恋愛test2-1
恋愛ゲーム(仮)
あらすじ
季節は段々と赤く染まり、秋を皆に知らせようとしていた。
そんな中、一人の男子の部屋に、どこの家庭にもあるような包丁を持った女が一人立っていた。
「あなたさえ死ねばすべてが元に戻るのよ……死んで……お願いだから!」
女は男の元へと駆け抜けていった。
第一話 ゲーム開始
心地よい木漏れ日が窓から差し込める。それはとても気持ちの良い朝だ。
「はるかー。今日から新学期なんだから遅れるんじゃないわよー」
「わ、わかってるわよー!」
赤泉高校に通う、今日から二年生になった小林 遥。
短かった春休みのせいで少しリズムが変わってしまっていたものの、一年生の時と変わらない
今まで通りの時間に起床する。
顔を洗い、歯を磨き、父と母と三人で朝ごはんを食べる。
また一年間、全く同じサイクルに戻ると思うと小林はこの生活に飽きを感じていた。
ただその日、何事もないと思っていたその日。
ご飯を食べ終え、自分の部屋へ戻ると最近買ってもらったばっかりの携帯電話が鳴っていた。
ただ一度も聞いたことの無い着信音。設定した記憶も無い。不審に思った小林は携帯を確認すると一通のメールが届いていた。
件名:おめでとうございます。
あなたは二人目の恋愛ゲームの参加者になりました。
恋愛ゲームはあなたと同じ学校に通う『平井 聡』と言う男性に告白して見事成功させるというゲームです。
ゲームの優勝者には、特別にあなたの夢を一つ叶えてあげます。
しかし、このゲームにはいくつかルールがあります。
一、親族、友人を含む他人にこのゲームのことを話してしまうとゲームオーバーになります。
ゲームオーバーになった場合、ランダムで決められるペナルティがあります。
二、平井 聡への告白は一回限りです。
告白に失敗した場合ゲームオーバーになります。
三、このメールに『解約』とのみ書き返信すると、このゲームから脱退(ゲームオーバー)することが出来ます。
ただし、こちらは恋愛ゲームに関するすべての記憶を消去されるという決まったペナルティがあります。
四、誰かが告白に成功、もしくは全員がゲームオーバー、もしくはゲーム続行不可能になるとゲーム終了とします。
その際、脱退意外の課せられたペナルティは完全に元に戻ります。
五、特別ルールとして、このメールに恋愛ゲームに参加しているプレイヤーの名前をフルネームで入れて返信すると、
その人をゲームオーバーにすることが出来ます。
ただし名前を間違えると返信した人がゲームオーバー。
間違えたプレイヤーにはペナルティーがあります。
このルールは失敗した場合を含むプレイヤー全員で一度限りとする。
さぁ、皆さんで素敵な恋愛(ゲーム)を楽しみましょう。
「な、何なのよこれ……何で平井君が……」
怖くなった小林は携帯をベッドに投げつけた。
「はるかー。もうそろそろ行かないと遅刻するわよー!」
「う、うん……わかってる」
ただ、これはただのいたずらかもしれない。
そう思った小林は、学校の教科書が入った鞄に投げつけた携帯電話を入れ、学校へと向かった。
メールのせいなのだろうか、小林は平井のことが気になって仕方がなかった。
「平井先輩ー!」
その時、見たことも無い一人の女の子が二年B組のクラスにやって来た。
「ゆいちゃん! 何しに来たんだよ!」
西野 ゆい。彼女は平井の幼馴染である。
ゆいは平井の右腕にがっちりと抱きついた。
「だって今日から同じ高校だもん! せっかくだから会いに来ちゃった!」
「同じ高校だからって勝手に他のクラスに入ったら駄目だろ! っていうかゆいちゃん一年だろ? 余計来たら駄目だよ」
「いいじゃん。私三人目に選ばれたんだし!」
「三人目?」
ゆいは口に手を当て、驚いた表情を見せた。
「あっ! 言ったら駄目だったんだ! それじゃ私帰るね!!」
「お、おい!」
ゆいはそのまま走って教室から出て行った。
