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test2-4


第七話 テスト当日

ついに始まったテスト当日。
クラス全員が席に着き、一時間目の数学に向けて教科書やノートにしがみついている。
当然、平井と小林も同様だ。
チャイムと共に先生が来て、テスト用紙を配り始める。
平井は一時間目に一番苦手だった数学に少し焦っていたが、姫神に教えてもらった内容を再確認してテストに望んだ。

二時間目に現国、三時間目に歴史、四時間目に家庭科とテストは勉強した時間とは比べ物にならないぐらいにあっさり終わってしまった。
テストも終わり、皆は図書室に集まった。
「どうだったのよ西野、あんたが一番怖いんだけど……」
相変わらず北島は竜也には厳しいようだ。
「何とか……かも」
竜也はあまり自信が無いようだ。
「俺もギリギリ六十点あればいいかなってぐらいだった……」
平井と竜也は同時にため息を着いた。
「テストはあと三日だよね。結果が来週の月曜だから頑張ろうね!」
小林は二人を励ました。
「そうだな。せっかくここまで頑張ったんだしな」
平井は何とか元気を取り戻したようだ。
「俺も……ゆいのために!!」
一人だけ目的を完全に忘れていた竜也だった。

四日間に渡るテスト期間も終わり、土日を挟んで月曜日。すべてのテストの結果が発表された。
その日、皆は図書室にまた集まった。
「それでどうだったのよ! 当然私は全部七十点以上! 天才ね私って!!」
北島は万弁の笑みで語っている。
「お、俺さ。古典だけ怖くて見てないんだ……平井はどうだったんだよ」
竜也は古典のテスト用紙だけ、点数の書かれた部分を折り曲げていた。
「俺はまじでギリギリだったよ。数学なんて六十二点だったんだぜ!!」
平井は何とかすべて合格したようだ。
小林はとても嬉しがっているようだ。
「ちょっと見せなさいよ!」
北島は竜也の古典のテスト用紙を奪い取った。
「俺は怖くて見れないよ……」
その時、ちょうど姫神が図書室にやって来た。
「皆さん、テストの結果はどうだったんですか?」
「西野以外は全員合格しました! でも西野の古典の点数だけがまだ見てないんです」 
北島は一桁台から少しずつ折れた部分を捲って見た。
一桁台は九点と書かれていた。
「あんた六十九点も取れてるんでしょうね!」
その時ゆいもちょうど図書室に現れた。
「みんなどうだったの!?」
「あんたの兄貴がこの古典の点数が六十九点以上じゃなかったら死刑って所よ」
ゆいは力強く竜也を睨み付けた。
「もし六十九点未満だったらもう口すら聞かないからね!!」
「そ、そんなぁ……」
皆が注目する中、北島はゆっくり紙を捲った。
そこには大きく五と書かれていた。
「……」
図書室の空気が一気に重くなる。
それを見た竜也は逃げるかのように図書室から去っていった。
「あと一点……」
平井も思わずそうつぶやいてしまった。
その時、姫神は北島からテスト用紙を奪って中を確認し始めた。
「ちょっと待ってて下さい!!」
そう言って姫神は図書室を走って出て行った。
「どうしたんだろ姫神のやつ」
平井達はしばらく椅子に座り込んでいた。

数十分後、姫神が図書室に帰ってきた。
「明日良いお知らせが先生からあると思いますわ。楽しみにしててくださいね!」
姫神はドア越しにそう言い残し、帰っていった。
「まぁ……何か明日になったらあるらしいし、今日は帰ろうか」
皆はそのまま家に帰ることにした。

次の日、いつものように学校に向かう。
そしていつものように予鈴が鳴り、全員が席に着く。
川原先生が教壇の上に立つ。
咳払いを一つついて話し始めた。
「えっと、今日は朝礼の前にテストの事で変更があったので伝えます」
川原先生は黒板に白のチョークで何かを書き始めた。
その時、平井は昨日姫神が言い残した言葉を思い出した。
「この事かぁ」
平井は誰にも聞こえないぐらいの小声でつぶやいた。
川原先生は書き終わったようで、チョークを黒板の下に置いた。
「えっと、黒板に書いた通り、古典の問題五の選択問題で誤りがあった。
実際には該当する答えが一問しかないのにも関わらず、解答欄が二問あった。
これに伴い、記号『ヘ』を選んだ者は実際には丸がされているが、不正解とし、
記号『ロ』を選んだ者を一問一点の所を二点とする。
テストの解答内容に関してはこちらで把握しているのでテストの再回収は行わない。
以上だ。古典の先生の飯田先生は本当に申し訳なかったと言っておられる。
なので点数が下がったからと言って文句言わないように!
それでは出席を取るぞ。相本!」
ここからは何ら変わらない普通の授業が始まった。
姫神が言ったぐらいだからこれでたぶん竜也の点数が上がって六十点になったのだろうと平井は核心した。

