碧ちゃんの話
10
「よし、掃除は明日やる!」
毎日は来ないのではなかったか、と思ったけれど敢えて口には出さない。
「ご馳走様」
返事の代わりに、味噌汁の最後の一口を飲み込んでからそう答えた。
「はい、お粗末様でした……って俺が作ったわけじゃない物に言って良いのかわからないけど」
「ううん美味しかったよ」
これは嘘でもお世辞でもない。味覚が鋭いとは到底言えない自分にでもわかる美味しさで、何よりも普段ならば他の子供達と遊んでいる筈の緑が、その時間を使ってこうしてわざわざ作ってくれたという気持ちが美味しさを増していた。
「でも、片手でも結構食べられるのな。食べにくいようなら手伝ってやろうと思ってたんだけど」
皿を重ねて台所に持って行こうとするのを緑に止められる。
それに素直に甘えることにして、自分の前の皿を緑の方へと押しやった。
「緑が片手でも食べやすい物を選んでくれたからだよ。ありがとう」
「ああ……いや、まぁ」
素直に礼を言われて恥ずかしくなったのだろう。受け取った皿の隣に自分が使った分を並べながら、緑は照れくさそうに笑った。
「まぁ、そういうわけでさ。今日はこれ見ようぜ」
そう言って、緑は両手に一つずつ、BDのケースを差し出して見せて来た。
その内のひとつはパッケージに数人の水着姿の女性が映っていて、タイトルは『新人王への道』になっている。そのタイトルとパッケージから見るに女子プロレス……つまり千恵理の関係の物だろう。
「これは……?」
空いている左手で、とりあえずそちらの方を受け取ってみた。
「千恵理の団体ってさ、一年以内にデビューした新人がその後の一年の成績とファン投票で選抜されて新人王の本戦に出られるってことになってるんだ。で、これは今年一年の参加者を紹介する奴」
よく見て見れば、表紙に映った五人程のレスラー達の中に、千恵理がいた。参加者が何人いるのかはわからないけれど、表紙を飾る五人の中に選ばれたという事は、千恵理は相当に期待されているのだろう。
「じゃあ、そっちは?」
手にしたBDを返してから、もうひとつに手を伸ばす。
そちらは本編の一場面らしい白黒の映像が印刷されたパッケージで、タイトルは『また春が来たら』。
緑の趣味を知っているわけではないけれど、どう見ても緑くらいの年齢の子供が見るような物には思えない。
「これ、婆」
そう言って緑は表紙に映った女性を指差しながら悪戯っぽく笑った。
「桜子さん……?」
そう聞いてよくよく見て見れば、確かにその女性は千恵理……いや、緑がそのくらいの年齢になったらこうなるだろう、という姿によく似ていた。
「女優だったのか」
高嶺の花、という印象はどうやらそのものだったらしい。
思い返して見れば、心当たる事もあった。齢を重ねても若々しく生気に満ちた容姿とその立ち居振る舞いは、他人から見られることに慣れ、他人にどう見せるのかということに慣れている様に見えた。
毎日は来ないのではなかったか、と思ったけれど敢えて口には出さない。
「ご馳走様」
返事の代わりに、味噌汁の最後の一口を飲み込んでからそう答えた。
「はい、お粗末様でした……って俺が作ったわけじゃない物に言って良いのかわからないけど」
「ううん美味しかったよ」
これは嘘でもお世辞でもない。味覚が鋭いとは到底言えない自分にでもわかる美味しさで、何よりも普段ならば他の子供達と遊んでいる筈の緑が、その時間を使ってこうしてわざわざ作ってくれたという気持ちが美味しさを増していた。
「でも、片手でも結構食べられるのな。食べにくいようなら手伝ってやろうと思ってたんだけど」
皿を重ねて台所に持って行こうとするのを緑に止められる。
それに素直に甘えることにして、自分の前の皿を緑の方へと押しやった。
「緑が片手でも食べやすい物を選んでくれたからだよ。ありがとう」
「ああ……いや、まぁ」
素直に礼を言われて恥ずかしくなったのだろう。受け取った皿の隣に自分が使った分を並べながら、緑は照れくさそうに笑った。
「まぁ、そういうわけでさ。今日はこれ見ようぜ」
そう言って、緑は両手に一つずつ、BDのケースを差し出して見せて来た。
その内のひとつはパッケージに数人の水着姿の女性が映っていて、タイトルは『新人王への道』になっている。そのタイトルとパッケージから見るに女子プロレス……つまり千恵理の関係の物だろう。
「これは……?」
空いている左手で、とりあえずそちらの方を受け取ってみた。
「千恵理の団体ってさ、一年以内にデビューした新人がその後の一年の成績とファン投票で選抜されて新人王の本戦に出られるってことになってるんだ。で、これは今年一年の参加者を紹介する奴」
よく見て見れば、表紙に映った五人程のレスラー達の中に、千恵理がいた。参加者が何人いるのかはわからないけれど、表紙を飾る五人の中に選ばれたという事は、千恵理は相当に期待されているのだろう。
「じゃあ、そっちは?」
手にしたBDを返してから、もうひとつに手を伸ばす。
そちらは本編の一場面らしい白黒の映像が印刷されたパッケージで、タイトルは『また春が来たら』。
緑の趣味を知っているわけではないけれど、どう見ても緑くらいの年齢の子供が見るような物には思えない。
「これ、婆」
そう言って緑は表紙に映った女性を指差しながら悪戯っぽく笑った。
「桜子さん……?」
そう聞いてよくよく見て見れば、確かにその女性は千恵理……いや、緑がそのくらいの年齢になったらこうなるだろう、という姿によく似ていた。
「女優だったのか」
高嶺の花、という印象はどうやらそのものだったらしい。
思い返して見れば、心当たる事もあった。齢を重ねても若々しく生気に満ちた容姿とその立ち居振る舞いは、他人から見られることに慣れ、他人にどう見せるのかということに慣れている様に見えた。
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プロフィール
- 名前
- 未田 尚(まだ なお)
- 通称
- にゃー
- お仕事募集ちう。
- 文章を書く関係ならなんでも。
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