「ったく。何なんだよあいつは……」
その時、小林は思った。
(三人目? っていうことはあのメールもしかして……)
小林はあのメールは自分以外にも送られていたことを悟った。
女の子が去ってしばらくすると担任の原川先生が教室にやって来た。
「皆さん。席についてください」
クラスメイトと担任は一年の時と全く同じだった。
「さて、今日からもう君達も二年生だ。もっと自覚を持ってだな……」
二年になっても、担任の先生やクラスのみんなは変わらないようだ。
「……という訳で委員会のメンバーもそのまま引継ぎだ。みんなクラブもある子もいるだろうが委員会のほうも頑張るように」
平井と小林は同じ風紀委員である。
担任の長い話も終わり、今日はその場で解散になった。
だが、平井と小林はそのまま風紀委員の集まりに行くことになっていた。
「平井君、委員会の集まり行くでしょ?」
小林は平井を誘ってみた。
「ああ。でもすぐ帰るぞ」
勇気を振り絞って小林は平井に言った。
「それなら一緒に行こうよ!」
「ん? ああ、良いけど」
そういうことで平井と小林は共に風紀委員室へと向かった。
「平井君、やっぱりもうサッカーやる気ないの?」
平井は小学生の頃、サッカー部に入部していた。
小林は小中高とサッカー部のマネージャーをしており、その頃から平井のことは知っていた。
去年の風紀委員が多数決で決まった時まで、平井は小林のことはすっかり忘れていたようだ。
「だから何度も言うけど俺はもうサッカーはやらないって決めたんだ。俺にはもうサッカーをやる体力もないしな」
「それじゃ、もうサッカーは好きじゃないの?」
「そ、それは……」
平井は小学生の頃に母親を亡くしており、それをきっかけにサッカーもやる気を無くしてしまったようだ。
つい最近までは、人を寄せ付けないような態度を取る人だったのだから。
「今からでも遅くないと思うの。だって平井君すっごくサッカー楽しそうにしてたもん!」
「……考えとくよ」
去年までは断固拒否していた平井だが、今年は少し違っているようだ。
小林は今までずっと平井にサッカーをまたやることを進めていたので「考えとく」だけでも言ってもらえてすごく嬉しかった。
いつの間にか風紀委員室までたどり着いていた。
第二話 姫神との出会い
風紀委員室の様子はいつもと違っていた。
どうやら先生の横で新しい生徒会の委員が、自ら風紀委員室の中でなにやら話し込んでいるようだ。
「あなた達は風紀委員としての自覚が足りなさ過ぎます! 校内はゴミだらけで『ゴミを捨てるな』というポスターは
ぐちゃぐちゃに破られてポスター自体がゴミになっている有様……
これはすべてあなた達のやる気の無さに原因があるのです!!」
教壇の上で熱弁しているのは、姫神美佳子。
幼い頃に両親の都合で海外に留学し、すでに大学を卒業しているのだが、どうしても日本の高校生活を過ごしたいという
本人の強い希望によりこの学校に転校して来た。
過去にもそう言った事例はある。
今年は姫神も高校三年生で卒業を控えていると言うこともあり、かなり気合が入っているようだ。
「今から全員で校内を一時間掃除してもらいます! わかりましたね!!」
「「……」」
風紀委員の全員が姫神の熱弁に圧倒されていた。
この風紀委員にはなりたくてなった人なんて数人もいないだろう。
平井みたいに残り物が無理やりやらされる程度の者がほとんどなのだ。
そんな人達が今から一時間も掃除なんてやりたいと思うわけが無い。
ほぼ全員がやる気の無い表情を浮かべた。
それを見て姫神は今にも爆発しそうなほどの怒りを表にしている。
「やるんです!! 今から持ち場の書かれた紙を配りますからね!!」
姫神は一人一人に持ち場の書かれた用紙を配った。
先生の後押しもあり、風紀委員全員で校内の掃除をすることになった。
「ってかあの先輩さぁ。やけに張り切ってたよな」
