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四角関係


前編

 
 いくつもの歳月が過ぎ、あれから何回日が上り沈んだことだろう。
あの時当たり前にあったものが消え、そして新たなもの達が生まれる。
だが消えないものもある。
それぞれに今でも鮮明に残る楽しい思い出や辛い思い出。
そして頑なに刻まれた友情である。

 俺と東は大学を卒業した後、極々普通のサラリーマン、OLとして同じ職に就いた。
大学時代ずっと小説ばかり書いていたスキルは果たして活かせているのだろうか。
神山は頂点大学を卒業後、雑誌の編集者の仕事についた。
入社してはや三年でもう課長クラスまで昇格したらしい。
もはや才能と言う言葉がぴったりかもしれない。
南は小説家として活動している。
書店には常に品薄状態が続いているらしく中々の売れ行きだそうだ。
俺も発売一ヶ月前から予約しないと買えないので中々苦労している。

 お互い新たな人生を歩み始めた。
学生時代とは違い中々一緒に会う時間が取れず
たまにメールをし合うぐらいしか交流の場がなかった。
そしていつの間にかあのFKmilkで会った最後の時から十年の歳月が過ぎていた。

 十年後 FKmilkにて

 カランカランカラン
懐かしい音色と共にドアが開いた。
「悪いね、もうこの店閉めちゃったから営業してないんだよ」
白髪のマスターが入ってきた客に近寄る。
「そうなんだ……って言うか甥の顔を忘れちゃうなんて大分歳だな」
客はマスターに向かって鼻で笑った。
「ん??」
客の顔をよく見てみるマスター
「お、純平かぁ?」
ようやく俺と言う事に気付いたようだ。
「久しぶりに来て見たら店じまいとはびっくりだよ」
俺はそのまま手前のテーブル席へ座った。
おじさんは手馴れた様子でアイスコーヒーを差し出した。
「ま、お客は手軽で有名なファーストフードに全部取られたよ。俺も歳だしゆっくり老後を過ごすつもりさ」
おじさんはどこと無く寂しそうな目をしていた。
「大変なんだなぁ……」
しんみりしていると誰かが入ってきた。
「ごめーん。遅くなっちゃって」
息を切らしながら駆け込んできたのは東だ。
「これはこれは、すごく綺麗になったじゃないか」
おじさんはにこっと笑って見せた。
「そうかな? 全然変わってないと思うけどな」
仕事先でも一緒なので見た目が変わっているのに気付いていないだけだろうか。
「そんなこと無いよ。とても綺麗になったよ」
おじさんはそう言ってもう一杯アイスコーヒーを差し出した。
「ありがとうございます♪」
「ははは、やっぱり変わってないかもしれんな」
おじさんは腹を抱えて笑い始めた。
「失礼ですよマスター!! これでも今日は気合入れてきたんですからね!!」
「まぁまぁ……」
たしかに今日は一段と気合が入ってるなと実感できるほど綺麗に見える。
そこへもう一人、何かから逃れるように店の中へ駆け込む一人の男性が現れた。
「ふぅ……あいつらはしつこいんだよ……」
今では彼無しでは漫画界を語れないほどの有名人『山本 健太』だ。
「また追われてるのか……相変わらずだな」
俺は鼻で笑った。
「おいおい、久しぶりに集まったと思ったらその言い草は無いだろ……」
「まぁまぁ」
おじさんはもう一つアイスコーヒーを差し出した。
「いつもと変わらない順番だな。もうそろそろ二つ入れておくか」
おじさんはまとめて二つのアイスコーヒーを作り始める。
 
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