。
「はっ、あ、あ、ひ、っあ、ローズ、ろー……ずぅ……あ、ん!あ、だめ、ぁ、ら、っひあ!あ、ぁ……」
「ジャック、あつ、い……ですね……?」
馬鹿みたいに興奮していたのを指摘され、ナカがまた震える。固さを帯びたローズの其れをきゅぅ、と締めつけ、離さない。それを少し強引に押しのけ、奥へ、奥へと侵入していく。ぐり、と壁を擦る度に生々しい熱の交わりがまた、劣情を煽り、ジャックを喘がせた。
「あッ!あッ、ローズ!!そ、こっ……ひぐ、あ、あ、すご……あ、んん、あ!」
「可愛いウサギさんですね、ジャック」
ちょっと余裕ぶってはいるものの、ぐっ、と奥まで押し当てる力強さは少し乱暴で、ローズも本能に圧されているのが膣越しに全部感じ取れる。
「腹ン、中……ローズ、が、っ、あ、ん、んっ!き、っひ!あ!」
「……っ、ジャック……」
「ん!ッ、は……ろ、」
続けようと思った言葉は、口に摘み取られた。息を吸い込み、ようやく頭に血が巡っても、腹の中を犯す熱で焼き切られていく。いつものように行き交いはせず、ただただ奥にねじ込まれ、全身が抱かれる。
「は、あ、ろ、ぉず!!イ、っ、んんッ―――――!!」
身体がひと際大きく跳ねて、子宮口まで締まる。肉の壁の神経はローズの熱を捉え、触れ、また目眩を引き起こすような快感をジャックの脳裏に焼き付けていった。
「も、む……ろーず……あっつ……ぃい……」
「ジャック、」
熱い腕で抱かれ、ぼうっとするジャックの耳に、ぐちゅぐちゅという卑猥な音と名前を呼ぶローズの声が鳴った。
「ろー、ず……」
耳元に、少し荒い息が聞こえる。興奮の息の音に、また全身が痙攣する。
まだ、まだ。
恥なんて、もう、昼間から脱ぎ捨てていたじゃないか。
「ローズ、あ、もっと……」
引き留める羞恥の声なんて、もうとうに消えていた。震える細い腕で、ローズの頬を撫で、引き寄せて、キスする。舌の熱さにまた興奮し、高鳴りが止められない。揶揄するのも忘れて、舌を絡めて答える。
「すみませんね、」
「はっ、ひ!?」
ぐ、と身体が後ろ向きにされ、視界がシーツだけになる。ほんの少し不安になった瞬間、ひと筋、ピンク色の髪の毛が視界にあった。
その髪の持ち主は、乱れた髪をかき上げ、息を吐き、眼前に広がる光景を見渡した。汗ばんだ背中に、合皮の衣装。首筋は真っ赤で、きゅぅ、と不安げにカフスの先の手がシーツを握りしめている。むっちりとした肉づいたヒップは衣装から少し零れていて、フワフワのバニーに尻尾の下では、ずらされた局部の衣装と破れた網タイツの向こうの秘所に、自身がしっかりと突き刺さっていた。荒い息を吐く、口からピンク色の唾液交じりの舌が覗く。発情したウサギ、という言葉は本当にぴったりだった。
ずれたバニーの耳を軽く直しながら、ローズはくすり、と笑った。
「……中々、やらしい光景です」
「ばかぁ……」
唇をぺろ、と舐めて、その口が、名前を呼ぶ。
「ろーず」
なんて。
そうなるともう我慢はできない。
指輪のはまった右手の感触がジャックの腰に走り、ゆっくり、モノが引き抜かれる。と、
「あ、が、ひっ!!!?」
ずん、と重く中に打ち付けるように侵入してきた、その凶悪な熱。
「あ、ッひ!?ろーず、まっ、むり、だめ、ろーず!!」
「……すみ、ません」
正常位の時とは比べ物にならない程、深く入り込み、ゆっくり引き抜かれては、またジャックのナカの弱い部分を責め、それ以外を考えられなくさせる。
衣装の中に手を突っ込んで、乳首を抓られる。網タイツに覆われた太ももを愛しげに撫で、掴み、またローズが強く挿入すると、膣内の肉のヒダが摩擦し、熱さをいっそう強調してくる。喉が痛くなりそうな程喘げば、喉に唾液が絡んで、咳こんだ。いつもならローズが真っ先に心配して来るのに、一瞬腰を止めて、ジャックの喉に触れるだけ。余裕なんてものは脱ぎ捨てて、ジャックがウサギになっていたのと同じくらい、ローズもライオンになっていた。
「はッ、ひ!!?あ!!?」
ゴリッ、と音がしそうなほど、強く、ジャックの腹部側の壁に打ち付けられ、視界がばっと白くなっていく。
