碧ちゃんの話
9 小岩井 千恵理
1
子供は夢を見て育つべきだと思う。
程度や限度はあるけれど、現実の痛さやつらさを知るのは大人になってからで充分だ。
夢を見るというのは天井の高さを決める事だと思う。
人生において、どれだけの高みを目指すのか、それを決める第一段階が子供の頃の夢なのだから。
勿論、夢を見さえすれば全て叶うなんてことはあり得ない。大人になって家を出て、空の高さを知った時に自分の手の長さとの違いに絶望する事もあるかもしれない。でも、それを不満に思って背伸びして高く高く手を伸ばす事が出来るのは、夢という今の自分には手の届かない高い場所にある物を知っているからだろう。
知っている天井が低いからこそ、そこから解き放たれた時に高い空に憧れるということもあるのかもしれない。けれど高みに手を伸ばすという結果が同じなのであれば、低い天井に押しつぶされて藻掻く子供などいない方が良いに決まっている。
子供にとっては家が全てだ。
壁に囲まれ天井に覆われた家の中。
井の中で守られて生きる蛙が大海を知らないのは当然の事だ。だからこそ碧い空の高さを、そこまでではないにしても高い天井を眺めて育つことが必要なのだと思う。
当然、家の中で育つ子供に夢を見させられるのは親だ。
それが夢に限らずどんなものであれ、子供に最も影響を与えるのは、言うまでもなく親だ。
その背中が広ければその大きさに憧れ夢を見て、高い天井で伸び伸びと育つだろう。
子供を押さえつける親の元で育てば、低い天井に押しつぶされて立ち上がる事も出来ずに藻掻いて育つことになるだろう。
お互いを尊重し合う仲睦まじい両親の元で育てば、いずれ自分にも訪れる恋愛という物に憧れ、結婚という物に夢を見るだろう。
夫婦喧嘩の絶えない両親の元で育てば、恋愛という物に希望を持てず、結婚という物に夢を見る事が出来なくなるだろう。
これが人を好きになるということの末路だという現実を、日常的に人生と同じだけの時間見せつけられ続けて、他人との関わりに夢を持てるわけがない。
その子供はどんな気持ちで、それを見るのだろうか。
思い出そうとしてもよくわからない。何も出来ずにただ泣きじゃくっていたのか、それともそういうものだとしか思わずに冷めた目で見ていたのか。
特別な物とは思っていなかったから覚えていないのか、覚えていたくない嫌な事だから記憶から消してしまったのか。
どちらだったとしても、どうでもいい事だった事だけは確かだった。
勿論それが子供の狭い視野の中で見た物事の一側面でしかない事は、成長して経験を重ねて行けばわかるのだけれど、まだそんなことがわかるわけがない子供にとっては、それが真実だ。
そして三つ子の魂という様に、心の奥に刻み込まれた物はいつまで経っても消えるものではない。
それが決して唯一の正解ではないのだと知っても、その上に砂を撒いて見えなくすることしか出来ない。
大人になってから知った知識などは、その上に建てた砂上の楼閣でしかなく、何かあれば表面を覆う砂は剥がれて下地が露になり、容易に崩れ去る。
そうならない為には、常にそんなことはないと自分に言い聞かせ修復し補強し続けるしかない。
根本から直すことは出来ない。取り繕い、修正し続ける事しか出来ない。
だから、子供は夢を見て育つべきだと思う。夢を見せて育てるべきだと思う。
世界のつらい事や醜い物を出来るだけ、見せずに、守って育てるべきだと思う。
自分のようにならない為に。
なんて、そんな自分にはなんの関係もないどうでもいい事を思いながら、空を見上げてみる。
それに憧れる様な純粋な心もそれに向かって伸ばす手も、生まれて此の方持ち合わせてはいないけれど、ただその碧色は、とても綺麗だった。
程度や限度はあるけれど、現実の痛さやつらさを知るのは大人になってからで充分だ。