その日の昼休み、大喜びで竜也が来ると思っていた平井だが、何故か竜也の顔はものすごく腫れ上がり、顔中痣だらけになっていた。
「お、おい竜也! その顔どうしたんだよ!!」
平井は思わず竜也の元へ駆け寄る。
「そ、それは言えない……言ったら……言ったら……」
竜也の体は少し震えていた。
「いいから言えよ! 俺が仕返ししてやるから。誰なんだ!?」
その時、ちょうど北島と小海も教室にやって来た。
「よかったわね! 西野六十点以上取れてさ。私点数下がっちゃって目標達成出来なかったけどさ!!」
北島の声が竜也の耳の中に入ると、自動的に竜也の振るえは加速していった。
「た、た、た……たすけとぇぇぇ~~~」
竜也はどこに向かったが分からないが一目散に逃げていった。
平井は何となく想像出来たが、自分の身も危険になると察して何も言えなかった。
「どうしたのかな? 何で西野逃げちゃうんだろ」
平井はこの女は警戒するべきと脳に刻みつけた。
「あ、そうだ聡君。今日の放課後姫神さんが図書室に来てだってさ。小林さんはいないのかな? ついでに伝えといてね!
じゃあねぇ~」
「あ、ああ」
北島はそのまま自分の教室へと帰っていった。
「失礼します」
その後ろを大前が追う。

教室に帰って来た小林に用を伝え、放課後に姫神以外の皆が図書室に集まった。
テスト明けと言う事もあり、数日前までにはいた人達も今日は姿が見えない。
半ば貸しきり状態である。
「俺、今日から体鍛える事にする……」
さっき逃げ出した竜也は意味不明な発言をしている。
だが平井と北島、そしてたぶん小海は何となく想像はついているだろう。
そして最後に姫神が登場し、主役は全員そろった。
言うまでもないが、ゆいはちゃんと平井の横を占領している。
「さてと、みんな七十点以上取れましたので、約束通り別荘にご案内して差し上げますわ」
姫神はちょっと気分が良さそうである。
北島と小海以外、姫神はいつも怒っているイメージがあるので少し気味悪がった。
姫神は一枚のプリントを皆に配った。
プリントには集合日時、場所などが事細かに書かれたまるで遠足のしおりみたいである。
生徒会での癖なのだろうか。いつも学校で配られている生徒会からのお知らせのプリントとほとんど変わらない。
「八月の初日ですかー。ちょうど平日だしバイトも休みもらえそうで良かった!」
北島は早くも別荘で焼肉でも食べている妄想をしているかと思わせるほど幸せそうな顔をしている。
「どうせうまい飯でも食べてる妄想でもしてるんじゃないか? あいつ飯食ってる時あんな顔してるしな」
竜也が平井の耳元で北島に聞こえないようにと囁いたが平井は声のボリュームから察して聞こえている可能性を示唆した。
平井が北島を見ると、北島はまるで天空から一筋に舞い落ちる稲妻のように、力強く、そして見た者を
金縛りにしてしまうほどの能力を持つその鋭い眼差し。
関係のない平井までもビビらせてしまうほどだ。
竜也は北島の方を見てはいなかったが、殺気を感じたんだろうか。それ以降は全く触れなかった。

特別編一話 ゆいの夏休み大作戦!!

それは夏休みを目前に控えた図書室での事である。
「あ~あ、平井先輩達も来なくなったし暇だなー」
ゆいは図書室の受付で椅子に座りながら、暇さをアピールするかのように足をブラブラを躍らせていた。
「もう期末も終わっちゃったもんね。平井先輩とお兄さんはクラブで忙しそうだし」
小梅はゆいほど暇をアピールすることはないが、やはりかなり広めの図書室に数人の外で遊ぶなんてまずしなさそうな
連中がいるだけの部屋でずっと来る事もない本を借りる人を待つのは、さすがに暇なのであろう。
「って言うか平井先輩はともかくお兄ちゃんって言うのやめてくれない! 虫唾が走るわ!!」
小梅はゆいが兄の事を嫌っているのは半ば分かっていたが、これほどまでに嫌いなのかと改めて実感した。
「ま、まぁそれはそれで……そう言えばゆいちゃん一日に姫神先輩の別荘に遊びに行くんだって?」
小梅の一言でゆいは一気にテンションが上がり、いきなり椅子から立ち上がった。
「そうなのよ!! いらないお荷物がいるけど平井先輩との始めての旅行よ!! 何着ていこうかな、楽しみだー」
「そ、そう。良かったわね」
ゆいの高テンションに小梅はついていけない。
「ああ!!」
いきなりゆいは何かを思い出すようにしょんぼりと椅子に座り込んだ。
「ど、どうしたの!?」
「夏休みの宿題が……この学校は他校より少なめって聞いてたけど。はぁ……」
ゆいはひとつため息をついた。
小梅はこのテンションのギャップに少し面白さを感じた。
「良かったら一緒に宿題する? いつもお姉ちゃんと二人っきりだったしさ」
またまたゆいは椅子から急に立ち上がった。
小梅は驚いて椅子から倒れそうになった。
「よろしくお願いします!!」
ゆいは深く頭を下げた。

