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まい★まり ― 二人の絆 ― 第二話


 第二話 気まずい空間

 何とか振り切った様だ。
やつの姿はもう見えない。
手に持っていた地図を頼りに新しいマイホームへと向かう。
あまりにも長時間走り続け、喉が渇いた所に丁度良く全品百円の自動販売機。
まるでこうなる事をこの町は知っていたのか。
いやそれよりこの自動販売機を設置した一生知ることも無い人に感謝と
してやられた感を持ちつつ財布を取り出そうとした。
その時、俺は重大な事に気付く。
「か、かばん、駅のホームに忘れた……」
薄暗くなりつつある夕暮れ時、自動販売機のやさしい光が俺を包み込む。
いやいや、そんなこと感じてる場合じゃない。
俺は足のつま先から頭までこみ上げる思いを大声で叫ぶ。
「俺のーさーいーふーがーーーー!!」
電線に一休みしていたカラス達が一斉に声を鳴らしながら飛び出す。
俺は走り続けた体力的な疲れと精神的な苦痛に耐え切れずその場に倒れこんだ。
「ちょ、ちょっとー! 大丈夫なの!?」
誰かの声が俺の意識のなくなる寸前に聞こえた気がした。

 ドアが閉まる音で気がつくと、そこはダンボールだらけの部屋だった。
ここは何処だろう。俺は誰なんだ。
しばらくぼぉーっとしていると今まで起きた事件の数々が脳裏に過ぎる。
「や、やめてくれー」
頭を抑えてもがいても誰も反応がない。
ようやく正気を取り戻した俺はとりあえず部屋を出てみる。
すると足元に一枚の紙が落ちていた。

『いきなりぶっ倒れるとかまじやめてよね……
とりあえず晩飯買いに行くから部屋の整理しときなさいよね!
あとカバン忘れてたでしょ!
しっかりしなさいよね!
部屋に置いといたからねー!
それじゃいってきます!
麻衣より』

 紙を手に取り読むと大体何が起きたのかを理解した。
一人しかいない玄関で俺は不適な笑みを浮かべた。
とりあえず部屋に戻りまたベットに寝転ぶ。
おそらくさっきのドアが閉まる音は買い物に出かけたのだろう。
人の気配がないことから俺しか今この家にはいない。
これから本当に二人が住み着くと言うことは一人の時間と言うものは
そう多くは無いだろう。
今がチャンスと俺は十二個あるダンボールから開けるな危険と書かれたダンボールの封を開ける。
その中身は俺が厳選に厳選を重ねた秘蔵のエッチな本だった。
一冊の本のために石を大量に詰めて重さ的にばれない様にした。
一人暮らしなのだからここまで隠蔽する必要は無かったのだが、
もし引越しする時に中身がほとんど入っていないと開けられたら尺だと思ってした結果、
結局やつらが住み着くと言う大事件に発展して余計安心だ。
俺はベットの横にあったカバンからポケットティッシュを取り出した。
これで準備万端!
俺は最近引越しの作業が忙しく、なかなか出来なかった行為を始める。

「ごめーん。財布忘れちゃったわー。人に言っといてねー。
 あんたもう生き返ったのー?」
真剣になりすぎて俺は麻衣の声が聞こえない。
「入るわよー」
突然ドアが開いた。
その時俺は麻衣が帰って来た事にようやく気付いた。
「「あ……」」
俺は何とも無防備じゃ状態だった。
俺は慌てて掛け布団を体に巻いたが時すでに遅しだ。
すべてを見られてしまった。
慌てて投げ捨てた本は宙に舞い、あらぬ格好をしたナイスバディなお姉さんのページが開いた状態で落ちた。
麻衣は何も言わず、何事も無かったように部屋から出て行った。
しばらくしてまた玄関が閉まる音がした。
引越しして初日、もっとも最低な状態から共同生活がスタートする。

 気分的に失せてしまった俺はとりあえず無我夢中で部屋の掃除に取り掛かる。
あの本は俺の一番の宝物だったが使わなかったティッシュと共に黒い袋に包みゴミ箱へ捨てた。
ダンボールを畳みながら段々と部屋が片付いていく。
だが俺の脳裏にはもう麻衣の事しか考えられない。
麻里に言ってないだろうか。
もし言っていたらあいつの事だ。
ずっと軽蔑され続けるだろう。
もう何もかも捨てて逃げてやろうか。
その時玄関の開く音がした。
もう逃げられない。
この際お金を貯めるまで我慢してこの家から逃げ出そう。
それしかない。
二回ノックして俺の部屋のドアが開く。
入ってきたのは麻里だった。
「よかった、元気になったんですね。
 今お姉ちゃんがご飯作るからちょっと待っててくださいね」
「あ、ああ……」
対応からして麻里には言ってないみたいだ。
俺は一安心する。

 とりあえず一通り掃除も終わり、ベットで一段落してると麻里が現れた。
「ご飯出来たみたいなんでリビングに来てください」
「ああ」
俺は立ち上がり奥のリビングへ向かう。
「今日は初日だし、ちょっと奮発しちゃった。あとで食費は徴収するからね!」
リビングには木製の椅子が三つ、少し大きめのテーブルが置いてあった。
俺はそっと腰掛ける。
麻衣は気にしていないのか。
全くいつもと同じ麻衣だった。
俺は何も言えぬまま目の前に置かれたシーザーサラダを摘む。
「う、うま……」
お店で売ってる元と比較しても断然こっちの方がおいしい。
「当たり前でしょ!? これでも三年間家庭科クラブやってたんだから」
麻衣は自信満々である。
「意外だよなぁ……麻里ならまだしも……あ!!」
俺はまた口にしてはいけない言葉を発してしまった。
無意識のうちに俺は防御体制、そしていつでも部屋へ戻れるように逃げの構えをした。
「まぁ自分でも気持ち悪いけどねー」
「え!?」
麻衣が襲い掛かってこない。
どうしたんだ!!
一体何があったんだ。
やっぱりさっきの事を気にしてるのか。
それともこの晩御飯代を全額徴収、もしくは上乗せして徴収されるのか。
麻衣の視線と俺の視線の葛藤。
無言の死闘が今繰り広げられてる。
「お姉ちゃんのご飯本当においしいです」
この死闘に気付いているが和ませようとしているのか。
それとも全然気付いてないのか。
麻里はずっとおいしそうにご飯を食べ続けている。


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