四角関係
後編
空は段々と橙色に染まり、仕事帰りのサラリーマン達の波がFKMilkの前を通り過ぎていく。
「うん、その企画自体は君に一任してあるから任せるよ。うん、明日朝に目を通すから。
それじゃよろしくね」
携帯電話を切った男はそのままFKmilkのドアを開けた。
「遅くなってごめん。ちょっと仕事が長引いちゃって……」
しわも無いびしっとしたスーツを着た男、神山 秀大だ。
「秀君見ない間に何かすごくたくましくなったね」
あの学生時代の神山とは一味違ったように見違えている。
「変わったかな……自分では実感ないんだけどね」
そう言って手前の俺達と同じテーブル席に座る。
「良い男になったじゃないか。俺も若い頃を思い出すよ」
おじさんは作っておいたアイスコーヒーを差し出した。
「たしかに数年前とは状況が変わったかな。小説を書く時間が全然取れなくて」
神山は自らの勤める雑誌社で小説を書いている。
たしかに最近そのページが減ってきているなと思っていた。
「秀君も大変なんだなぁ……」
「純平だってお母さんが社長って言うのに東君と一般から頑張ってるそうじゃないか。
そのプレッシャーも中々だと思うよ」
たしかに入社当初はコネで入ってきたなどと影で散々言われていた。
変に気を使われているような気がして仕事をし辛い状態が何年か続いたが
今ではやっと自分の力が認められつつあるので一番楽しい時かもしれない。
「今は楽しくやってるよ。なぁ優?」
東は首を大きく縦に振った。
「今やってるプロジェクトも面白いし楽しいよねー」
その時、FKMilkの周りに人だかりが出来ていた。
「あれ? 一体どうしたんだろう」
急に一人の女性がFKmilkの中へ駆け込んできた。
その女性は今や雑誌やテレビでも大人気の小説家、南 桜だ。
「ごめん、周りにばれちゃったみたいで……」
「ちょっと待ってな!」
おじさんは急いで店のシャッターを閉め始めた。
「これでよしっと」
おじさんはそのまま少し氷が解けたコーヒーを南に差し出した。
「本当にごめんなさい……」
南は申し訳なさそうにみんなに謝った。
「桜はもう有名人だもんね。仕方ないよ」
「でも久しぶりに集まったのに騒ぎを起こしちゃって私……」
南は今にも泣きそうな表情だ。
「南さんは悪くないですよー」
東は南に駆け寄ってそっと後ろから手を差し伸べる。
「うん、今日は俺がみんなに無理言ったんだし。どうしてもみんなに直接渡したくて」
俺と東でみんなに薄いピンク色の手紙を手渡した。
「そこにも書いてあるんだけど今やってるプロジェクトがもうすぐ落ち着きそうだし丁度良いかなって思って決めたんだ」
その手紙は結婚式の招待状だった。
「ついに結婚するんだね」
神山は笑顔で祝福してくれた。
「どうしてもみんなに来てほしくて。だって俺達親友だろ?」
そう言うと山本はいきなり立ち上がった。
「みんな南の事有名人だって言ってるけど俺も有名人なんだぞ! 親友としてそこはちゃんと訂正してほしいね!」
山本は真剣な表情だが、南を含む全員が笑い転げていた。
「いいよ……もういいもん……」
山本はちょっぴりいじけている。
それから数ヵ月後、ぎこちない黒いタキシードを着た俺と
まるで天使のような白いウエディングドレスを身にまとった東。
俺達はみんなが見守る中、誓いを交わした。
一度壊れてしまった関係。
あの時はもう二度と戻るとは思わなかった。
それでも俺達は東や山本との出会い、そしてきっかけをもらったおかげで
こうして丸でも罰でも三角でも無い、真新しい四角な関係から
最高の関係(親友)としてまたやり直せることが出来た。
俺は声を大にして言いたい。
やっぱり人と人との出会いはどんな高価な物とも変えられない
最高の宝物だと言うことを。
四角関係アフター
ストーリー
― 完結 ―
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