平井と小林は、紙に書かれていた通り、共に中庭の掃除をすることになった。
「姫神先輩って学校の中では結構有名人なんだよ。だって十二歳で大学卒業しちゃったって言うし」
「へぇ、そんな人が何でこんな学校にいるのかが不思議だよな」
「中学から大学まで一気に飛び級になっちゃったみたいで高校生活を味わいたいっていう本人の強い希望らしいわよ」
「そんな物好きもいるもんだな」
その時、何者かの足音が聞こえてきた。
「物好きで悪かったですわね!」
噂をすればなんとやらと言うことわざは本当だったようだ。
平井が後ろを振り返ると姫神本人がそこに立っていた。
「ご、ごめんなさい。平井は結構口悪いんです」
小林は姫神に頭を下げた。
「別に気にしてないわ。それより掃除を……」
その時、遠くからゆいが走ってきた。
「平井せんぱーい!! 探しましたよーー!!」
集められたゴミの山を蹴飛ばして、平井に飛びついた。
「お、おい……」
姫神の前で、無残にもゴミが綺麗に舞い散っていく。
「ちょ、ちょっとあなた……」
指でつんつんとゆいを突っついた。
「あれ、あなた誰ですか?」
風紀委員室の時ですら機嫌が悪かったのに、さすがにそれ以上に爆発しそうになっている。
「誰ですかじゃないわ……許さないわよ!!」
姫神はゆいに襲い掛かった。
「う、うわ~ん。助けてーー!!」
「お、おい!!」
ゆいは平井を突き飛ばして逃げ去った。
「ま、待ちなさーい!!」
追いかけて姫神も去っていく。
「……」
平井と小林はその場で立ち尽くすしかなかった。
「俺はもう帰るぞ」
平井は壁に立てかけていた鞄を手に取り校門へと向かった。
「う、うん。あとは私やっとくから」
小林は散らばったゴミをホウキで集め直している。
「頼むわ。じゃあまた明日な」
「うん!」
小林は笑顔で手を振って見せた。
平井は小林を一人残し、校門へと歩いていく。
第三話 約束
校門の前では、一人の男が平井の事を待っていた。
「よ、平井。待ってたんだぜ」
「竜也じゃないか。二年はクラス変更なかったからまた別々だな」
西野 竜也。彼は昔、平井がまだサッカーをしていた頃からの友人で、西野 ゆいの兄である。
「今日はちょっと頼まれごとがあってな。とりあえず聞いてくれよ」
「何だ気持ち悪いな。さっさと言えよ」
「それがな、それがな」
竜也は平井の耳元に手を当て、ひそひそと話し始めた。
「お前と一緒に遊びたいって言う女の子がいるんだよ。来週の日曜空いてるか?」
平井は驚いた表情を見せた。
「お、俺とか!? まじかよ」
「本当だって。来週の日曜に駅前で待ち合わせなんだよ」
「そっか。近いから別にいいけど」
「よかった。それじゃ帰ろうぜ」
「ああ」
竜也は平井と同時期に母親を亡くすという不幸な出来事にあった二人は、
いつしか互いに共感し合い、親友と呼べるほどの仲になった。
「あのさ、竜也」
帰り道の途中、平井が竜也にぼそっと言った。
「どうした?」
「俺さ、またサッカーやろうかと思ってるんだ」
「え!? だってお前……」
やめてしまった当時から、一番サッカーを毛嫌いしていた平井からの言葉に、竜也は驚きを隠せない。
「今すぐやろうとは思ってないけど……いつか時が来たらまたやろうかなって思ってるんだ。その時、お前も一緒にやらないかと思ってさ」
竜也は思いつめたように足元を見つめた。
「そんな急に言われてもなぁ……」
「俺もまだ答えを見つけ出したわけじゃない。お前も考えといてくれよ」
「まぁ、わかった……」
「んじゃここで。また明日な!」
「おう!」
二人が別れを告げた時、どこからともなく一人の女の子が猛ダッシュでこちらに向かって走ってきた。
「ちょっとー!! 一緒に帰るって約束したじゃない!!」
女の子の正体は、やっぱりゆいだった。
「あれ、お兄ちゃんそんな約束したかなー?」
「あんたなんかに言ってないわよ!!」
