test2-6
中編1 - 到着 -
しばらく道なりに進みと大きな広場に出た。
そこはまるで大きなキャンプ場を思わせるような中心に大きな焚き木場があり、奥には長く並んだ炊事場がある。
そしてもっとその奥、木々の向こうには中世のヨーロッパを思わせるような城が聳え立っていた。
「す、すげぇなぁ……」
平井は思わず口から言葉がこぼれてしまった。
「すごいすごいー!!」
ゆいはまるで小学生か幼稚園児のように走り回っている。
「それでは私は一旦準備がありますので別荘へ向かいます。失礼しますわ」
姫神は城の方へと歩いていく。
「姫神先輩、私も手伝います」
小林が後を追う。
「いいんですよ。お手伝いさんなら足りてますから。皆さんで楽しんでらしてください」
「は、はぁ……」
妙に納得した小林は申し訳なさそうに皆のところへ戻っていく。
姫神は準備のために別荘へと向かっていた。
「美佳子、ちょっといいかな?」
遠くのほうで突然黒いスーツを着た男が姫神を引き止める。
「お、お父様! どうしてこちらへ!?」
見られたくないものを見られてしまったように姫神は驚きを隠せない。
「言ってあったと思うが美佳子達全員は監視状態にある。美佳子は自分で何をしているのかわかっているのかな?」
一歩ずつ姫神に近づく父親に姫神の足が段々と震え上がってきた。
「私は……私は……」
言葉が見つからない姫神は、ただ俯く事しか出来なかった。
「お前の気持ちはわかる。ターゲットは完全に記憶を無くしているんだぞ? こんな事をしても何も生まれない。
返ってゲーム進行を促進する恐れだってある。それは美佳子にとっても望んでいる事ではないはずだったんだがな」
姫神は今にも泣き出しそうにただその場に立ち竦んでいた。
「全部分かってますわ……分かってはいるんですけども……」
姫神の父は姫神の肩をぽんっと優しく叩いた。
「やっぱり美佳子にはまだ早かったんだな。シャドウとの規則もあるし抜けさせるわけにはいかないがもうしばらく頑張ってくれ!」
姫神は耐え切れずその場に座り込んでしまった。
「は、はい……わかりました……」
父は一つため息をついて来た道を帰っていく。
「せっかく始まってしまったんだ。気の済むままに楽しんだらどうだ?
私はいろいろと忙しいので一緒には居られないがずっと見守っているからな!」
三角座りで頭を埋めていた姫神が一瞬前を見ると父が手を振る後姿が見えた。
その頃、平井達はずっと姫神を待っていた。
「なんか姫神さん遅くないですか?」
皆でさっきまで鬼ごっこやらかくれんぼやらと姫神が来るまで遊び続けていたが
さすがに疲れたのでゆい以外の皆は丸太で出来た椅子の上で休憩していた。
「たしかに。時間は?」
平井がそう言うと北島が携帯電話を取り出した。
「今二時半だからもう四時間近く帰ってきてないみたい」
すぐ終わると言っていたのにもかかわらず四時間はかかり過ぎな気がしていた。
「またどっかでこけてるのかも知れねえな。俺見てくるよ」
平井が立ち上がり姫神の行った方向へと歩き始めた。
「平井君、たしかに別荘は見えてるけど行き道分からないでしょ? ここで待ってたほうがいいかも。
一応林道だし迷ったら危ないよ」
小林がそう言って立ち上がり後を追う。
「なんか大丈夫な気がするんだ。何故かは分からないけどすぐ帰ってくるから大丈夫だって」
小林の制止も聞かず平井は辛うじて道と言えるような林の中を歩いていく。
「あれ、道が二つに別れてるぞ……」
大丈夫と言ったものの来た事も無いのに分かるはずが無い。
「うーん……なんか右な気がするな」
平井は右の道を選んだ。
別荘が見える方角的には左に行くのが妥当なのだが神の声でも聞こえているように感覚で突き進んでいく。
「ん、誰かいる!」
平井は道のど真ん中で座っている一人の女性を発見した。
「もしかして……姫神か?」
三角座りの女性は驚いたように立ち上がる。
「なんで……なんでなの……」
目と鼻が真っ赤に腫れ上がっており、平井は泣いていたんだと察した。
「お、おい。大丈夫なのか?」
まさかの展開に平井はどうしていいか分からなくなってしまった。
「何で来るのよ……どうして!!」
そして突然怒り出した姫神。
怒っているのは見慣れていた平井もいつもと違う感じに動揺を隠せない。
「な、何でって皆遅いから心配してたんだぞ! 一応招待してもらった側だから分からなくて見に来たんだよ」
姫神はずっとその事を忘れていた。
「そ、そうでしたわね……」
そう一言つぶやいて姫神は別荘のほうへゆっくりと歩いていった。
「お、おい。本当に大丈夫なのか?」
いつもと様子の違う姫神にそれ以上掛ける言葉が見つからなかった。
「大丈夫です。準備はもう出来てると思いますので先ほどの広場で待っていてください」
日も暮れ始め、夕焼けの太陽の光が姫神の背中を優しく照らしている。
そのまま振り返る事もせず、姫神は奥へと歩いていく。
やはり姫神は元気が無い様子だった。
戻れと言われたら戻るしかなかった平井は皆のところに戻っていく。
「姫神先輩は大丈夫だったの?」
小林が平井の元に駆けつけるが、言って良いのか悪いのかわからなかった平井ははぐらかす。
「ま、まぁ……準備がちょっと思ったより時間かかってしまったらしいからさ」
平井は意味も分からないまま嘘をついた。
「ごめんなさい、遅くなってしまいました」
平井が振り返ると、そこにはいつもと変わらない姫神がいた。
「遅い遅いー。ゆいお腹ぺこぺこなのにー!!」
飯の事しか考えてなかったのか、ゆいは怒りを姫神にぶつけた。
「ごめんなさい。もうこんな時間になってしまったので夕食を用意しました。こちらへどうぞ」
そう言った後、姫神は平井をちらっと見て微笑んだ。
平井がはぐらかしてくれた事に対しての感謝なのか、それともさっきの事は言うなと言う
合図なのか平井には分からなかったが、とりあえず両方の意味を込めていると解釈した。
しばらく姫神の後を着いていくと、遠くから見えていた小さな城が
もう視界すべてには抑えられないほどの距離まで近づいてきた。
「こちらへどうぞ」
敵が攻めてくるはずも無いが巨大な門が聳え立っていた。
雇われている男性右三人左三人と六人がかりで力ずくで門をこじ開ける。
完全に圧倒されまくった皆は口がただ開けっ放しになってしまう状態だった。
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