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test2-3


第六話 テスト勉強

次の日俺と竜也は職員室へ向かい、サッカー部の顧問の幸村先生に小林が見守る中入部届けを出した。
幸村先生は小林から二人の実力を聞いていたらしく、二人を大歓迎してくれた。
「これで全国大会も夢じゃなくなったな。期待してるよ!」
幸村先生は学生時代全国大会を目前に敗退してしまった経験があり、生徒達をどうしても全国大会へ出場させたい、
そして優勝させたいと思っている熱血的な先生だった。
だが、先生以上に喜んでいたのは小林だったかもしれない。

少し早く来すぎた平井と竜也は平井の席の前で話をしていた。
「今日からまたサッカーの生活か。何か不思議な気分だよな」
「そうだね。もう二度とやらないって思ってたし」
その時、校内放送で平井と竜也が呼ばれた。
「何だ? とりあえず行ってみるか」
二人はまた職員室へと向かった。

職員室で待っていたのは少し不機嫌そうな担任の川原先生だった。
「君達ね、クラブに入部するのはいいことだと思うよ。でもね、うちの学校ではクラブに入部する者は
最低でも欠点は取ってはならないんだよ。それが君達の一年生の時の通信簿なんだが……」
川原先生は二人の通信簿を机の上に広げた。
「私には赤い文字がたくさん見えるんだがな……一応西野君の担任の先生とも話し合ったんだが
次の期末テストで六十点以上は取らないと難しいんだよ。私の言ってる意味がわかるかね?」
何とも憎たらしい川原先生の言い方に、二人の怒りは爆発しそうになる。
だが、何とか二人とも耐えているようだ。
「別に退学や留年は無いから心配しなくてもいい。君達は去年もちゃんと追試に来て合格しているからね。
だけどクラブに入るからにはそこの所はわかってもらいたいんだよ。わかったかね?」
「は……はい……」
二人はあまりものストレスで体を全身震わしていた。

教室に戻った二人はもう我慢できなくなって愚痴をこぼしまくっていた。
「何だよあのじじいは! 調子乗りすぎじゃねぇか!? よくあんな担任で我慢できるよな!!」
「俺だって好きであんなハゲじじいのクラスになったわけじゃねぇよ。まじでぶん殴ってやりたいぐらいだ」
「どうしたの平井君と西野君?」
その時、ちょうどクラブから帰ってきた小林に二人はさっき先生に言われたことを話した。
「思い出すだけでもイライラしてくるぐらいだぜ」
「でも一応校則だから仕方ないと思う……期末まではあと二週間ほどあるから今から勉強したらいいのよ!」
小林からすれば、せっかくクラブに入ってくれた二人を、そんなことで退部にさせられるのはたまったもんじゃなかった。
「勉強か……真剣にやったのはいつだっけ?」
「っていうかやったことない……よな?」
「……」
小林は二人にかける言葉が見つからなかった。
「あ! ここにいたのね西野」
教室に現れたのは北島と大前だった。
「お前何しに来たんだよ!」
「失礼ね。小海から二人がサッカー部に入るって聞いたから。
この学校クラブするには欠点があると駄目って校則あるから勉強手伝ってあげようとおもって来てあげたのに」
「まじか!? それは助かるよ」
「昼休みは時間あるからその時ってことで。一緒に図書室で勉強しましょ! いいですよね平井さんも」
「ああ、こっちからお願いしてもらいたいぐらいだよ」
「よかった!」
竜也は北島の腕を掴み平井達には聞こえないほどの遠くへ連れ出した。
「ちょ、ちょっと何するのよ!」
「お前それが目当てだったんだろ?」
「そ、それってどう言う事よ!」
「平井と一緒に勉強するのが目的で、俺なんてお荷物だって思ってるんじゃないか?」
「当たり前でしょ!! あんたのも気が向いたら小海が見てあげると思うから」
「……」
「どうしたんだ? 二人とも」
心配した平井が二人の方へ駆け寄った。
「な、何でもないのよ。こいつの勘違いで」
「こいつって……俺はどうせお荷物で」
北島の拳が竜也の顔面にヒットした。
「ぅ……」
「じゃ、じゃあ私達はこれで。小海、教室に戻ろ!」
「はい」
北島は竜也を引きずりながら教室へと戻った。
「私も出来る限りお手伝いするね!」
小林は平井に笑顔で言った。
「助かるよ。せっかくサッカーやることにしたんだしこんな事でやめさせられるのも納得いかないしな!」
その日からお昼休みに皆で勉強することになった。