ゆいは竜也を本気で突き飛ばした。
「お、おい~」
竜也は道のど真ん中にぶっ倒れた。
「平井先輩! 先に帰っちゃうなんてずるいですよ! こんなカスと一緒に帰るぐらいならゆいと帰るのが普通ですよ!」
「カスってなぁ、おい……」
「だからあんたは黙ってなさい!!」
起き上がった竜也をゆいはまたもや突き飛ばした。
「も……もういい……から」
「平井先輩! 今朝一緒に帰るって約束したじゃないですか!」
「いつだよいつ! そんな話一回もした記憶ないんだが」
「えー! 忘れちゃうなんてずるいですよー」
「はぁ……」
その時、一人の女性が全速力でこちらに向かって走ってきた。
「ちょっとー!! 逃がさないわよー!!」
その女性は、やっぱり姫神だった。
「うわ~ん。平井先輩、また明日ねぇ~!!」
ゆいは猛ダッシュで姫神から逃げていった。
姫神は平井達の前で息切れしながら止まった。
「はぁ、はぁ、なんて足の速い……」
「ゆいは昔からああなんだよ。許してやってくれよ」
竜也は姫神の肩をぽんっと叩いた。
「ふん。ああ言う人がいるから校内が汚されていくのです。私はそれを注意しようと……」
姫神はずっと走っていたのだろうか。大分お疲れのようだ。
「俺からゆいに言っとくからさ。そんなに怒るなよ」
「そ、そうですわね。大人げないですわね。あなたは先ほどの女性のお兄さんですの?」
「一応そうだけど?」
「それならあなたに任せますわ。もう私は帰らさせてもらいますわ」
姫神はそう言い残し、その場から去っていった。
「ま、俺が言った所で何も変わらないんだけどなぁ。お前なら別かもしれないがな!」
竜也は羨ましそうに平井を見つめた。
「昔からゆいちゃんは俺に飛び掛ってくるからな……それはそれで迷惑なもんなんだが」
「迷惑かぁ……俺がどんなにゆいのことを想ってるかなんてあいつには……」
平井は竜也の肩をぽんっと叩いた。
「お前、いい兄貴なんだな」
「いいよ、もう帰る……」
竜也は、とぼとぼと家路へ向かって歩き出した。
平井は心配そうに竜也が見えなくなるまで見送った後、自分の家へと向かった。
第四話 約束の日
次の日曜日、駅前の大きな噴水の前で平井と竜也が女の子達を待っている。
平井が携帯電話で時間を確認すると、すでに午前十時十分を過ぎていた。
「おい竜也、集合十時じゃなかったのかよ!」
竜也も困ったような顔をして携帯電話を見たが、やっぱり十分過ぎている。
「ちゃんと十時って言ってたんだけどなぁ……あ、来たぞ!」
遠くの方で、ロングヘアーのフリフリのついたワンピースを着た元気に手を振る女子と
ショートヘアーで和服姿の大人しそうな女子がやって来た。
「ごめーん! 小海が起こすの遅くってさ」
急いで来たそぶりを見せたが全く疲れた表情を見せていない。
「どうせいつものようにお前が起きなかったんだろ? なぁ、小海ちゃん」
「あ、いえ。一応約束されていた時間よりも三十分ほど早く起こしに行ったのですが……」
一生懸命フォローしているつもりが全く出来ていなかった。
「もう! 何よ小海までぇ!!」
明るくて元気な方が北島 涼子。和服姿の質素な子が大前 小海。
二人は幼い頃からの親友で、その二人のあまりにもすごいギャップに同学年の間では有名な二人なのである。
「始めまして聡君! 私が北島 涼子でこっちが大前 小海。今日はよろしくね!」
「あ、ああ」
あまり女性と関わりがない平井は、少し緊張気味である。
「それじゃ西野、今日はどこに連れてってくれるの?」
「それじゃって、お前が誘っといて決めさせるのかよ!」
「あっ! あんた女の子に決めさせるつもりだったの!? ほんっとあんたって男としては最低ね!」
「な! 何だって!!」
楽しくなるはずだったデートは開始数分で大喧嘩に変わってしまう。
結局行き先が決まらなかった四人は近所の某有名カラオケ店に行くことにした。