「だっ、ゃら、あ、あ、また、イッちゃう!!ローズ、ろー……もっ、ん、あっあ、あっひ!?あ!?ッんぅ、あ、あ゛、っはああ、あ、あ、も……ッ!!」
「好き、です……ジャック、ジャック……っ、ぁ、っく……!」
ぞくぞくとした強烈な快感の後を追うように、あくまで控えめなローズの喘ぎが、ジャックの耳に響く。腹の中にぶちまけられる確かな感触。濃く、べとついたナニカの正体はすぐわかり、イッたばかりの体が戦慄いた。
「気持ちひ、あ、あ、ローズ、すご、あ、っひ、ぃ!!あ、あ!!ら、ぁ……ッ~~!!」
とろとろ、としたそれが子宮に達すると、メスの悦楽が痺れとなって全身に迸る。ローズの髪の感触が背中に当たり、続けて、熱い頬が首筋に当たった。
「……っ、ジャック……」
「あ、あ……」
まだ、出ている。そういえばしばらくしていなかったような。どろどろの濃い、白に塗り潰され、ジャックの指からは力が抜けていった。
「で、いくらでした?」
「そんなクソ真面目な事言うの、お前くらいだろーな」
いつもの様にそのまま寝てしまう前に、たまにはやることをやっておこうなどと。あくびをしながら網タイツを脱いで、それをゴミ箱にさも当たり前のように捨てる。
「別にこんなん、とっとくもんでもねーし。買い直す必要もねーよ」
「おや、残念です。似合っていましたよ?」
「嬉しくもなんともねーからな、ローズ」
昼間にはあんなに貶すような顔をしていたくせに、と舌を出して、適当に椅子に散らかしておいたパンツを履いた。脚を上げると、中に残った軽い痛みが走り、ジャックは顔を顰めた。
「これに懲りて、昼間みたいな節操のない真似はおやめなさいな」
「んだよ。ヤローが冗談でバニーガール着るくらいいいじゃねーか」
「先に言った通りですよ。時と場所と場合をちゃんと選びなさい、という話です」
「じゃー、さっきのは時と場所と場合も、ぴったりだったってか?夜に、ローズの部屋で、ローズの前で」
「否定はしませんよ」
しれっと言う横顔が、ちょっと卑怯だ。
「バニーガール、少し疲れましたけれど、悪くなかったです」
「……素直にヨカッタデス、とか言えよ」
「君が調子に乗らないように、という配慮です」
「けっ。このムッツリスケベ」
そんな風に軽口をたたいて服を着て、床に脱ぎ捨てていたバニー服を跪いて回収した。ちょうど、ベッドに座っているローズの足元辺り。汗でちょっと湿っているのが生々しい。喜ぶならまた着てやっても、なんて思ってしまうのが我ながら少しだけ腹立たしかった。少し視線を上にあげれば、ローズと目が合う。視線を逸らしながら、ジャックは小さくぼやいた。
「……なー、ローズ」
「はい」
「お前さぁ、リアルにバニーガールのねーちゃんとか、見た事あんのかよ?」
「外国に行けば、場所に寄りますがいますね」
「……マジで?」
「その、『マジで』の意味が定かではありませんが、念のために。行けばちやほやしては貰えるでしょうね。君の英語力によりますけど。もうひとつ、」
ベッドの上に転がっていたバニー耳を、ジャックの頭に被せ、ローズの口元は微笑を描く。
「中身が、ジャック、君じゃなければ、意味がありません」
「……お前の方が、無節操じゃねーか」
「ご冗談を」
スカした顔しやがって。火が付いたイタズラ心の赴くまま、その手はローズの頬を抑える。
「ヘイローズ」
スカした顔は一転。
一瞬入り込む舌に、反応も出来ない。
「にししっ。どーだよ、ローズ?」
ぴょん、と跳び上がるように離れ、ぴこぴこと両手でウサギ耳を作って茶化してくる。これはどうも、応えなければいけないらしい。
「……君には敵いませんね?」
「間抜けなライオンちゃんに捕まるかよ、バーカ!」
「ほら、そこでじっとしていなさい、バニーちゃん?」
立ち上がるローズと目を合わせ、にやつくと、セクシーなバニーの脚が跳ねる。
「捕まえてみろよ、ローズ!」
「受けて立ちますよ、ジャック!」
歳も格好も忘れた追いかけっこが始まり、さて、ケモノの夜はまだまだ長いらしい。
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