夢を見るというのは天井の高さを決める事だと思う。
人生において、どれだけの高みを目指すのか、それを決める第一段階が子供の頃の夢なのだから。
勿論、夢を見さえすれば全て叶うなんてことはあり得ない。大人になって家を出て、空の高さを知った時に自分の手の長さとの違いに絶望する事もあるかもしれない。でも、それを不満に思って背伸びして高く高く手を伸ばす事が出来るのは、夢という今の自分には手の届かない高い場所にある物を知っているからだろう。
知っている天井が低いからこそ、そこから解き放たれた時に高い空に憧れるということもあるのかもしれない。けれど高みに手を伸ばすという結果が同じなのであれば、低い天井に押しつぶされて藻掻く子供などいない方が良いに決まっている。
子供にとっては家が全てだ。
壁に囲まれ天井に覆われた家の中。
井の中で守られて生きる蛙が大海を知らないのは当然の事だ。だからこそ碧い空の高さを、そこまでではないにしても高い天井を眺めて育つことが必要なのだと思う。
当然、家の中で育つ子供に夢を見させられるのは親だ。
それが夢に限らずどんなものであれ、子供に最も影響を与えるのは、言うまでもなく親だ。
その背中が広ければその大きさに憧れ夢を見て、高い天井で伸び伸びと育つだろう。
子供を押さえつける親の元で育てば、低い天井に押しつぶされて立ち上がる事も出来ずに藻掻いて育つことになるだろう。
お互いを尊重し合う仲睦まじい両親の元で育てば、いずれ自分にも訪れる恋愛という物に憧れ、結婚という物に夢を見るだろう。
夫婦喧嘩の絶えない両親の元で育てば、恋愛という物に希望を持てず、結婚という物に夢を見る事が出来なくなるだろう。
これが人を好きになるということの末路だという現実を、日常的に人生と同じだけの時間見せつけられ続けて、他人との関わりに夢を持てるわけがない。
その子供はどんな気持ちで、それを見るのだろうか。
思い出そうとしてもよくわからない。何も出来ずにただ泣きじゃくっていたのか、それともそういうものだとしか思わずに冷めた目で見ていたのか。
特別な物とは思っていなかったから覚えていないのか、覚えていたくない嫌な事だから記憶から消してしまったのか。
どちらだったとしても、どうでもいい事だった事だけは確かだった。
勿論それが子供の狭い視野の中で見た物事の一側面でしかない事は、成長して経験を重ねて行けばわかるのだけれど、まだそんなことがわかるわけがない子供にとっては、それが真実だ。
そして三つ子の魂という様に、心の奥に刻み込まれた物はいつまで経っても消えるものではない。
それが決して唯一の正解ではないのだと知っても、その上に砂を撒いて見えなくすることしか出来ない。
大人になってから知った知識などは、その上に建てた砂上の楼閣でしかなく、何かあれば表面を覆う砂は剥がれて下地が露になり、容易に崩れ去る。
そうならない為には、常にそんなことはないと自分に言い聞かせ修復し補強し続けるしかない。
根本から直すことは出来ない。取り繕い、修正し続ける事しか出来ない。
だから、子供は夢を見て育つべきだと思う。夢を見せて育てるべきだと思う。
世界のつらい事や醜い物を出来るだけ、見せずに、守って育てるべきだと思う。
自分のようにならない為に。
なんて、そんな自分にはなんの関係もないどうでもいい事を思いながら、空を見上げてみる。
それに憧れる様な純粋な心もそれに向かって伸ばす手も、生まれて此の方持ち合わせてはいないけれど、ただその碧色は、とても綺麗だった。
75/84
- アクセス数

- ページビュー数

プロフィール
- 名前
- 未田 尚(まだ なお)
- 通称
- にゃー
- お仕事募集ちう。
- 文章を書く関係ならなんでも。
連絡は「お問合せ」まで。
携帯用QRコード