「あいつ……あれが女じゃなかったら確実にボコボコにしてるのに……」
北島と小海が受付で部屋を取ってもらっている間に竜也は平井に愚痴をこぼしている。
「まぁまぁ、そんなに怒るなよ。せっかくだし楽しもうぜ!」
平井は竜也の肩を叩いた。
「ま、まぁそうだな。主役はお前だしな!」
受付を済ませた二人が平井達の元へ戻ってきた。
「部屋二階だってさ。時間もったいないし早く行こ!」
四人は狭いエレベーターの中に入り込んだ。
「ちょっと狭いわね。西野は階段で行きなさいよ」
「な、何で俺だけなんだよ!」
「二階に上がるだけでそんなに怒るなんて……ほんっとちっちゃい男ね」
「こ、こいつ……」
言い返す言葉が見つからなかった竜也は走って階段を駆け上がった。
三人が乗ったエレベーターが開くと、息を切らした竜也が待っていた。
「はぁはぁはぁ……」
「っていうか二階に上がるだけで息切れ!? もう言ってあげる言葉が見つからないわ」
「も、もう好きにしてくれ……」
「そう? それじゃカラオケ代おごりね!」
小海は竜也にお辞儀をした。
「ちょ、ちょっと待て。それとこれとは話が別だろ? 俺ほしいCDがあるのに」
「好きにしてって言ったの自分じゃない。今更撤回するとか男じゃないわよ」
「……って言うか小海ちゃんは俺よりも何千倍もお小遣いもらってるのにおごるのかよ!」
「え! 何でしたら私が払ってもいいですけど」
小海がそう言った途端、北島が手を上げ、大前の前をふさいだ。
「あんた女の子におごってもらうなんて……プライドのかけらもないの!?
いいわ、冗談のつもりだったけど西野に全部払わせるから!!」
「……もういい。わかったよぅ」
竜也は鞄から財布を取り出し中身を確信すると、思わずため息を一つ出てしまった。
数時間歌った後、四人はカラオケ店から出た。
「久しぶりにカラオケ行くのもいいもんね! しかもおごりだし」
北島はやけに上機嫌である。
「財布が……財布が……」
竜也は反比例するかのように落ち込むばかりだ。
「ねぇねぇ、次はどこいくの?」
どこに行くか決めるためにカラオケ店に入ったものの、肝心なことをすっかり忘れていたようだ。
「そ、そうだなぁ。なぁ竜也、どこ行くんだ?」
平井はすっかり落ち込んでいる竜也に振ってみた。
「財布が……財布が……」
竜也には平井の言葉が聞こえていないようだ。
「もう、たかが五千円ちょっとでそこまで落ち込むって……ほんっと男じゃないわ」
その時、小海の鞄から携帯の着信音が鳴った。
「あ、ちょっと失礼します」
小海はお辞儀をして、少し遠くの人通りの少ない路地へと走っていった。
「あーあ。小海、親からっぽいわね。今日はもうお開きかも……」
せっかくテンションがあがってきた北島は少し残念そうだ。
「こいつもこんなだしな。仕方ないか」
平井は竜也をつんつんつついてみたが、まだぶつぶつ念仏のように「財布が、財布が」と唱え続けていた。
数分後、小海がこちらに向かって走って来た。
「本当にごめんなさい! 私今日は家に帰らないといけなくなってしまいました」
小海は何回も頭を下げ、謝り続けた。
「いいのよ小海。あんたん家の事情はよくわかってるから」
「ごめんなさい涼子ちゃん。平井さん。あと西野さんも」
「ついでみたいに言うなよ!!」
さっきまで念仏を唱えていた竜也が復帰したようだ。
「ご、ごめんなさい!! 何だか落ち込んでいる様子でしたので。あ! 何でしたら今回の支払い分私が返しましょうか?」
「お、俺もそこまで落ちぶれちゃいないよ……」
復帰した竜也も、さすがに悪気のない大前の親切な言葉に何とも言えなかった。
「あんたなら絶対ほしいって言うと思ったわ」
すかさず北島が突っ込みを入れる。
「悪かったな!!」
こうして四人はその場で解散することになった。
また後日、デートをやり直す約束を残して。
作品一覧へ 次へ