この学校には、図書室と職員室のみクーラーが設置されている。
少し蒸し暑くなってきたこの季節は、心地よい涼しさを求めて本なんて読む気も無い人達が集まって来る。
「まだ人少ないわね。本格的に夏になると人で埋まっちゃうぐらいだもんね」
周りにはざっと十人ぐらいしかいなかった。
「図書室なんて学校生活で一回も来るとは思わなかったぜ」
「あんたが本を読むなんてありえないわよねー。パンダが日本語喋るぐらいに」
「おいお前! それは言いすぎじゃないか!?」
竜也の突込みがまるでなかったかのように北島は淡々とノートを広げた。
「よし! 最初は歴史から初めよっか!」
北島は鞄から一枚のプリントを取り出した。
「これ本当ならテスト一週間前に配られるはずの予習プリントだけど無理言ってもらってきちゃった」
「あのハゲ親父お前に気があるみたいだもんな」
「ほんっと、ブサイクな上にハゲって……まぁ今回はマジで我慢してもらってきたんだからありがたく思いなさいよ!」
北島はプリントに書かれた問題を読み始めた。
「問題その一、天正十年、一五八二年に織田信長は本能寺にて味方の武将により殺されてしまった。
その殺した武将の名を書きなさいだってさ。案外簡単な問題だね」
簡単と言った北島とは裏腹に平井と竜也の目はどこか遠くを見ているようだった。
「ってあんた達こんな問題もわからないの!?」
「わからねぇんじゃないよ。知らないんだよ!!」
竜也は声を大にして言った。
「それってそんな自信満々に言うことじゃないわよ!! これで本当に大丈夫なの!?」
北島は大きなため息を一つ着いた。

「あの~静かにしてもらえませんか?」
一人の図書委員が騒いでいたので皆を止めに来た。
「ご、ごめんなさい!」
大前が立ち上がり、図書委員に謝った。
「ってかゆい! お前図書委員とかやってたのか?」
一人の図書委員。それは西野ゆいだった。
「ってかなんであなたがここにいるのよ。あ! 平井先輩じゃないですかー!!」
ゆいはすぐ様平井の腕に抱きついた。
「ちょ、ちょっとあんた何なのよ!! 聡君に急に抱きついて!!」
北島はくっついているゆいを突き放そうと立ち上がった。
「平井先輩は私のものなんだからね!!」
ゆいは平井の腕を強く抱きしめた。
「ゆい、お兄ちゃん達勉強中だから」
「誰がお兄ちゃんよ! この化け物が!!」
ゆいは竜也を思いっきり蹴飛ばした。
「ゆ、ゆい……」
竜也は椅子から転げ落ち、その場で倒れこんだ。

「ゆいちゃん。今勉強中だからさ」
平井がそう言うとゆいは素早く手を離した。
「ごめんなさい、お邪魔だったみたい。図書委員の仕事に戻りまーす!!」
ゆいはそのまま図書室にあるカウンターへと戻っていった。
「ったく。ゆいは俺の事兄貴って絶対思ってないな……」
いつの間にか竜也は立ち上がり、何事も無かったように椅子に腰掛けていた。
「あの女、敵ね!!」
北島は誰にも聞こえないぐらいの小さな声でつぶやいた。