七月二十八日、ゆいは小梅と一緒に勉強するため、もらった地図を頼りに大前家へと向かった。
「結構遠いんだ、小梅ちゃんの家って」
電車で通っていると前に聞いた事があったものの、大前家から学校の最寄の駅からは五つほどある。
ゆいは電車から降り、地図を見ながら歩き始める。
「うわぁ、こんな所にでっかい屋敷があるよ。こんなの映画やドラマでしか見たことなかったけどやっぱりすごいなぁ。
周りにも高級そうな家ばかりだしこんな所に住んでるんだ小梅ちゃんって」
地図に書かれた通りにたどり着いた場所は、ゆいが最初に見たでっかい屋敷だった。
「こ、ここなんだ……」
たしかに表札には大前と書かれていた。
ゆいは緊張しながらも呼び鈴を押した。
「ゆいさんですね。お待ちしておりました」
「な、何でわかるんだ!?」
ゆいは周りをキョロキョロと見回すと、入り口の門の上に監視カメラが仕掛けられていた。
「す、すげぇ……」
ゆいは自分の住む団地を思い出し、寂しさでいっぱいになった。
しばらくして門が自動で開き、その先には小海が待っていた。
「ゆいさんお久しぶりです」
小海は背中を斜め四十五度に傾けた。
それにつられてゆいをお辞儀をする。
「ごめんなさい、連絡しようと思ったのですが生憎お電話番号が分からなかったので連絡できませんでした。
小梅が昨日急に熱を出してしまって寝込んでしまったのです」
「そ、そうなの!?」
ゆいは思いも知らなかった展開になってあたふたする。
「小梅からは私がゆいさんの宿題を見てあげてと申し付かっております。ゆいさんが宜しければと」
ゆいはせっかくここまで来たのもあり、小海に宿題を見てもらうことにした。
「そ、それじゃお願いします!」
「はい、それでは中へどうぞ」
小海に連れられ、ゆいは大前家の中へ向かった。

変な顔をした大きな狸の焼き物がゆいを優しく出迎えてくれた。
豪勢な玄関を抜け、長い廊下をひたすら歩くと、どうやら客間らしき所へ着いたようだ。
「この中で待っていて下さい。私は冷たい麦茶をお持ちいたします」
小海はそのまま来た道を引き返した。
恐る恐るふすまを開けると、そこには大きく何メートルと続いている長い机が置かれたとても広い部屋だった。
「こ、ここだけでも家全体より広い……」
ゆいは何故か絶望感を覚えた。
とりあえず適当な場所に座り、持ってきた教科書と宿題のプリントを広げた。
「よし! せっかくだから少しずつでもやろうっと」
ゆいは一番手前にあった数学を取り出した。
そして第一問の問い一がもうすでにわからず挫折するのであった。
「数学は後回しでっと……」
次に机に広げたのは現代社会だった。
「これならまだいけそうだわ!」
ゆいは現代社会だけは少し自信があった。
何とか順調に宿題を進めていると、小海が戻ってきた。
「調子はいかがですか? 順調に進んでるみたいですね」
「ま、まぁ……」
実は一発目で数学を挫折したなんて言えるはずもなかった。

この部屋にはクーラーなどの冷房機器が一切備わってなかった。
だが、心地よい風が常に流れている。
縁側から見える外の景色は、緑が気持ちよさそうにまるで踊っているかのようだ。
今日の気温は三十六度もあるのにその面影をまるで感じさせなかった。
これが古来からの日本の技術なのだろうか。

ゆいの横で小海はずっと本を読んでいる。
時々わからない場所を聞くとすぐに答えてくれる。
ゆいの宿題の進むスピードはいつもの何十倍も早かった。
「ふぅ、あとは夏休みの思い出の作文だけだー」
日が少し傾き始めた頃、ゆいは夏休みの思い出の作文だけを残し、すべてやり終えた。
「良かったですね、私はお役に立てたでしょうか?」
「大助かりですよ!! 特に数学の時なんて……」
ゆいは数学の宿題はほぼすべて小海に分からない所を聞きっぱなしだった。
「お役に立てたのでしたら光栄です」
小海はにこっとゆいに笑って見せた。
「ゆいさん、最後に言っておきたいことがあります。この先ゆいさんには辛い事が待っていると思います。
ですがゆいさん、あなたは自分の信じる道を進んでください。
今はまだ分からないと思いますが、でもその時まで覚えておいてください。きっとゆいさんのためになるはずです」
小海の真剣な顔にゆいはただただ首を縦に振ることしかできなかった。
「よ、よく分からないけど覚えておきます」
「それではまた八月一日に会いましょう」
「はい!」
ゆいはそのまま大前家を去り、自分の家へと帰っていった。



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