四人はたまにゆいの邪魔が入りながらも勉強は順調? に進み、一週間が経過した。
ただ、ひとつだけ問題があった。それは四人とも数学が全く出来なかったのだ。
「おい北島、三次方程式ってどうやるんだよ!」
「わ、私に聞かないでよ!! 小海どうやるんだったっけ」
「え、えっと……たしかxがyの……」
「……」
四人とも三次方程式が全く出来ず、テスト一週間前にさしかかろうとしていた。
「平井せんぱーい!! 今日も頑張ってますか~?」
いつものようにゆいが平井に飛びついている。
「ゆい! 今忙しいから後にしてくれよ!」
「ねぇねぇ平井せんぱ~い。今日から小梅ちゃんが戻ってきたから一緒にお勉強しましょうよ!」
ゆいは平井の腕をゆすりながら駄々をこねた。
「ゆいちゃんは一年生だから俺達と一緒にしてもなぁ……俺ら自分のでもいっぱいいっぱいだし」
平井がそう言うと残念そうに平井の手を離した。
「そう……じゃあゆいは戻ります……」
ゆいはこれでもかと言うぐらいがっかりした表情を見せながら持ち場に戻った。
「……ちょっと言い過ぎたかな」
「そんなことはないと思います。ゆいさんは全く図書委員の仕事をしてくれないんですから!!」
そこに現れたのは、大量の本を持った一人の女の子だった。
「小梅、そんなにたくさんの本を一度に持つと危ないですよ」
小海は立ち上がり、小梅の持っている本を半分取った。
「お姉様、心配してくれる気持ちはわかるけど私はもう大丈夫だから!」
「でも小梅は昨日まで風邪を引いて三十九度も熱があったのですよ。いきなり無理をするとまた風邪を引いてしまいますよ」
「もう……大丈夫って言ってるのに……」
小海と小梅はそのまま本を元の場所に直しにいった。
「小梅ちゃんってしっかりしてるけど、まだお子様だわね」
北島はぼそっと言った。
「それはそうと数学どうすんだよ。このままじゃクラブ出来なくなっちまうぜ」
「そうだな。何とか三次方程式は理解しとかないとやばいな……」
そこに一人の女性が近づいてきた。
「あら? 珍しい事もあるわね。あなた達が図書室にいるなんて」
その女性は間違いなく姫神だった。
「姫神先輩!! おはようございます」
北島は立ち上がり姫神にお辞儀をした。
「姫神先輩、お久しぶりです」
小林も頭を軽く下げた。
「久しぶりだな。あのプール以来じゃないか」
「おい、先輩に向かってタメ口はやばいんじゃないか?」
「そ、そうよ!! 先輩は先輩でもよりによって姫神先輩に!」
北島と竜也が平井に注意するものの、姫神は今思い出したかのように頬を赤らめていた。
「ま、まぁそれ以来ですわね。あなた達は図書室で何をしているのかしら」
その時、平井はいい事を思いついた。
「姫神さんさぁ、たしか外国の大学出てたんだよな?」
「え、ええ。それがどうかしましたか?」
「ちょっとここ教えてくれよ」
平井は数学の教科書に書かれている三次方程式と言う文字を指差した。
「な、何故私がそのようなことを!!」
「じゃないと更衣室であったことみんなに話しちゃおうかなぁ。みんなに慕われている姫神さんがあの時……」
「わ、わかったわよ!!」
しばらくして小海も戻ってきたところで姫神直々に数学を教えてもらうことになった。

「さすが姫神さんですね。すっごくわかりやすいです!!」
テストの日まであと二日に指しかかろうとしていた。
姫神に教えてもらったおかげで、何とか全員苦手だった三次方程式を克服したようだ。
「私は先生に教えてもらったことをそのまま言っただけですわ。別にすごいと言われるほどの物では」
「そう言えば姫神先輩って外国の大学出てるって噂本当何ですか~?」
もはや当然のごとくゆいが椅子に腰掛けていた。
もう誰もゆいに突っ込みを入れる者はいなかった。
「まぁ……両親が仕事の都合でイギリスに行くことになったから仕方無かったの」
「でもすごいですよねー。姫神先輩ってやっぱりお金持ち何ですよね? やっぱり別荘とかあったりするんですか?」
「ま、まぁ……あることはありますけど……」
「別荘かぁ。一回行って見たいもんだな~」
平井が冗談まじりでそう呟いた。
「今回のテストで全員がちゃんと合格点取れたなら連れて差し上げても構いませんわよ。
一応私が教えたのですからそれ相当な点数を取ってもらわないと困りますからね」
「え、本当に!? あんた一番バカなんだから絶対良い点取りなさいよ!!」
ゆいは竜也に向かって指差した。
「お、おい! 確かに俺が一番バカなのは認めるがゆいに言われる意味がわからん! 第一ゆいは関係ないだろ!?」
「お、お兄ちゃんは私を置いて旅行に行っちゃうの……ゆい、寂しくて泣いちゃうかも」
「姫神様!! どうかゆいも同席させてくださいませ!!」
竜也は椅子を投げ捨て姫神に土下座した。
そのおかげなのかはさて置き、皆がテストで六十点以上取ると姫神の別荘に御呼ばれすると言う約束が出来た。
全員がその日からいつも以上に勉強に励み、ついにテスト当日を迎えることになった。


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